続平成太平記

アジアの中の日本

韓国、「自動車」内外市場で落勢止まらず「中国の落込み顕著」

2017-07-12 14:46:13 | 日記
勝又壽良の経済時評

日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。



2017-07-10 05:00:00

韓国、「自動車」内外市場で落勢止まらず「中国の落込み顕著」

上半期の韓国車不振の理由は?

輸入車で日本が独の牙城追撃


韓国経済は、サムスンと現代自が支えていると言われる。その現代自の業績が振るわないのだ。現代自だけでない。

他の自動車メーカーも軒並み不振である。深刻なのは、国内と輸出が揃って低迷していることである。

理由は、はっきりしている。現代自労組に代表されるように、「労働貴族」に成り上ってしまい、生産性向上に関心を持たず「分捕り主義」に徹していることだ。これでは高コスト体質が定着して、競争力を失って当然であろう。

さらに困ったことは、文在寅政権の出現である。「労働の味方」を標榜する大統領の登場だ。

労働組合が勇んでさらなる高額の賃上げ要求を出す気配が濃厚である。3年連続赤字経営の韓国GM労組も大幅な賃上げ要求の構えである。

上半期の韓国車不振の理由は?

『朝鮮日報』(7月3日付)は、「韓国完成車5、1~6月販売、 国内・海外ともに不振」と題して、次のように伝えた。

韓国車が内外市場で後退している。その理由は、コスト・パフォーマンスが落ちていることだ。

燃費や修理頻度などで他国車に劣っている背景は、研究開発費の不足であろう。

利益は人件費アップで食われているので、満足な開発費を捻出できずにいる。

その意味でも、韓国自動車労組の大幅賃上げが、経営にとって大きな足かせになっている。


後で取り上げるが、韓国の輸入車市場で日本車はドイツ車のシェアを食っている。

日本車のコスト・パフォーマンスが断然優れているからだ。中国でも日系車の売り上げは急増している。その背景と韓国のそれは酷似している。

(1)「現代自動車、起亜自動車、韓国GM、ルノーサムスン自動車、双竜自動車の韓国完成車メーカー5社が国内販売の低迷に、中国市場での不振が加わり深刻な業績不振に陥っていることが3日、分かった。

自動車業界によると、現代の1月から6月までの国内と海外を合わせた販売台数は219万8342台で前年同期比8.2%減少した。

子会社の起亜は132万224台で同9.4%減った。

現代の国内販売は34万4783台で前年同期比1.8%減、海外販売は185万3559台で同9.3%減少した。

起亜は国内が25万5843台で同7.6%減、海外が106万4381台で同9.9%減となった」

現代自は、これまで国内のシェア7割強を武器にして、利益の大半を国内で稼いできた。

だが、消費者の多くは「貴族労組」の高額賃上げに嫌気がさしている。

韓国大手メディアもこれを代弁する形で、現代車の不買を呼びかけるなど「反労組」意識を煽っているのだ。

こうした理由もあって、国内シェアは低下している。消費者から反感を買うようビジネスは、最低というべきであろう。


(2)「現代の関係者は海外販売の不振について、米国の最新鋭地上配備型迎撃システム『高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)』の在韓米軍配備に反発している中国での不振が影響したとし、『今後も先進国や新興国のいずれの市場でも、販売好調を確信できない危機状況が続くだろう』と予想した。

同社によると、6月の中国での販売は現代が約3万5000台で前年同月比64%減、起亜が約1万7000台で同62%減となった」

これまで、現代自は中国市場で日系車のシェアを奪ってきた。

韓国国内での高利潤を背景にして戦略的に割安感を打ち出し、またデザインの良さも売り物であった。

現在は、日系車もデザインに力を入れるほか、品質の高さが中国の消費者から高い評価を得ている。

中国での外資系車が軒並みシェアを落としているなかで、日系車は「ダントツ」の伸び率を見せている。

韓国車にとって不運なのは、「THAAD」問題で中国政府のイジメ対象にされていることだ。

習主席は、海外では「グローバリズム」を追求するなど大言壮語しているが、国内では全く逆の保護主義の権化である。

中国ほど本音と建て前が異なる国はない。余談だが、これに騙されてはならない。

中国人が、「ニーハオ」と言いながら近寄ってくるときは、その裏に必ず「謀」(はかりごと)が隠されている。私は、個人的にそれを実感している。

(3)「韓国GMの1月から6月までの販売台数は27万8998台で、前年同期比9.3%減った。

国内販売は7万2708台で、前年同期比16.2%減、海外販売は20万6290台で同6.5%減となった。

双竜も7万345台で、5.7%減少した。

ただ海外販売は29.3%減少したが、国内販売は大型スポーツタイプ多目的車(SUV)の『G4レクストン』など新型車が好調で、5.5%増加した」

(4)「1月から6月までの販売台数で昨年を上回ったのはルノーサムスンだけだった。

13万5895台で前年同期比9.7%増えた。国内販売は5万2882台で同12.7%増、海外販売は8万3013台で同7.8%増加した」

韓国に乗用車メーカーが5社も存在できるほど、市場に成長力があるわけでない。

現代自と起亜車が残るぐらいで、他社はいずれ淘汰される運命であろう。

特に、電気自動車(EV)などエネ車が主流になる時代は目前に来ている。

こうした「イノベーション」の波を考えると、大幅賃上げで研究開発費を食い込んでいる現状は自殺行為である。

現代自ですら営業利益率は5%台に落ち込んでいる。

このレベルを割り込めば、かつての米国GMの倒産がそうであったように自滅するしかないのだ。

この「線引き」から見て生き残れる自動車会社はいくつあるか。

韓国の自動車労組は、多少の犠牲を払っても自己の職場を守る意識になるべきだろう。

現在の米国GMは長年、賃上げを自粛しており、ひたすらGMの体力回復を優先させている。ここに、良き先例があるのだ。

米国GMは、労組が経営再建に協力しているが、韓国GMは全くその気配はない。

『中央日報』(6月29日付)は、「3年間の損失2兆ウォンでもストをするという韓国GM労組」と題して、次のように伝えた。

この記事では、民間労組の意識が公務員並みであることに驚かされる。

仕事の量が減っても雇用保障をせよと会社側に要求しているのだ。

産業構造が大きく変革しようという矢先に、会社側に雇用保障などできるはずがない。

労働市場の変革とは、労働需給に合わせた雇用調整がスムースに行えるようにすることだ。

これは、企業の横暴を意味するものでない。

弾力的な雇用調整が可能な国ほど経済成長率は高く、賃金が上昇しているというデータがあることで立証されている。

目標は、企業に長期勤務することでなく、生涯賃金を増やすことにある。この点を、韓国労組は根本的に混同している。

韓国の自動車労組は、この弾力的な雇用に背を向けて、あくまでも年功序列型賃金と終身雇用制を要求する立場である。

フランスの新大統領は、弾力的な雇用関係維持を目標にして当選した。

これを実現するには保守と進歩の両派から内閣を組織して、国民の不安を鎮める政治に踏み切った。

韓国では逆である。新大統領は「労働者の味方」だと言い切っている。労働組合委員長レベルの意識である。これでは韓国経済の発展など期待すべくもないだろう。

(5)「昨年、韓国GMが6314億ウォンの当期純損失を記録した。

韓国の自動車メーカー5社のうち唯一の赤字企業だ。

この3年間の韓国GMの営業赤字は1兆9718億ウォンに達する。

だが韓国GM労組は基本給を15万4883ウォン引き上げ、11項目の手当てを新設・引き上げを要求している。

さらに成果給支給案も含まれている。全組合員に通常賃金(平均424万7221ウォン)の5倍を払えという内容だ」

韓国GMは、3年連続での赤字経営である。それにも関わらず、労組は基本給の引き上げのほかに、11項目の手当てを新設・引き上げを要求している。

さらに成果給支給案も含まれており、これら要求を全て加えると、通常賃金(平均424万7221ウォン=約42万4000円)の5倍にもなるという。

この「無謀」な要求は、昨年の現代自労組の賃上げ妥結に倣ったものだ。

現代自は、前記の労組要求を飲んだ結果、管理職の賃金凍結などを実施して、総賃金の増大に歯止めを掛けようとしたができるはずがない。

営業利益率の低下という形で跳ね返っている。

ここまで、労組を甘やかした会社側の責任も問われなければならない。

企業とは、「ゴーイング・コンサーン=継続企業」である。

企業は、永遠の生命を持つべき存在である。日本の老舗企業(創業200年以上)が、世界の半分以上を占める裏には、この「継続企業」という役割を労使がわきまえてきた結果であろう。

これは、石田梅岩の「石門心学」の影響と言える。韓国ではお気の毒にも、こういう高尚な理念が理解不能なのだ。


(6)「金属労組現代自動車支部は団体協約で『雇用保障』を要求する。

現代自動車労組は、『第4次産業革命で工場の自動車システムが拡散してエンジンが必要ない電気自動車時代が開かれれば労働者が20%減る』とし、仕事が減っても雇用を書面で保障せよとの立場だ。

また、現代自動車は労組との意見不一致で8カ月分の仕事量に達する市内バス2000台余りの注文を受けても増産できずにいる」

韓国自動車労組は、今年から「金属労組」という大組織の中に入る。

金属労組全体が、中核の自動車労組の賃上げ闘争によって妥結金額を上へ引っ張り上げるという戦略があるだろう。

自動車企業の収益率は、他業種に比べれば高水準に違いない。

この自動車並みの賃上げを他業種に適用したならばどうなるか。言わずと知れた「労務倒産」という最悪事態になろう。

賃金は生産性に見合ったレベルで決まるものだ。

その生産性を無視した賃上げは、企業も労働者も共倒れになる。この分かりきったことがなぜ理解できないのか。韓国では「継続企業」という理念が理解不能な国なのだ。

電気自動車になれば、ガソリンエンジンは不要になる。

労組は、仕事が減っても雇用を保障せよと要求している。

完全に企業への「寄生虫」という認識である。

仕事がなくなれば、転職するのが普通であろう。

毎日、工場敷地で草取りをさせろということに等しい要求だ。これほど愚かな要求を突きつける韓国労組とは驚きである。

これでは、韓国経済の発展はあり得ない。沈滞あるのみだ。

(7)「新政権発足初年度に自動車労組は事実上、交渉が不可能な無理な内容も要求している。

例えば、韓国GMは8日に開かれた5度目の賃金交渉で各工場の生産量を確約してほしいと要求した。

21日にGM本社が『9月に米カンザス工場の労働者1000人余りを一時解雇する』と明らかにするなど世界的な構造調整を進める状況で、
韓国GM労組は雇用確保の『覚書』を書いてほしいと要求した格好だ」

韓国の新政権は、労組寄りの労働政策を採用する可能性が大きい。

非正規雇用は、正規雇用にすると宣言している政権だから、仕事がなくても雇用継続という労組の無理な要求を支持するに違いない。

こういう一見、人情あふれるような政策が、経済の合理性から外れているのだ。

転職を積極的に進めて雇用の流動化を促進する。これこそ本筋だが、転職は怖くてできない。こういう認識になのだろう。

ここが、文政権の限界であり韓国経済の悲劇そのものである。

(8)「代表的な強硬労働組合に分類される自動車労組が、新政権になり各種要求事項を吐き出している。

賃金交渉や賃金および団体交渉のテーブルで提示した一部内容は使用者側が受け入れにくい内容も含まれている。

大規模ストにつながれば新政権の足を引っ張りかねないとの指摘も出ている」

労組寄りの新政権が抱える弱点は、経済合理性に基づく「正論」を吐けないことだ。

労組の支援で大統領に当選した文大統領は結局、労組の要求支持という安易な立場に立って、韓国経済全体の地盤沈下の道を選ぶであろう。

安全保障政策を見ていても、民族派=南北統一をすぐにでも実現したいような短兵急なところが見える。

学生運動上がりの「86世代」がリードする政権が、複雑な現実を無視して成功するはずがない。こういう懸念を払拭できないのだ。

輸入車で日本が独の牙城揺るがす

韓国の輸入車市場について触れておきたい

『中央日報』(6月12日付)は、「韓国の輸入車市場、日本車躍進・ドイツ車停滞」と題して次のように伝えた。

この記事では、輸入車市場では、日本車が伸びており、ドイツ車が落ち込むという好対照を見せている。

日本車好調はハイブリッド車への信頼感。ドイツ車停滞は、例のディーゼル車の排気ガス偽データが消費者の信頼を失った結果である。

(9)「韓国内の輸入車市場が揺れている。ハイブリッド人気のおかげで日本車の全体販売台数は増加した半面、ディーゼルの需要減少でドイツ車の全体販売量は落ちている。

韓国輸入車協会によると、ことし1~5月の日本車の累積販売台数は1万6245台で、昨年同期に比べて29.4%増えた。

同じ期間、輸入車における日本車のシェアは17.2%で、昨年より3.8%ポイント高まった」

ことし1~5月の日本車の累計台数は1万6245台。伸び率は29.4%。

輸入車における日本車のシェアは17.2%で、昨年より3.8%ポイント高まった。

後述の通り、ドイツ車の1~5月累計台数は5万5656台である。

ドイツ車のシェアは58.9%にも上がっている。ただ、日本車は前年同期比17.2%増だが、ドイツ車は同8.1%減である。

このままの差を維持して推移すれば、遠からず日本車がドイツ車を抜く可能性も出てくる。消費者の信頼を失ったドイツ車の痛手は、早期にばん回できないものだ。

(10)「このような日本車の販売好調にはいくつか理由がある。

まず、豊富なラインナップとコスト・パフォーマンスの高さが挙げられる。

日本車のうち人気車種であるトヨタ『カムリ』やホンダ『アコード』などは3000万ウォン(約300万円)台に設定されて、

韓国産の中型車と価格差はそれほど大きくないが、洗練された外観に豊富なオプション、優れた走行性能が評価されている。

(日本車好調の裏には)ディーゼル車中心のドイツ車の販売不振も影響を与えている。

『ディーゼル事態』の余波で、アウディやフォルクスワーゲン(VW)に対する風当たりが厳しくなったことで、ドイツ車のことし1~5月の累積販売台数は5万5656台で、前年比8.1%落ちた」

日本車の販売好調な理由は、豊富なラインナップとコスト・パフォーマンスの高さを挙げている。

日本車が実用性という点で、中国市場でも高く評価されているが、韓国でも同様の結果が出ている。これは、日本車にとって、大きな財産である。

(11)「 業界では、日本車の好調は当面続くと見ている。

ディーゼル車対策を公約で打ち出した文在寅(ムン・ジェイン)政府が発足したうえに、日本車メーカーが次々と新車の供給に動いているからだ。

業界関係者は『日本車がドイツのディーゼル車の空白を埋めて輸入車市場で躍進している』とし、『特にことしは、ハイブリッド市場の成長が予想されており、ハイブリッド市場で信頼を得ている日本車の勢いが一層強まる見通し』と述べた」

ドイツ車が、ディーゼル車で失った信頼の穴を、日本車のハイブリッド車が埋めている。

これが、韓国で日本車ブームが続きそうな背景になっている。

自動車では、中韓ともに「反日」という感情論でなく、コスト・パフォーマンスという実利性が主要な購買動機になってきた。

これは、日本メーカーの潤沢な研究開発費と、それを可能にさせる適正な賃金コストの実現によるものであろう。

その意味で、韓国製自動車が競争力を回復するには、正常な労使関係の構築が大前提になる。


(2017年7月10日)
ジャンル:
経済
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