続平成太平記

アジアの中の日本

中国、「米利上げ」炙り出す根本的脆弱性「わが世の春終幕」

2017-01-03 16:53:21 | 日記

中国、「米利上げ」炙り出す根本的脆弱性「わが世の春終幕」

(2017年1月3日)

勝又壽良の経済時評
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。


米「高圧経済」が死命を制する

どうやら中国経済は、あっけない幕切れになりそうだ。1

7年に入って米国利上げが3回ほど見込まれるので、中国からの資金流出が加速される気配である。

中国にとって唯一の自慢は、世界一の外貨準備高を保有すること。

これを背景に、米国債の最大保有国として、米国の「メインバンク」気取りで高飛車に振る舞ってきた。米国政府は、中国に頭を下げざるを得なかったのだ。

ところが、状況は大きく変わった。昨年10月末、米国債保有の首位は日本になった。

後述のような理由から、中国の米国債保有は減少傾向をたどる見込みである。

次期米国大統領のトランプ政権は、こうした変化を背景に、対中外交で強気攻勢をかける構えである。

米中関係は、「金の切れ目が縁の切れ目」と似た状況になってきた。



10月末の中国の米国債保有額が、1兆1150億ドルと6年余ぶりの低水準。

日本の米国債保有額は1兆1320億ドルである。この日中の差は170億ドルだ。


中国の減少はすでに5カ月連続で、10月までの1年間の減少規模は1392億ドルにも上がっている。

この傾向から読むと、中国の米国債売却は今後とも続くと見られる。

中国経済の最盛期は過ぎた。その何よりの証拠がここにある。



『フィナンシャル・タイムズ』(12月8日付)は、「中国経済のもろさ、米利上げなら加速の恐れ」と論じた。


この記事は、昨年12月8日付である。米国が利上げを決める前に中国経済の脆弱性を論じたものだ。

今年の米利上げは本格化の予想であり、中国経済の脆弱な土台が崩れるかねない危険状態に陥っている

米国の利上げによって、土台もろとも吹き飛ばされかねない事態で、中国経済は深刻な局面を迎える。



(1)「中国は、世界で最も借り入れの多い企業部門と振れの激しいことで悪名高い不動産部門、そして融資の資金をまかなうために金融市場での借り入れに依存する多数の銀行を抱えている国だ。

このため中国経済は金利上昇観測に特に敏感になる。実際、金利上昇の見通しはトランプ氏の大統領選出以降の米ドル高と相まって、すでに新興国市場の債券と株式を売り急ぐ動きを引き起こした」。



マッキンゼー国際研究所の推計によれば、中国の抱える債務総額は対GDP比で282%(2014年4~6月期)であった。

その後の推移を見れば、もはや300%を越えているはずだ。

世界一の債務国と言っても間違いでない。

企業部門(金融・非金融)の債務に限ると210%(同)である。これも現在では250%以上に達しているだろう。



中国は、文字通り「借金大国」である。

米国が、08年のリーマンショック後のゼロ金利時代に突入した「好機」を利用し、中国は世界中から資金をかき集めた。

それが今や、米利上げとともに逆回転を始め、中国経済を苦しめる役割に転じたのだ。

「吉凶は糾(あざな)える縄のごとし」だ。中国は、自国の古典に身を糺(ただ)さずにはいられまい。過去に学ばない中国の大失策となった。



借金大国の最大の敵は、金利が引き上げられる環境の到来である。

安い金利で借りまくってきた中国にとって、利上げほど怖いものはないのだ。

高い金利を目的にして中国へ入ってきた投機資金は、米利上げで米国へ還流する運びとなった。

この流れは、これから一段と強まるはずだ。中国にとっては、「一大事」の到来である。



(2)「中国の企業債務は山と積み上がっている。

その巨大な規模――現在、国内総生産(GDP)の250%超にのぼり、

2008年の125%から大幅に増加している――は、短期金利が小幅に上昇しただけでも

、企業の活動は圧迫される。デフォルト(債務不履行)が発生し、ひいては経済成長が阻害されかねないことを意味している」。



債務の絶対額の大きさもさることながら、債務増加のスピードが問題である。

返済時の圧力がそれだけ大きくかかるためだ。

企業債務の対GDP比は2008年に125%。

それが現在は250%とわずか数年で倍増した。

今後のキャッシュフローの流れを考えれば、常識的に見て返済は不可能に違いない。



ここに、中国経済は「絶体絶命」のピンチにはまり込んだと言って良かろう。

よくぞ、ここまで債務を増やしたものだ。

その無計画、無軌道な事業計画を推進させたのが、「社会主義市場経済」なのだ。


諸悪の根源は、すべてここにある。純粋な市場経済ならば、ここまで無軌道な経営を許すはずがない。



(3)「英スタンダード・ライフ・インベストメンツの新興国市場担当エコノミスト、アレックス・ウルフ氏は、

既存の債務の返済に必要な資金を調達するために短期金融市場に依存する企業がどんどん増えており、デフォルトリスクが高まっていると指摘。

『金利の上昇、特に短期金利の上昇は、比較的弱い企業にかかる重圧を強め、

デフォルトのリスクを高める』と言う。この数週間、金融状況が逼迫するにつれて、短期金利の指標である6カ月物の上海銀行間取引金利(SHIBOR)は急騰した」。



債務返済の原資は通常、売上増加によってえられるものだ。

だが、GDP成長率が象徴的に表すように、すでに7%を割り込んでいる。

借入をした当時のGDP成長率は10%前後であったはず。

となると、売上伸び率鈍化のなかで、どうやって債務返済ができるのか。

既存の債務の返済に必要な資金は、自己調達できずに短期借入で凌がざるを得なくなるはずだ。

よって、短期金利借入が急増して短期金利が跳ね上がってきた。



(4)「格付け会社フィッチ・レーティングスの試算は、公式統計からはうかがえない中国企業部門の苦悩の度合いを明らかにする。

フィッチによると、中国の銀行システムの融資残高のうち15~21%がすでに不良債権化している。

これに対し、公式統計の不良債権比率は2%未満だ。

こうした状況を背景に、中国の資本流出は急増。

11月に700億ドルに迫り、中国政府の直面する課題は先鋭化している。

資金が中国から流出しているため、債務を返済できない企業にもたらされる苦境にもかかわらず、国内の金融状況を引き締める以外にほとんど選択肢がない」。



格付け会社フィッチ・レーティングスの試算によると、

中国の銀行システムの融資残高のうち、15~21%がすでに不良債権化しているという。

キャッシュフローの流れから推計したものであろう。

政府の公式統計の不良債権比率は2%未満とカムフラージュされている。

実勢悪を隠しているのだ。こうした状況を背景に、中国の資本流出は急増している。



噓八百を言い募る中国政府でも、企業の売上状況から推計できる不良債権の実態まで、隠し通せるわけがない。

資本は本来「臆病」である。危ないと見れば、一目散に安全地帯へ逃避するもの。

資本逃避とは、いままさに中国で起こっている様を言うのだ。



(5)「短期金利の上昇は、中国の金融構造の最も弱い柱に打撃を与える可能性もある。

錦州銀行などの中規模銀行数行は、個人預金を呼び込むのに苦労しており、そのため短期金融市場からの借り入れに頼っている。

しかし、そうした借り入れのコストが今、上昇しているのだ。

中国経済全般の屋台骨である不動産会社も短期金利の急上昇に極めて弱い。

不動産デベロッパー各社による社債発行は、当局が10月に過熱した市場を抑制するために規則を強化し、新規プロジェクトへ投資しづらくして以来、急減した」。



企業が長期返済資金の調達ができず、短期金融市場で繋ぎ融資を受けざるを得ない現状は、決して先行きを楽観できることではない。

借入コストを高めるほかに、不況抵抗力を弱めるからだ。

倒産企業に共通している点は、資金繰りを付けるために短期の高利資金に手を出すことだ。

これが結局、命取りになってその企業は倒産にいたるのだ。

不動産デベロッパーは、巨額資金を投じて少しずつ回収する。

その意味で、短期金利の高騰は著しく採算を悪化させるはずである。

こうして、短期金利の高騰を嫌気して債券発行へ殺到したが、当局の規制でこちらも上手くいかず、不動産デベロッパーは窮地に立たされている。



(7)「中国の不動産デベロッパーが11月に発行した社債はわずか120億元で、1~9月の月間平均860億元から大幅に減少している。

こうした経済的なストレスに、トランプ氏のホワイトハウス入りに伴う政治的不確実性が加わり完全になる。

同氏は人民元が過小評価されているとの疑いから、中国の対米輸出に関税をかけ、中国を「為替操作国」に認定すると脅している」。



中国経済は、すでに金融的に限界へぶつかっている。

対GDP比で見た債務総額が、天井圏を突き抜けているからだ。

この「臨界点」で、米国でトランプ政権が出現する。

中国政府に的を絞らせない「トランプ流」外交は、極めて対応の難しさを表している。

米国へ感情的に反応すると、トランプ氏は「倍返し」打ち返してくる。



その裏には、衰退する中国経済と、逆に回復へ転じる米国経済との差が現れている。

米国は、自らの利上げによって中国経済を追い込める「武器」を得たのだ。

中国は、この事実に気づくべきである。米国への対応は、慎重の上にも慎重にすべきだ。

従来のような、大言壮語は逆効果になろう。米中の経済的な関係は、逆転しているからだ。



米国の長期金利は1900年以降、2回の山をこなしながら大きく波打ってきた。

2回目のピークに当たるのが、1980年代前半である。

一時は20%近くになったが、その後は低下に転じた。現在まで続く金利低下が始まったのだ。

いま米金利は、10年物国債利回が2.5%程度と最低時1.5%から見て上向き加減にある。

これが定着すると金利は大底を打ち、長期的な上昇をうかがう展開となる。

こういう指摘が、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の森山昌俊シニアエコノミストから出てきた点に注目したい。



今後、米金利が上昇に転じると、中国経済はどうなるのか。言わずと知れたこと。


過剰債務ゆえに、破綻するのだ。米国は「高圧経済」へ移行するとの見方が強くなっている。


高い物価上昇率と高い金利の時代に戻れば、中国経済は完全に吹き飛ぶに違いない。

理論的にはこういう結論に落ちつくはずだ。中国は、その危険ゾーンに入る公算が高まった。

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