平成太平記

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韓国、世界が懸念する「政治リスク」ゾンビの上場企業1割強

2016年05月04日 11時37分20秒 | Weblog

(2016年5月4日)
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エコノミック・ショート・ショート
今になって振り返ると、韓国は「反日」で日本を罵倒していた頃が、もっとも高揚していた時期であった。

あれから半年足らずで舞台は暗転。

昨年末の日韓政府の合意で、日本批判は「禁句」である。不満の向け先がなくなったのだ。

先の総選挙では、与党の「セヌリ党」が思わざる敗退を喫した。

経済改革が宙に浮いたままである。

改革待ったなしであるにも関わらず、政治状況の急変で改革案の先行きがさらに不透明である。

朴政権にとっては最悪事態を迎えている。

韓国経済は、崖っぷちである。

企業業績が悪化しているのだ。上場企業の1割強の33社が「ゾンビ企業」という結果である。

3年間も金利を支払う営業利益が出せないのだ。韓国経済の前途は真っ暗であろう。

その上に、「政治リスク」が加わった。韓国は、政治も経済も「SOS」である。もはや、日本へ喧嘩を売る元気もなくなったようだ。

『朝鮮日報』(4月21日付)は、次のように伝えた。

この記事では、韓国の「ゾンビ」企業の実態がデータで示されている。

日本企業と比べて驚くのは、取引銀行が「ゾンビ」企業を放置してきたことだ。

日常の金融取引のなかで、経営実態を把握しているはずだが、何らの措置も取らずに時間を空費していた。

これは、取引銀行としての責任を放棄したことにも等しい。

企業も銀行も、適当な存在なのだろう。

ドイツ人経済学者のジョセフ・シュンペーターは、銀行の貸出責任を厳しく問うている。

貸出リスクをとって、積極的に貸出先を開拓せよと言っているのだ。韓国は、このセオリーと無縁の経済システムである。

①「韓国の大企業10社のうち1社が稼いだ利益で金利も支払えない『ゾンビ企業』であることが分かった。

企業経営情報誌『CEOスコア』がこのほど、韓国の有力企業500社のうち、金融機関と事業報告書、連結監査報告書を未提出の企業を除いた380社の公示資料を分析した結果、

『インタレスト・カバレッジ・レシオ』(営業利益で借入金の利息を賄えているかを示す指標)が3年連続で1に満たない企業が43社(11.3%)あることが分かった」。

韓国有力企業500社中、資料の揃う380社の分析により、11.3%が「ゾンビ」企業であることが分かった。

13~15年の3年間、営業利益で支払金利が支払えないのだ。

営業利益は、その企業の挙げた付加価値額である。

金利の支払い分が、この営業利益=付加価値額にも満たないとは、企業の低収益性を放置していた政治の責任も大きい。

こういう状況の改善策として経済改革法案が登場しているが、政治の「リスク」登場で先行きどうなるか不透明になっている。

②「数値が1未満というのは、営業活動で稼いだ利益で借入金の利息を賄えていないことを示す。

通常は3年連続で1未満の場合は、破綻リスクが大きいと見なされる。

33社を業種別に見ると、建設・建設資材関連の9社が最多で、石油化学、造船・機械・設備がそれぞれ6社だった。

『CEOスコア』関係者は、『これら企業はいずれも政府が構造調整を進めている業種に当たる』と説明した」。

韓国上場企業の33社が、破綻リスクを抱えているとは驚きである。

日本企業の倒産史を見ると、大型倒産の出ること自体が珍しく、滅多に出ないものだ。

その理由は、メインバンクである主取引銀行が、貸出企業の経営状態を把握している結果である。

ただ、日本ではメインバンクの力が強すぎて、その弊害(株式持合や役員派遣)が企業のコーポレート・ガバナンスを有名無実化した。

こういう欠陥はあったが、大型倒産を回避したことは事実である。

韓国では、財閥による野放し経営である。

財閥は「独立王国」の様相を呈しており、創業家が株主を無視した独断経営を貫き、株主と銀行による「チェック・アンド・バランス」が機能しないのだろう。

戦前の日本財閥でも「4大財閥」以外の新興財閥は、銀行との協力関係を築いており、銀行の意向は十分に忖度されていた。

旧安田銀行(安田善次郎創業:戦後の富士銀行、現、みずほ銀行)は、新興財閥の経営計画までタッチした。この歴史が、現在まで引き継がれている面もあろう。

朝鮮日報』(4月20日付)は、社説「韓国経済、世界が懸念する『政治リスク』」を次のように掲げた

世界3大格付け機関のムーディーズが、韓国総選挙の結果を受けて今後の「格下げ」を予告した。

同じフィッチ・レーティングスも「格下げ」を示唆している。

韓国は昨秋、格付けが「格上げ」されたときは、「日本を上回る格付け」と喜んだが、一転しての「格下げ」予告である。

このような事態を招いたのも、韓国国会が「国会先進化法」で重要法案は賛成5分の3にしたからだ。

日本で言えば、憲法改正発議並みの厳しい条件を付けた余波である。

「多数決原理」は、単純多数決と特別多数決の2種類がある。

前者はいわゆる過半数である。後者は、3分の2とか5分の3など、条件を付けた多数決である。

韓国では一般法案まで特別多数決にしたので、法案成立の可能性が低くなっている。

現在、審議中の4大法案は特別多数決である。相対的に、野党の力が議席数以上になる。

第一党の与党といえども、法案成立では安心できない。

今回の総選挙で与党の議席数は、2番目の少数与党である。ますます、成立の可能性は低下した。

③「有力格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスはこのほど、『韓国総選挙で与党の議席が40%にとどまり、韓国が構造改革を実行することがさらに難しくなった。

改革が遅れれば、韓国の潜在成長率も低下する』と警告し、韓国の今年の経済成長率予測値を2.5%に引き下げた。

韓国政府の予測値(3.1%)を0.6ポイントも下回る数値だ。

これに先立ち、別の格付け会社、フィッチ・レーティングスも『総選挙での与党敗北で韓国が長期的な生産性を高めるための重要な構造改革を実行するのは困難になった』と指摘した』。

韓国国会が、特別多数決を採用した背景には、国会で与野党議員が乱闘騒ぎを起こした反省によって成立した事情がある。

まさに、「感情8割理性2割」のお国柄を表している。

特別多数決になると事実上、法案は成立しなくなるというリスクを無視したのだ。

今になった、動きが取れない国会と化しているが、「自業自得」と言うほかない。

韓国は、中国と同じで、「後先を考えない」で一時的な感情で、特別多数決制を採用して身動きができないのだ。

④「韓国経済に対する海外の評価は急速に悪化している。

国際通貨基金(IMF)は今年初め、韓国の経済成長率を2.9%と予想したが、先週になって2.7%に下方修正した。

ゴールドマン・サックス、JPモルガン、シティバンクなど海外の投資銀行10行による予測値も昨年末の2.88%から2.5%に低下した。

世界的な投資銀行や国際機関のエコノミストは政治家が構造改革の足かせになる可能性を警告している。的確な診断と言える」。

なんと、愚かなことであろうか。国会の乱闘予防と特別多数決の採用を結びつける。

その発想法が、感情的な産物である。

国会乱闘は当事者を罰して、議員資格を剥奪するか、登院停止期間を長くするという方法がある。

それを飛び越えて、一挙に特別多数決へ移行した。

憲法改正ならば特別多数決は当然としても、それ以外の法案まで特別多数決とは驚きである。

「手足を縛って跳んでみろ」、である。韓国経済は、成長率で立ち枯れの危険性に直面している。

⑤「韓国の政界は正反対の道を歩んでいる。

総選挙で多数を占めた野党は、改革法案について、反対するか骨抜きにしようとしている。

共に民主党は、『労働改革と経済活性化法案は絶対に処理できない』との立場だ。

国民の党は『セウォル号特別調査委員会の活動を延長する法案と労働改革法案、経済活性化法案の処理をリンクさせよう』と主張し、

労働改革法案に盛り込まれた派遣労働拡大を労使・政界による労使政委員会で見直し、サービス発展法については、保健医療分野を適用除外にするよう求めている」。

与党は、選挙で政権を取れば、自らの公約実現に向けて動く。

世界共通のことだ。韓国では、野党が特別多数決制を盾にしてその成立を阻止できる。

これでは、何のために選挙を行ったのか。

単純多数決制の民主主義原則が阻害されて、「決まらない政治」となるのだ。

グローバル化経済において、早く政策決定を行わなければならないはずである。

そのなかで、特別多数決制で法案を成立させられないとはお笑い種である。まさに、「感情8割理性2割」で動きが取れないのだ。同情の余地はない。

⑥「韓国経済が5年以上続く2~3%台の低成長から抜け出すためには、労働、金融、公共、教育の各分野の弊害を一掃する構造改革や破綻企業の構造調整が根本的な解決策となる。

海外の投資家が構造改革の成否で韓国経済の将来を判断していることを政界も政府も悟らなければならない」。

「感情国家」韓国が現在、直面している難題は、目先の感情を捨てることだろう。

理性的に振る舞うことが求められている。

「韓国経済が、5年以上続く2~3%台の低成長から抜け出す」という目的実現には何が必要かである。

朴政権は、労働、金融、公共、教育の改革が必要であるとしている。

単純多数決で選ばれた大統領が提案する改革案を、特別多数決制で阻止するのは矛盾しているのだ。

ならば、大統領も特別多数決で選ぶしかない。

投票で1票でも多い候補者が当選する「単純多数決」である。この仕組みを無視する国会での「特別多数決」の乱用は、政策決定を遅らせる矛盾を孕んでいる。



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