コーチAのコンサル日記

現役ITコンサルタントかつアメリカンフットボールのコーチとして日々思う所を書いています

「要件定義は誰の仕事なのか」に対して

2005-07-27 23:29:07 | コンサルテーマ
東葛人さんの東葛人的視点で興味深い記事があり、

大失敗プロジェクトとの元凶ともなり得る要件定義、これは誰の仕事なのか

コメントが長くなってしまいそうなので、続きをこっち
に書くことにしました。
(ここまでのコメントの内容は上記リンクを見てください)


まず、「業務要件」といってもも幾つかに分類する必要がある
と思います。

①新たなIT要素+業務も抜本的に変える
 場合(例えばCRM、SCMなど)
②新たなIT要素だが、業務に変化があまり
 ない場合(単なる業務のIT化)
③新たなにIT要素はあまり無いが、業務に
 変化がある場合(既にIT化されているが、
 法制度への対応等。)


②を子会社に要件定義を実施してもらことは可能
だと思いますし、実際に既にやられていると思います。

③は、ITドリブンで何かを変えるという領域が少ない
ので、ビジネスユニット側(+ベンダーや子会社)でも
十分要件定義が出来るでしょう。

問題は①の領域で、ここは「IT×ビジネス」の双方に
高いスキルが求められます。霧散しているとおっしゃ
っているのはこの領域ではないでしょうか。
この領域の人間は霧散したというよりは、ベンダー・
子会社・ユーザ企業いずれでも育成し切れていないと
いうのが現実ではないでしょうか。所謂ITコンサル
の領域ですね。

まず親会社(ユーザ企業)の視点から見るとITをビジ
ネスの中核的なコンピタンスとして捉えている企業で
あれば、この「要件定義」は限りなく自社の本業に近
い仕事(本業そのもの)ですから子会社から素養のあ
る人間を転籍させてでもユーザ企業内にこの人間を確保
するべきだと思います。

一方子会社の視点で見れば、「コストセンター」から
の脱却を目指したいのは理解出来ますが、上述の理由
もありますし、SIベンダーがわざわざコンサルティン
グファームを買収しているのを見ると、それと同じこ
とをシステム子会社に求めるのは酷だと思います。
また、仮にこのような人材を育成出来ても外部に流出
してしまう可能性が限りなく高いと思われます。
(ITコンサルが出来てなおかつコストセンター化した
子会社に留まるという特異な人もいるでしょうが)

私は、「コストセンター化」した子会社の生きる道が
あるとすれば上流への進出ではなく、

・「製造業・運用サービス業」としての徹底したQCD
向上(徹底した標準化、親会社への密着サポート、
サービスメニュー・SLA整備など)

・規模を拡大(グループシェアードサービス企業化。
例えばグローバルまでサポート)

・親会社のリソース(グローバル拠点)などを活用
 して(例えばグローバル運用サービスを)外販する

だと考えています。

ちょっと話はそれますが、何故ITベンダーも皆が右
へ習えで「上流」と叫ぶのでしょうかと不思議になり
ます。PCにおけるDELLのように、「高機能(上流)で
はなく、徹底した顧客志向とQCDを追及する」ような
ことを大々的に標榜する会社があってもよさそうな
ものですけどね・・・

情報システムシェアードサービスの方向性

2005-07-23 10:42:30 | コンサルテーマ
イオンなど続々,シェアード・サービスが静かに再ブーム

昨今再びシェアードサービスが注目されているようです。

一般的に言われているシェアードサービスの主要な目的をまとめると、
以下のようになります。

・スケールメリットによるコスト削減と品質向上
・キャッシュの外部流出抑制
・アウトソーサには無い「現場感覚」を持つプロフェッショナルとして
 メンバーの意識向上
・人材受皿

これまでは子会社や関連会社を含めた連結スコープでERPを導入することと
並行し、人事・総務・経理・情報システムといった「間接部門」をグループ
規模でシェアードサービス化するというのが一般的な事例でした。

今後は、シナリオシェアードサービスの目的から見ても、スケールメリット
を1企業グループにクローズせず、企業間でシェアしていくというシナリオ
が考えられるのではないでしょうか。

人事分野では、住友信託銀行の呼びかけで、松下電器産業や花王が出資する
SSC会社の人事サービス・コンサルティング(HRMSC)を設立し、外販
も目指すといったモデルも存在します。

情報システム分野に適用するとすれば、例えば先進的かつ大規模なIT部門の
シェアードサービス部隊が中心となって事業上競合しない企業と共同でシェア
ードサービス会社を立ち上げるといった所でしょうか。

但しこの話も一見綺麗に見えますが、仕事が個人に紐づいているアメリカのよ
うな労働環境を前提にしている所があるため、日本の人事慣行にどこまでなじむ
のかは少し考慮が必要だと思います。この点はまた書きたいと思います。

NTTデータが日本ギャップジェミニを買収

2005-07-19 21:40:52 | 業界動向
NTTデータとCapgeminiとのグローバル分野での提携および日本キャップジェミニ株式会社の株式取得について

NECのアビーム社買収に引き続き今度はNTTデータが
日本ギャップジェミニを買収しました。

IBMによるプライスウォーター買収から遅れること
数年。ようやく日本のIT企業も重い腰をあげたという
所でしょう。

最近コンサルティング分野に力を入れてきた矢先の
日本ユ○シス辺りはどんな思いでこれを見ているの
でしょうか。

これらITサービス企業によるコンサルティング会社
買収の流れに取り残された感のある

・F通
・H立

は今後どのような手を打つのでしょうか。両社共に
デジタル家電メーカーとしての顔も持つため、(特に
H立は)組み込み系に注力し、企業情報システム分野
から撤退&大手ITサービス企業(EDS等の外資を含め)
へ売却等といった大胆なシナリオがあるかも知れませんね。

まだまだ本番はこれからといった感のあるITサービス
業界の再編から目が離せません。

※追記
コメントにもありますが、F通はアクセンチュアと提携
していましたね。失念していました。

H立もコンサル会社を買収していたそうです。



JAPAN-USA BOWL2005

2005-07-14 23:38:05 | アメリカンフットボール
仕事を抜け出し行って来ました東京ドーム。
自分のチームに関係の無いアメリカンフットボール
の試合を見るは久しぶり。

20-16で見事Team JAPANの勝利!!!!
やっぱりアメフトの試合は楽しいですね。

しかも4Q残り3分位で13-16。自陣10ヤード付近
からの見事なロングドライブを富沢-水口の見事なTDパス
で締めくくるという劇的な展開でした。

まずこの試合で一番印象的だったのが、チームUSAハワイ
の「強さ」でした。

試合を見るまでは正直チームUSAと言っても所詮ハワイの
ローカル達が寄せ集まって半分観光で来るんだろうという程
度の思いだったのですが、いざ始まって見ると所々でのイージー
ミスはありつつも、それなりに準備してきたんだなという
コンディションとコンビネーションでした。

特に#5(LB)、#40(色々)、#2(WR)、#27
(RB)のスピードとパワーは圧巻でした。勿論ラインはで
かかったです・・

一方JAPANですが、「JAPAN」らしいアジリティと
コーチ陣のプレイコールの的確さで体格に劣るUSAによく
対抗していました。フィジカルの差で圧倒されるという場面
は殆ど無かったのではないでしょうか。

特にレシーバーやDB陣はJAPANの方が全体的には勝って
いたように思いました。板井主将、水口選手、井本選手
(大事な所でポロリとしましたが)、八百板選手等マンカバー
を相手にしてもきっちりフリーになっていました。

そしてJAPANで最も素晴らしかったのは、山口選手のパント
です。滞空時間、距離といい度々JAPANの窮地を救って
いました。但しFG、PATはホルダーとの相性なのかロング
スナップが悪いのか、まったく駄目でしたけど・・

QBは富沢選手が終始出場していたのですが、波木選手の
分かっていても止められないランは和製マイケルビックといった
所でした。(しかしパス投げさせて貰えない・・・)個人的には
もっと波木選手を見たかった。

又、OL・DL陣も体格差をアジリティでおぎない
仕事をきっちりしていた感があります。

そしてコーチ陣ですが、オフェンスはショットガンからの
パスを中心に、途中からアウトサイドゾーンのランが出ると
分かるとそこを起点に相手のマンカバーの弱点をついた
プレイアクションからのクロスパターン・フェイドルート
など「さすが藤田コーチ」と唸らせるプレイコールでした。

又ディフェンスもマンカバーとゾーンを織り交ぜながら
ロースコアに持ち込もうという「我慢」のディフェンス
を最後まで貫いたのではないでしょうか。

どこまで事前情報が伝わっていたのかは不明ですが、今日
の試合運びを見ると、当初からロースコアゲームを予想
し、まさに20-16位の結果を想定していたのでは
ないかと思わせる試合運びでした。

ということで仕事を抜け出して行った甲斐のある試合でした。
勿論ワールドカップを控えた日本にとっても意味のある
勝利でした。

が・・・・・・最後に、

今日のチームUSAハワイは私の個人的な感想だとカレッジ
のディビジョン1約100大学と比較すると、恐らく50位
~75位程度の実力ではないでしょうか。とするとワールド
カップのアメリカ代表としては、NFL経験者を除いたカレッジ
の卒業生中心というのが妥当な線でしょうか。

ユーザ企業だからといってスキルが低い訳ではない

2005-07-08 09:20:26 | コンサルテーマ
最近の企業(従業員300名以上規模)におけるIT関連組織
の流れは「情報システム部門からの脱皮」ではないでしょうか。

このブログでも述べてきましたが、旧来の「技術屋」組織
から「ITガバナンス」及び「ITを利用した業務改革支援」
組織への分化という流れです。

最近の新聞の人事異動欄を見ていても「IT業革推進部」や「IT
プロセス改革部」等それらしき名称が「情報システム部」
と並んでいるように見えます。

このような状況と並行して行われているのが、「シェアードサー
ビス化」もしくは「アウトソーシング」です。

経営者の視点から見ると、「ITガバナンス組織→コーポレート
部門として経営企画部門等に統合」「ITを利用した業務改革支
援組織→業務改革推進の中心として様々な部署から人を集めて
立ち上げ(もしくはプロジェクト組織として立ち上げ)」という
シナリオが描きやすいのですが、残った旧情報システム部は
もはや外部のITベンダーとの「仲介屋」として位置づけられ
てしまいます。

残されたシナリオは

①「シェアードサービスセンターとしてグループ企業にスコープ
  を拡大していく」
②「アウトソーシング」

の何れかです。(①を経て②というのもあります)①の効果が
出るほど規模が大きくない企業の場合には②になる可能性が
高いと思われます。

とここまでは、これまでこのブログで散々お話してきた内容
とそう変わらないのですが、最近まさにこのようなことを推進
されている企業の「旧」情報システム部の内情を伺う機会が
あり、いい意味で驚いたことがありました。

この企業では①と②の狭間で意思決定揺れており、その評価
をするコンサルティングだったのですが、はっきり言って
私が知っている大抵の(知名度の高い)アウトソーサより
システム開発や運用管理のレベルは遥かに高いと感じられました。
内容は具体的に書けないのですが、そこまでレベルを向上
させた一番の要因は担当者曰く「危機感」だそうです。

勿論それだけが要因ではありませんが、自らの職を失うかも
しれないというまさに「崖っぷち」の状況で彼らは自らを
省み、為すべきことを積み重ねたようです。

私は幾つかのITベンダーをSEとして渡り歩き、今はコンサルタ
ントとして様々な企業の情報システム部門の内情を見ていますが、
ITベンダーにいるからといって全員がITスキルが高い訳ではありま
せんし、ユーザ企業にいるからといってITスキルが低い訳では
ありません。会社の組織として「情報システム部」がどうなろうと
まずは自ら為すべきことを積み重ねればその先に見えてくるもの
があると思います。

ちなみに先述の情報システム部の方々はシェアードサービス
センターの中核要員として規模も拡大して頑張っておられます。

SLAしてますか?

2005-07-01 07:31:47 | コンサルテーマ
「セXムしてますか?」じゃないですが、日本の企業においてはまだ
SLAを導入しているのは3割程だそうです。

またまた言葉の定義からですが、

SLAとは、(日本においては)これまで「包括契約」と称してドンブリ
勘定だった主にシステム運用・保守業務を「サービス」という単位
で再定義し、そのサービスの評価指標と達成目標(サービスレベル)
を合意(アグリーメント)するものです。

◎SLAが求められる背景
・委託者側の思い:
経営からの「ITコスト削減」要請や、受託者(運用側)への
漠然としたコストパフォーマンスに対する不満

・受託者側の思い:
自分達の活動が「コスト」に見合ったものであるということを
明確にしたい。つまり、これまでは深夜残業してまで行ってきた
「コスト」に見合わない無理難題を理解して貰いたいという
考え

といったように、委託者側、受託者側双方にとってある意味
自分達の意見を「正当化」するための道具を探しているというこ
とではないでしょうか。

◎SLAの難しさ
SLAの導入において一番難しいのは、双方でサービスレベルと価格
を合意することです。サービスレベルと価格の客観的なベンチマ
ークを得ることが一般的にはまだ困難な状況においては、結局
双方である程度時間をかけて(受託者側のコストも明確化したうえで)
運用しながら落ち着かせるしかないというのが現実的な落とし所
だと思います。

SLAを導入されようと考えている場合には、いきなり「ペナルティ」
だ「違約金」だと言わずに、落としどころを合意出来る仕組み
(これをSLM(サービスレベルマネジメント)と言います)を
必ずセットで考えてみて下さい。

◎SLAによって得られるもの
・受託者側:
「具体的」に金額の説明が出来るようになるため、経営層等に対する
説明はこれまでよりもし易くなるでしょう。又、数値化することにより
経年での改善が計測出来るようになります。

・委託者側
これまで「無理難題」を押し付けられていた状況から、多少は(日本は
契約文化ではないので、結局SLAを締結しても無理やりやらされることは
ありますが・・)改善されるでしょう。

又、自分達の業務が「サービス」として再定義され、その指標がつけられる
ことで、「改善」のモチベーションが上がる可能性があります。

◎SLAでは得られないもの、無くすもの
言うまでも無く「SLA=ある特定の価値観に基づいた指標」です。つまり
ある特定の価値観以外のサービスレベルは低下する可能性が高いということ
になります。

実際にSLA導入の先進的事例では、この問題点に気づき定性的な課題を
定期的に話し合って、それを双方で討議し、改善していくという形を
補助的に使用しています。

私も幾つかSLA導入のお手伝いをしてきましたが、(SLAに限らず)
欧米産の考え方は基本的に「要素還元的」、つまり物事を構造化
したうえで、その要素(各機能)に対するアプローチするという
ことが多いため、日本人にとってはこのような「あいまい」な問題
への対応も考えておくことが重要だと思います。