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【日曜特集】第4施設団52周年大久保駐屯地祭【2】方面施設部隊観閲行進(2013-05-26)

2017-08-06 20:19:58 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■大久保駐屯地祭観閲行進
 大久保駐屯地第4施設団52周年記念行事、第二回は観閲行進の様子とともにその歴史をお伝えしましょう。

 92式地雷原処理車の地雷原を吹き飛ばす迫力の装備です。大久保駐屯地祭、第4施設団と第3施設大隊の駐屯地祭です。第4施設団は中部方面隊隷下、団本部、段本部付隊、第6施設群、第7施設群、第304水際障害中隊、第304施設隊、第305施設隊、第102施設器材隊、第307ダンプ車両中隊、との編成となっています。

 75式装甲ドーザ、敵の防御陣地を力任せに押し潰す。施設団は現在の編成に至る際、数多の改編を経ていますが施設団創設当時、全国の施設部隊は施設大隊と建設大隊を分けており、特に建設大隊の編成は陸上自衛隊創設当時の第二次世界大戦敗戦からの僅か数年という戦禍の記憶に配慮した部隊呼称となっていました。

 1973年、建設大隊と地区施設隊を統合する新しい改編が行われる事となりました。この当時の編成は第101建設大隊と第105建設大隊に第109施設大隊に地区施設隊と施設器材隊やダンプ車両中隊等を併せた編成でしたが、この改編により現在の施設群が誕生します。

 第101建設大隊が第6施設群へ改編され、第313地区施設隊と第318地区施設隊が統合された。第105建設大隊は第319地区施設隊と第323地区施設隊を統合し第7施設群へ改編、第109施設大隊を第320地区施設隊と第325地区施設隊とを第8施設群へ改編しました。

 団隷下、3個の施設群創設は、第一線工兵任務への能力集中という意味があり第102施設器材隊が新設されますが、併せて指揮系統が改編され地区施設隊を団直轄部隊へ改編される事となります。そして徐々に地区施設隊を施設群へ統合する一連の流れが形成されてゆく。

 施設団は元々建設工兵ですので大型ドーザ等を装備している。現在、自衛隊は水陸機動団新編へ自衛隊全体の定員を変えず、人員を部隊の整理縮小と改編拡大を併用する難しい施策を実施しています。しかし、現在度の部隊も任務に対し人員余裕が限られ難渋する様子が垣間見えますが、冷戦時代は地区施設隊が活躍しています。

 第8施設群第325地区施設隊は新編部隊への如何という形で上記命題へ対応しました。1981年、四国を防衛警備管区とする第2混成団新編に伴い、高知駐屯地へ新編される第2混成団施設隊へ管理替えの形で移管しました。第2混成団とは善通寺、現在の第14旅団ですね。

 第2混成団新編の1981年は陸上自衛隊に1962年の管区隊師団創設以来の部隊改編となった一年です。第1混成団は沖縄返還を以て先んじて那覇駐屯地に創設されていますが、第2混成団が新編された年は第7師団の師団改編、自衛隊機甲師団誕生の年でもあった訳です。

 四国の混成団は、基盤的防衛力整備という現在変革が進む従来型の防衛力整備の先駆けでもありました。現在では大津にある第2教育団が善通寺駐屯地に当時ありましたが、多くの隊員を自衛隊へ送る四国では定年間近になり郷里近くの駐屯地を希望する退院の受け皿がない一方、四国では防衛上着上陸脅威は少ないものの防災上の要求が多くありました。

 92式浮橋が展開して参りました、橋梁は地味な装備と思われますが、地図上で架線を渡れないと全く何もできず、作戦を考える程戦略上重要な装備と分かる。さて、善通寺に新しい混成団を創設する構想は、こうして第2教育団を大津駐屯地に移駐させ、善通寺に第2混成団を創設が実現する事となり、広島の海田市に司令部を置く第13師団より移管する善通寺第15普通科連隊を中軸として、四国に新しい混成団が創設されました。

 大久保駐屯地ですが、この四国の混成団創設と共に間接的に影響を受ける事となります。これは善通寺に在った第2教育団が大津駐屯地に移駐した事を受け、当時松山駐屯地に駐屯していました第4陸曹教育隊がのちにここ大久保駐屯地へ移駐する事となった訳です。

 浮橋本体と動力ボートの観閲行進、架線に橋節を浮かべて次々繋ぎ、動力ボートで流れに逆らって橋梁を維持する。中部方面隊の建設工兵部隊という位置づけにて日本第二の大都市圏京阪神地区の一角である京都府宇治市の大久保にて防衛警備任務の一端を担った第4施設団ですが、東西冷戦の終結や部隊の整理縮小、国際貢献任務の要求へ応じ、更なる改編が重ねられる事となる。

 1990年、第4施設団は隷下部隊の地区施設隊廃止改編を実施しました。地区施設隊の内、施設群隷下部隊は基本的に施設群隷下に置かれていますが、金沢駐屯地第302地区施設隊と山口駐屯地第304地区施設隊は廃止部隊となり、二部隊は、その歴史の幕を閉じました。

 1999年には第4施設団隷下の第8施設群が廃止される事となります。第8施設群は善通寺駐屯地に駐屯していまして、これにより善通寺駐屯地には第2混成団が唯一の部隊という位置づけとなった。他方、第2混成団は大幅に増強し第14旅団となったのはご承知の通り。

 第8施設群の廃止改編に併せ、出雲駐屯地に第304施設隊、善通寺駐屯地第305施設隊が新編される事となり、こちらは施設群に属せず施設団直轄部隊という位置づけとなっています。このあたり、北海道で第3施設団が北部方面施設隊に改編される等、混迷でしたね。

 道路整地車両、これで舗装道路へアスファルトを敷きます、有事の際に道路が維持できるとは解らず民間建設会社が砲弾落下の地域には来てくれません、その為に各国軍隊はこうした装備を持ちますが、自衛隊の装備は国際貢献で役立った。自衛隊の冷戦後の将来像を模索する中で、実はこの地区施設隊廃止改編と第8施設群廃止改編の中間期、自衛隊の任務に大きな変容がありました。これはPKO協力法に基づく自衛隊の国連平和維持活動への参加開始です。1992年、カンボジアへ自衛隊が派遣されました。

 建設工兵の実力は意外と知られていませんが、大型トラックが通行出来て数十年維持可能な橋梁や鉄筋コンクリートの建物にダムや堤防などの治水設備と用水路などの灌漑設備は建設工兵が簡単に建設できます、トーチカや対戦車壕と野戦陣地に架橋の応用ですからね。カンボジアPKO任務第一次派遣隊は、ここ第4施設団が主力となり編成、京阪神地区は革新自治体が多く、自治体防災訓練へ自衛隊の参加が府県知事要請により参加できずオブザーバーに留まるなど独特の価値観がある為、大久保駐屯地営門前は大変であった、とのこと。

 国際貢献での海外派遣と云えば現在では自衛隊の主要任務に数えられる時代ですが、当時は海外での大災害への緊急人道支援も社会党の圧力で実施できず、海外にて邦人が紛争地に取り残されても自力で運命を切り開くしかない、という特攻精神が国民に求められた。

 ダンプ中隊の観閲行進が始まりました、地対地ミサイルに見えますがダンプです、妙に迫力が凄い。さて、邦人救出ではイランイラク戦争にてイラク軍から無差別ミサイル攻撃の通告を行われたイランの首都テヘランに邦人が取り残され、運輸省の日本航空への邦人輸送要請が労組の反対で却下、自衛隊のC-1輸送機派遣は憲法上無理と国会で一蹴、最早これまでか、となる。

 イランに孤立した邦人はトルコ航空の人道精神、1890年に和歌山県串本沖で発生したトルコ海軍遭難事案、エルトゥールル号遭難事件へ日本側が地元住民の救助、遭難時は悪天候で地元にも食糧が枯渇した状況での生存者の治療と保護した歴史の返礼で、助けられます。

 イランイラク戦争にて邦人救出へ日本航空があてにならない事を痛感した政府はボーイング747ジャンボ機2機を政府専用機として導入する事となりました。しかし、この政府専用機が配備されたのは1992年で、カンボジア派遣はその年に執り行われた訳なのですね。

 無事カエル、とは大久保駐屯地に置かれているモニュメントがあります。これはカンボジアPKO任務へ第一次派遣部隊として展開する第4施設団が全隊員の無事帰還を祈念し設置したもの。カンボジア内戦はポルポト派による大量虐殺、戦闘も一部地域で続き懸念されました。

 しかし、一番大変だったのは輸送部隊の展開です。海上自衛隊に大型輸送艦は満載排水量4000tの輸送艦みうら型3隻のみ、現在のような満載排水量14000t輸送艦おおすみ型はまだ無く、フィリピン沖で台風に遭遇し、陸上自衛隊員は時化に不慣れ、船酔いが凄かった、と。

 ダンプ中隊の観閲行進は迫力がありますが、中隊32両のダンプは建設工兵の任務に不可欠で、これを通常のトラックとスコップで実施した場合は大変な事になる。国際貢献任務はPKO協力法制定時、相当左翼陣営がこれで外国を侵略し徴兵制や核武装が始まると相当脅していましたが、実際はそうならず、海外派遣先の国家と本当に人と人を通じた信頼関係を深め、今日に至っています。その第一陣は、大久保から派遣されました。

北大路機関:はるな くらま
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