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【日曜特集】木更津駐屯地創設45周年航空祭【06】機動飛行は銀幕の如く(2013-05-12)

2017-06-18 22:09:27 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■AH-1Sコブラ機動飛行
 AH-1S対戦車ヘリコプターの迫力ある、映画のような機動飛行が開始されました。

 木更津駐屯地、中央即応集団隷下となった第1ヘリコプター団ですが、中央即応集団は2004年に創設、その前までは長官直轄部隊、という位置づけでした。この木更津という立地、首都圏の航空部隊拠点となっていますが、東京湾沿岸にあり、対岸の横浜も見える。

 首都圏に万一の事態が発生した際には重要な拠点の一つ。また、CH-47輸送ヘリコプターにAH-1S対戦車ヘリコプター多数の航空機と格納庫を有するため、さまざまな映画の撮影地ともなっていまして、日本沈没、ゴジラvsビオランテ、ガメラ2、シンゴジラなどなど。

 1973年の映画”日本沈没”では東京直下地震により大被害がでた東京の救出拠点として登場しています。日本沈没の東京直下地震では350万もの犠牲者がでたという描写がでていまして、これは原作者で日本SF界の至宝、故小松左京氏が大量のデータから分析したもの。

 小松左京氏は大量のデータと取材に基づきSFに現実味を持たせる作風が素晴らしい世界観を構成しますが関東大震災の被害を元に東京の人口増大をうけ、仮に同程度の地震が発生したらば、という原作小説の描写をさらに映画化に当たって検証し示した数値とのこと。

 首都直下地震の発生に際し、東京都内は高速道路と歩道橋などの倒壊により交通網が途絶し、地盤陥没により地下街等を含め高層ビル群が次々と被害を受けるとともに、ダムの崩壊等が広域浸水被害を引き起こし、その後の初期消火失敗により都内が大火災に襲われる。

 巨大火災は沿岸部工業地帯や石油化学コンビナートの大火災を生み、逃げ場を失った被災者へ火災が襲うという状況をでした。一部特撮等はそのままゴジラの都市破壊シーンなどに転用されていますので、日本沈没、1973年版はいろいろな意味でお勧めな映画の一つ。

 首都直下地震による大被害を前に自衛隊へ災害派遣が要請され、木更津と立川の陸上自衛隊航空部隊が都内の火災消火へ、神奈川県知事要請で横須賀地方総監命令で厚木や下総に館山などの海上自衛隊航空部隊が横浜と川崎の火災消火へ出動するという描写でした。

 消防車が建物崩壊などによる道路封鎖により出動できないため、ヘリコプターだけが出動できるという劇中、消火弾という、おそらく液化炭酸ガスとハロゲン消火ガスを内蔵していると思われる特殊装備、勿論自衛隊の装備にこうした消火弾という装備はありません。

 東宝映画独特の東宝自衛隊特殊装備、消火弾についても東宝自衛隊装備ということになると思うのですが、積載し消火任務に当たっていました。もちろん、火災規模が大きすぎ、全く歯が立たない、という状況で、実際ならばバケットによる放水を続けるのでしょうが。

 しかしV-107輸送ヘリコプターとHU-1B多用途ヘリコプターが次々と離陸してゆく映像は、離陸の映像に自衛隊が協力していますから、一瞬ではあるのですけれども、消火弾を機内に次々と搭載し、燃え上がる都心へ、実機ならではの迫力という印象でもありましたね。

 小松左京氏は原作日本沈没において、東京直下地震の被害が拡大する様子を、日本人が災害文化という巨大災害においてその被害拡大を局限するための必要な文化を長く巨大災害が到来しないことで忘れられたことを東京直下地震被害拡大の要因として描いていました。

 そして犠牲者の数についても原作小説では、関東大震災の東京人口と比較した被害規模と比例して増大した結果、としていました。もちろん、首都圏の耐震技術や防災技術は関東大震災の時代には耐震構造という発想そのものがなく、今日とは比較は出来ない事も確か。

 関東大震災では特に煉瓦造りの中層建築物が簡単に崩壊し、建物への防火構造という概念が確立以前であったことから際限なく火災が延焼したという厳しい歴史がありまして、その上で東京大空襲などの被害から復興の都市計画改良をうけ、相当燃えにくくなっている。

 東京は燃える度に燃えにくく造りかえられ、それは江戸時代最初の大火からの復興へ檜葺屋根を延焼しにくい瓦屋根に作り替え、都市計画は災害と共に強靭に、その後も徐々に、という歴史はありますので、350万という犠牲者はSFの世界の描写ではありました。

 原作者の小松左京氏もこの点への認識はあったようなのですが、1995年の阪神大震災にて、高架道路の崩壊や日本沈没ほどの規模ではなかったものの地元を襲った災害に驚かされ、阪神大震災後のエッセイ"未来からのウインク”等、その作風まで影響があったようでした。

 ゴジラvsビオランテでは、自衛隊の最新鋭無人航空機スーパーX2の拠点飛行場として描かれていました、スーパーX2、現在岐阜基地で試験中の防衛装備庁X-2とは関係なく、1984年の映画ゴジラにて防衛庁が装備した首都防衛戦闘機スーパーXの後継機という設定です。

 スーパーXはカブトガニを装甲化したような大型のVTOL航空機で、これを首都でどうやって使うのか不安な航空機、核戦争を想定し核電磁パルス対応の構造を採用していたものの、ゴジラ対策用に特殊弾薬を追加搭載した際に急いで改造した状況での新任務付与です。

 VTOL機ですが航空力学を無視した形状の航空機へ特殊弾薬運用能力付与へ、急いで改修したため機体部分に電波吸収材を装着するまもなく、機体の電磁密閉構造に空隙を造ってしまい、その後いろいろあって核爆発が発生した際、脆弱部分が露呈してしまいました。

 ゴジラvsビオランテでは、この後継として新型航空機を陸上自衛隊が配備し運用しています。陸上自衛隊が運用している理由は不明ですが、高名な軍事評論家の方々と話し合った際に、多分、あれは断れなかったためではないか、という分析をはなしていただきました。

 新装備を運用するという事は所管する事を意味し、多額の予算を装備計画を変更し算出しなければならないことを意味します、たとえば現在導入検討されているという陸上配備弾道ミサイル防衛システムもTHAADならば航空自衛隊が予算を出さなければ成りません。

 しかしミサイル防衛、イージスアショアでしたら海上自衛隊が予算を出して人員と運用費用を捻出するため、航空自衛隊の懐は痛まない、という状況と重なるものがあるかもですね。原作ではアングラーという航空機に高出力レーザーを装備しゴジラに挑む展開でした。

 カブトガニのつぎにはアンコウで挑むという展開は、しかし東宝的にはおもしろくなかったようで特殊ミラーを搭載した潜水可能な無人航空機として登場しました、木更津駐屯地とスーパーX2ですがスーパーX2の格納庫との設定で木更津駐屯地の格納庫が出てきます。

 ゴジラvsビオランテでは第1ヘリコプター団のVー107輸送ヘリコプター大編隊も登場していますね。1995年の映画ガメラ大怪獣空中決戦の劇中では高射教導隊がガメラを東富士演習場に撃墜し、このガメラを害獣として駆除するべく第1師団と富士教導団が出動する。

 この自衛隊出動に弾薬輸送などの支援へ第1ヘリコプター団が支援に向かう大編隊が描かれているのですが飛行するのはCH-47,ゴジラvsビオランテは1989年の作品でガメラ大怪獣空中決戦は1995年の作品ながら、編隊はV-107からCHー47に機種転換していました。

北大路機関:はるな くらま
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