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南スーダンPKO自衛隊撤収,国際情勢転換期における次世代国連PKOの模索と日本の役割

2017-03-20 20:09:37 | 国際・政治
■第一世代型PKOへの再評価
 南スーダン自衛隊撤収が決定し五月末には完了します。これを以て日本が参加するPKO任務は全て終了する事となります。

 自衛隊は南スーダン撤収後、PKOの全てを完了する訳ですが、世界を見渡せば、日本のPKO任務完了は世界中から戦争の脅威がひと段落し、諸国民が等しく自己実現に向け平和な営みの端緒に就いたわけではありません。そこで、今回は日本の撤収後の模索とともに国連PKOを取り巻く情勢変化へ、如何にPKO任務が対応し得るかを考えてみましょう。

 国連南スーダンPKO、南スーダン支援団UNMISSは南スーダンでの事実上の内戦状態により、新国家建設という国連安保理決議はインフラ整備等の支援事業から国連防護部隊を主体とした文民保護へと転換しました。これに応じ我が国では安全保障協力法制整備をもって限定的に駆け付け警護任務として戦闘地域における自国民や国連部隊等の救出が可能となりました。

 南スーダン自衛隊撤収は、国連が求める部隊と日本が提供できる部隊の不一致により、任務が終了した事が挙げられます。自衛隊は人道支援を前提として施設部隊派遣を基本とする派遣体制を維持したのに対し、国連は加盟国へ地域防護部隊派遣を求めています。自衛隊の派遣は南スーダン派遣施設隊であり、地域防護部隊に当たる戦闘部隊を派遣していません。しかし、地域防護部隊を派遣しない一歩引いた視点を持つ日本だからこそ提示できる役割がある筈です。

 日本の役割、単純に国連へ追随するばかりが選択肢ではありません。その上で、我が国は南スーダン情勢の変化へ地域防護部隊を派遣するか、撤収するか。南スーダン情勢は首都ジュバ市内において反乱軍戦車部隊と政府軍戦闘ヘリコプターが戦闘を展開、この戦車と戦闘ヘリコプターの交戦を政府は“衝突”と表現し、自衛隊は派遣部隊日報に“戦闘”と記載していたとして、現在国会において “南スーダン日報問題”、交戦を衝突か戦闘か、安保神学論争、が久々に行われたのはご承知の通りです。

 第四世代型PKO.国連憲章での位置づけは2002年の東ティモールPKO以降、従来の国連総会が主導し安全保障理事会が追認する決議方式から、安全保障理事会の強制力を持つ安保理決議七章措置により実施される、国連憲章上の国連軍に近い法的根拠を以て派遣される方式へ転換しており、実のところ駆け付け警護問題等は2016年に法整備されましたが、2002年までに決着をつけるべき問題でした。

 しかし、第四世代型PKOは、国連が求められる平和と安全への責務への任務需要への転換点を迎えているのではないでしょうか。第四世代型PKOは、総会主導で行われる第三世代型PKO、内戦後等破綻国家の国家創造支援や分離独立紛争後の独立支援、を従来のPKOに求められた停戦監視任務等に加えたPKOへ派遣決議を総会主導から安保理主導へ転換したものですが、内戦後の国家創造支援等の任務は現在、それ程多くありません。

 国際情勢は転換期にあるといえます。国際情勢を見ますと、ソマリア沖海賊事案が2012年以来五年ぶりに発生しました、海上自衛隊が海賊対処任務部隊を派遣するアデン湾、そのアデン湾を経てソマリアの対岸に位置するアラビア半島のイエメンでは難民船襲撃事案がやはり先週発生、ソマリアのアッシャバーブ勢力の伸長とイエメン内戦により、中東地域とアフリカ地域の不安定要素が顕在化しつつあります。

 しかし、国際平和維持活動へ参加する我が国の周辺情勢もそれ以上に緊迫化しており、冷戦後最大規模での対領空侵犯措置任務や艦艇哨戒任務の任務需要が増大すると共に、弾道ミサイル防衛、島嶼部防衛任務付与、北方での米ロ対立を契機とした脅威再興、東日本大震災を契機とした南海トラフ地震対処、部隊も装備も新任務への対応に注力し従来装備が縮小されたなか、自衛隊には現状、その余裕がありません。

 シリア内戦やイエメン内戦、悲惨な内戦が続き人道支援が求められる状況は現在存在しますが、残念ながら国連PKOが関与し、平和執行として戦闘地域を安定化させるPKO任務は第二世代型PKO、最初で最後となったUNOSOM2,国連第二次ソマリア活動においてPKO部隊が大損害を受け撤収した事例があり、踏襲できません。仮に実施する場合、PKOではなく国連からの授権決議に基づく有志連合が主体となるでしょう。

 中東アフリカ地域での悲惨な内戦への国連が実施できる選択肢は皆無かと云われれば、難民支援や受入国模索と難民キャンプ運営という受動的な文民支援という視点に限れば有り得るもので、国連PKO部隊が派遣される可能性として挙げられる、イエメン内戦終結後の暫定統治機構設置による民主選挙支援、シリア内戦終戦後のインフラ再建支援、どちらも遠い先の任務となるのではないでしょうか。

 次世代国連PKOの模索が必要となる。即ち、国連平和維持活動は、この情勢変化に際し、敢えて原点回帰を目指す必要は無いのか、特に平和執行として武力紛争へ直接関与し平和安定化を国連が当事者となる危険を冒して、例えば数十万の人々を救うよりも、実のところ需要な任務が示されつつあるように思えてなりません。即ち、国連PKOが期する次の段階は原点回帰、シリア内戦停戦後の調停やウクライナ東部紛争への関与による大国間の衝突回避です。

 PKO,重要な事例は草創期、1956年、スエズ危機、エジプトのスエズ運河国有化宣言に反発するイスラエルとイギリスフランスの戦争に際し、この地域の不安定化に乗じて、ソ連軍がエジプト支援で参戦する可能性が出てきました。この場合、後の核兵器国となる核保有国参加国が直接戦火を交える事となり、中東地域での戦闘がそのまま第三次世界大戦へ発展する危機が生じ、第一次国際連合緊急軍 UNEF I展開します。

 現在のウクライナ東部紛争、シリア内戦、この二つの紛争はスエズ危機に端を発する第二次中東戦争と、大国間の直接戦闘が発生する危機が生じた点で共通点があります。特に安全保障理事会常任理事国が拒否権を発動すればこの地域の現在進められている安保理決議国連憲章七章措置に基づくPKOは派遣できませんが、国連事務局の予算権限に基づく国連総会の決議へ安全保障理事会が追認する方式を取れば、草創期のPKOは派遣可能です。つまりは、第一世代型PKOへの再評価、というもの。

 第一世代型PKOへの再評価、という視座から考えてみましょう。第三次世界大戦の危機を回避する、という視点から国連平和維持活動を再検討し特にウクライナ東部紛争ではロシアからの国籍不明武装勢力越境作戦と欧州安全保障協力機構OSCE監視団への妨害工作、シリア内戦ではISIL掃討における、シリア支援ロシア軍と欧州中東有志連合という異なる指揮系統の下での軍事作戦が展開しており、不測の事態が生じかねず、停戦監視が可能な段階となれば、再度PKOが求められるかもしれません。

 停戦監視はPKO、最初の任務となった第一次中東戦争停戦に伴う国際連合休戦監視機構 UNTSO以来、第一次世代型PKOの本来任務で、大国排除原則に基づき軽武装のPKO部隊を受け入れ国の同意に基づき、停戦監視に充てると共に武力紛争当事者への関与を最大限回避し、停戦状況を安全保障理事会へ報告するというものでした。無理に地域安定化部隊を送るのではなく、有志連合へ授権し、PKOは停戦監視に徹する、という案です。

 停戦監視は地道な監視哨群での長期任務という印象がありますが、今日、例えば無人航空機や遠隔無人監視システム、沿岸監視レーダー等による広範囲の偵察が可能となっており、例えばこの分野であれば、遠隔操縦システムや無人機偵察システムを用いて日本も協力が可能です。国連平和維持活動は国連の責務である国際の平和と安全への関与増大を目指す事務局の姿勢が、地域紛争増大の時期へ直接介入を忌避した各国に委任される形で拡大した要素が第四世代PKOへと拡大しており、此処で一つ、踏みとどまってみる選択肢を、今回敢えて撤収した我が国として提示する選択肢はあり得るかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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