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第一空挺団訓練降下始め(2010.01.10) 陸上自衛隊最強部隊の空地立体戦闘展示!

2012-01-07 00:31:48 | 陸海空自衛隊関連行事詳報

◆詳報:第一空挺団降下訓練始め

第一空挺団降下訓練始め、毎年一月の恒例行事ですが今回はその様子を写真詳報にてお伝えしたいと思います。

Img_0023日本最強の部隊はどこか、と問われれば第一空挺団、と答えておけば海外派遣110番の中央即応連隊も積雪地最強の第三普通科連隊も遊撃戦日本一の対馬警備隊も、島嶼部戦即応の西部方面普通科連隊も頭号第一普通科連隊も、装甲化機動打撃の第十一普通科連隊も、一応は納得してくれるはず。

Img_9742大空に花開く落下傘、第一空挺団、空挺とは空中挺身隊の略で、パラシュート旅団と諸外国では訳している場合もあるのですが、エアボーン、しかし空中挺身隊という旧陸軍の呼称をそのまま受け継いでいる稀有な事例の一つ、というのが空挺団です。

Img_9405その第一空挺団が次の日曜日に習志野演習場にて、本年の降下初めを行います。空挺初降下、とも呼ばれるのこ行事ですが、見学は富士総合火力演習などとは違い入場券は不要で、演習場まで電車かバスか自家用車、無論自転車でも徒歩でもいいのですが、行けば見せてくれる行事です。

Img_9498少々寒い日々ではあるのですが、来場者はかなりの規模になりますので、変な話ですが訓練展示が行われている間には比較的高い人口密度により寒さは感じません、一応暖かい服装はお勧めですが。丘陵地帯が開放されるので、後ろの方でも見ることが出来る、というのもうれしいところ。

Img_9507日時は1月8日1100~1200の一時間、演習場開放は0830~1500、国道296号線沿いの習志野演習場正門が自動車用門として充てられ、自衛隊自動車教習所が徒歩と自転車用門に充てられています。駐車場台数に限りがあるとのことで公共交通機関を推奨、手荷物検査があるとのこと。

Img_9539京成本線八千代台駅が演習場最寄ですが、門へは東葉高速線が近い。門を経て演習場に入っても、かなりの距離がありまして演習場内でのシャトルバスが運行されるのですが、よい撮影位置を確保するためにかなりの距離を走る豪放磊落な方もいました。走れば20~25分くらいなのでむりではないのですがね。

Img_9552第一空挺団が何故日本最強の部隊と呼ばれるのか、それは空挺部隊であるからです。空挺部隊は輸送機から落下傘で降下したらば、そのまま補給も火力支援もなく、文字通り身一つで戦い抜かねばならないという運命から、体力が極限まで鍛え上げられ、結果日本最強に必然としてなりました。

Img_9566初降下、と書きますと落下傘で降下して、はい初降下、というような甘い印象をもたれる方がいるかもしれませんが、そんなものではなく空挺あり自由降下ありヘリボーンあり近接戦闘あり対戦車戦闘あり、実弾こそ飛ばないものの訓練展示では日本有数の迫力、第一空挺団は甘くありません。

Img_9649第一空挺団は空挺団本部を中心に三個普通科大隊と空挺特科大隊、通信中隊、施設中隊と後方支援隊、そして空挺教育隊から編成されていて、空挺普通科大隊は本部中隊と三個中隊を基幹、特科大隊は本部中隊と二個中隊が基幹で重迫撃砲を装備している編成です。

Img_6010第一大隊は第一第二第三中隊、第二大隊は第四第五第六中隊、第三大隊は第七第八第九中隊より編成となっており、同じ番号の中隊は無いという特異な編成になっているのが特色、かつては空挺普通科群として一個連隊のように編成されていましたが、2004年に現在の編成となりました。

Img_9791 空挺団は現在中央即応集団隷下にありますが、中央即応集団が2007年に新編される前には長官直轄部隊として機動運用される部隊であり、機甲師団編成をとっている第七師団とともに、普段は方面隊隷下にありますが機動運用される部隊、という運用にあった部隊で、首都圏などの非常時には即座に展開する部隊ということ。

Img_9746 こうした機動運用部隊としての任務にあたっている第一空挺団ですが、同時に警備管区として千葉県全域の防衛警備及び災害派遣を担当しており、千葉県での防衛出動などの非常時や大規模災害の発生に備えて初動部隊を置いています。定員は約2000名。

Img_5912習志野演習場において第一空挺団が中心に行うのですが、航空自衛隊が輸送機を投入し、陸上自衛隊も中央即応集団が第一ヘリコプター団のCH-47輸送ヘリコプターを展開、東部方面隊も対戦車ヘリコプター隊のAH-1Sで猛烈に支援、第12旅団も空輸支援します。この迫力、駐屯地ではなく演習場で行う展示ならでは。

Img_5927対戦車ヘリコプター隊のAH-1Sが降下地点周辺の敵を掃討します。幅1m以下の薄い胴体とともに地表すれすれを匍匐飛行し70mmロケット弾による地域制圧、戦車に対しては射程3750mのTOWミサイルが直撃し破壊、点目標も20mm機関砲の正確な射撃で制圧、戦車の天敵が登場だ。

Img_9614輸送機はC-130HにC-1と複数機が参加し、落下傘降下を見せてくれます。次々の降下は航空祭で展示される単機展示とは大違い、降下要員は空挺団以外に特殊作戦群も参加していまして、最初に指揮官が実際に落下傘降下し、指揮官先頭という空中挺身隊の伝統を見せてくれます。

Img_9626しかし第一空挺団ですが、もう少し火力が欲しいところ、空挺普通科大隊が三個編成という三単位編成なのですから、特科隊を二個射撃中隊の編成から三個射撃中隊、とするのが理想ですし、120mm重迫撃砲は大隊本部に迫撃砲小隊を置いて、M-777のような超軽量155mm榴弾砲を装備するべきでは、と思うのですが。

Img_5965そして、装甲打撃力があると独自作戦能力が高くなるでしょう、米軍のM-551空挺戦車は運用終了、XM-8軽戦車は開発中止、ドイツからウィーゼル空挺戦闘車やロシアからBMD-3空挺戦闘車を買うわけにもいきませんから、しかし、開発中の105mm砲を搭載する機動戦闘車を運用する機動砲隊を配置して、空挺大隊が戦闘団を組む場合か中隊規模で運用する場合の支援を行えるようにするべきでしょう。

Img_9692降下した部隊は自力で戦闘を展開しなければなりませんが、輸送機からも対戦車ミサイルなどの火器を落下傘降下で展開させますので、そこで合流。そこから先は軽歩兵としての命運と共に、しかし体一貫で度胸試し、というか、まあ、体育会系全開の展示となるのですがね。

Img_9780C-1輸送機、自衛隊としても第一空挺団を全て空挺降下させたいところなのでしょうが、何分航空自衛隊に十分な輸送機が無くしかも空挺部隊輸送は任務のほんの一部、加えて演習場の制約から大空挺降下を行うにも限度があり、やはり展開能力には東日本大震災の通り厳しい現実は否めません。

Img_5998空挺部隊は緊急展開部隊ですから、例えば九個空挺中隊があるのですし、新しくより大型のC-2輸送機が開発も比較的順調に進められています。即応して1時間待機の一個中隊を常時置き、必要であれば近傍の下総航空基地から一個空挺中隊と支援部隊を含めた中隊戦闘集団を即座にC-2輸送機により展開できる体制、というのが確立すれば理想ですね。

Img_6095そこでヘリボーン。CH-47輸送ヘリコプターは対戦車ミサイルや軽機関銃を機動運用させる小型装甲車の軽装甲機動車、一個小銃班を悪路も厭わず迅速に展開させる高機動車、射程は最大10kmを超える120mm重迫撃砲、戦車も上陸用舟艇をも一撃で破壊する79式対舟艇対戦車誘導弾、全部運べます。

Img_9812OH-1観測ヘリコプターが輸送ヘリコプターのヘリボーンを支援、火砲の着弾修正と索敵が任務の観測ヘリコプターですが機動性と運動性がずば抜けて高く、短距離空対空ミサイルを搭載していてヘリボーンを妨害する敵攻撃ヘリコプターの排除も可能、川崎重工が中心になり開発した純国産機です。

Img_6132120mm重迫撃砲を輸送しているのはCH-47輸送ヘリコプター、後部に”AKAGI”とありますので、護衛艦あかぎ艦載機、ではなく群馬県の第12旅団、戦車部隊に換えてヘリコプター隊をもつ空中機動重視の編成で来年度再度部隊改編を受ける部隊の所属ヘリコプターですね。

Img_9822CH-47は55名の完全武装要員を同時に空中機動させることが出来、陸上自衛隊だけでざっと50機を運用、航空自衛隊も基地間輸送用に20機ほど運用しています。日本ではありふれた機体ですが、取得も運用も訓練も維持もかなり高価格の機体なので、こんなに保有している国は稀有、まあ、それでも国土の広さと任務の多様性に部隊数から数は足りないのですが。

Img_6186空輸と共に、・・・、実は自走してきた部隊もいるのですが、空挺団は次々と機動展開し迫撃砲陣地や対戦車ミサイルを展開させます。81mm迫撃砲は数人で担げる軽量装備ですが射程は5km以上あり、軽量さを活かしての機動運用は、相手に取り厄介な相手です。

Img_9840同時に高機動車により牽引されている120mm重迫撃砲が陣地構築を急ぎます、機動力と速度が全て、その動作も鋭く素早い。まあ、対砲レーダーをが大きすぎて空輸が難しいため、こちらも機動力を最大限に活かさないと射撃したが最後座標が把握され反撃で凄いことになるのですけれども。

Img_6217そして87式地雷散布装置を搭載したUH-1多用途ヘリコプターが上空から地雷を次々と散布、瞬時に地雷原を構築、敵の戦車や装甲車の接近を妨害します。空中からの瞬時の障害構築で、敵の反撃に備えると共に空挺橋頭堡確保までの時間を稼ぐ、命の時間を創出します。

Img_9842よしやった!、稜線に取り付きました、ここが遮蔽物で地形障害になります、ここに散兵線を敷き、徹底的に空挺橋頭堡を死守するのです。手元の装備は小銃、機関銃、機関拳銃と僅かな対戦車装備、それに手榴弾と銃剣、持って行動できる装備が火力のすべてという状況で配置に、空挺堡確保を目指して。

Img_9857そうはさせじと戦車が接近!、地雷を避けて射撃しつつ接近する仮設敵第一戦車大隊の74式戦車に対抗する空挺隊員。これぞ究極の体育会系、体一つで戦車に対抗せよ!、ゲームセンターでガンシューティングゲームでは拳銃や短機関銃でよく課せられる任務ですが、実物はそんな簡単な話ではありません、しかしやるんだな、これが。

Img_9865対戦車班!前へッ!!、01式軽対戦車誘導弾を携行した隊員が駆け寄り戦車に必殺の一撃を見舞います、軽量な誘導弾ですがこの国産の新世代ミサイルは直撃し破壊する弾道のほか、戦車の装甲が最も薄い天頂部を狙うトップアタックモードがあり、非冷却シーカーの搭載により瞬発交戦能力をもっています。

Img_9866もっと火力を!、戦車の接近を前に射程がより大きい87式対戦車誘導弾も展開します、レーザーを目標に照射してその反射に向けて超音速で飛翔する一発、誘導装置に暗視装置が組み込まれていますが、その分重いので中隊の対戦車小隊等に配備されている対戦車ミサイル、もちろん国産ですよ。

Img_9893仮設敵には中央即応連隊も参加、96式装輪装甲車が接近してきます。このほか、富士教導団の普通科教導連隊から89式装甲戦闘車も仮設敵に参加していまして、なにしろ実戦であれば空挺部隊は降下直後に叩き潰さなければ空挺堡を確保して攻撃前進に出ますから必至です。

Img_6245そこでヘリコプターの支援、戦車には戦車、が鉄則なのですけれども、何分戦車は重い、大型輸送機ならば運べるけれども落下傘での投下は無理で、空港を確保して滑走路を奪取しなければ無理な話です。・・・、ちなみに空挺部隊が空港付近に降下してその後空港を占領すればこっちは戦車はじめ多くの部隊を空輸できるので、相手もこちらも時間との闘いになる。

Img_9902負傷者!、激しい戦闘は必然として負傷者を生みました。戦闘で勿論想定ですが負傷者です、負傷した隊員を衛生隊員が担いで後送、野戦病院は開設されていません、空中機動に展開したヘリボーンの多用途ヘリコプターに負傷した隊員を収容させ、急いで後方の野戦病院などの施設に運びます。

Img_6256稜線に取り付いた空挺部隊の後方に増強部隊を機動させるヘリボーンが次々と行われます、空挺堡は現時点で確保され、ここに増援部隊を受け入れ、我が方の機動打撃に繋げれば専守防衛の我が国を侵略した敵をそのまま海岸線に大きく押し戻す端緒となり、もしくは敵の背後に降下すれば補給線を制圧して敵を干上がらせることが出来ます、この一撃この制圧のために空挺部隊は存在するといっても過言ではなく、ここが正念場だ。

Img_9905対戦車戦闘はいよいよ激化、400mm超望遠で撮影してこういった写真になりますが、空包は盛んに射撃されていて、発砲焔が見えて数秒後に砲声が遠雷が如く轟くというところ、しかし離れた場所で見ていますと全体像は俯瞰でよく把握でき、逆に迫力がありました。

Img_9911続々展開する仮設敵に対して、我が方もヘリボーンにより支援部隊を続々と展開させます。UH-1多用途ヘリコプターは基本設計こそ半世紀以上前の機体ですが、年々改良型が開発され、今でも第一線の能力があり、製造する富士重工ではエンジンを強力なものとしたUH-1Jを開発しています。

Img_9923上空から猛禽の如く急降下し襲撃するのは対戦車ヘリコプターAH-1S,敵は機動打撃力である戦車部隊を我が降下部隊を強襲せんとして開けた地域に展開させました、この機を逃さず、AH-1Sは搭載するあらゆる火力を地上の装甲目標に指向させ、たちまちの間に制圧しました。

Img_6287来たか?!、増援部隊が来た!、空挺橋頭堡までの包囲網を一挙に突破した増援部隊の軽装甲機動車が徹底的な偽装と共に進出、まだまだ完全な占領には至っていませんが、後続する増強部隊が次々と到達、空挺橋頭堡はこの増援部隊により一挙に強化されます。

Img_6305空中機動部隊!ヘリ大編隊が戦果拡大に大編隊で展開します。地上からの増援部隊は、過去の戦史に学び補給路前進路を一本ではなく三本として相互に連携するというのが陸上自衛隊の基本戦術、増援部隊が展開し、空中機動部隊の増援も行われていることは、防衛が反撃に転じたということ。

Img_6324その想定は文字通り的中、演習場遠方にも攻撃前進する車列、手前の部隊と共に攻撃前進を行う軽装甲機動車部隊が望見でき、その上空にはAH-1S対戦車ヘリコプターが直接掩護にあたっています。白煙が昇るのは先の対戦車戦闘の激戦地で、この機動打撃を前に仮設敵は敗走を始めました。転換点、空挺部隊は勝った。

Img_6327状況終了。終了を伝える喇叭が響き、戦闘は終了。これが空挺降下初め。どうですか?、富士総合火力演習のような実弾は飛びませんが、これほど広い場所での戦闘展示と参加部隊の多様さは第七師団東千歳駐屯地祭、東北方面隊創設記念行事といった行事と比べても大きな規模、一見の価値ありではないでしょうか。

Img_0020永井空挺団長より北沢防衛大臣へ訓練完了を報告。今回掲載の空挺降下初めは2010年1月10日に実施された行事の写真から作成しました。こののちに防衛大臣の訓示が行われ、祝賀会食などが関係者で行われます。装備品展示が参加車両と航空自衛隊習志野分屯基地のミサイルなどにより実施されました。

Img_6436整備を行う仮設敵、駐屯地祭では仮設敵が軽武装ですが、仮設敵に74式戦車、89式装甲戦闘車、96式装輪装甲車と重装備を相手に展示が行われました。以上の通り写真撮影を終え、当方は帰路につきます。この時点で正午を少し回ったころ、駐屯地祭でも模擬戦が狩猟する自国で装備品展示が開始される時間ですから帰路に就くには少し早目です、しかし満足の内容を記録し演習場を後にしました。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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