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【くらま】日本DDH物語 《第十五回》謎の多い護衛艦わかば,卓越した洋上航空中枢能力

2017-06-24 20:51:47 | 先端軍事テクノロジー
■先進極めたレーダーと管制能力
 S-2艦載哨戒機やG.98J-11戦闘機に続いて自衛隊において航空母艦導入の可能性を示唆する装備計画,海上での多数同時の航空運用を強く意識した中枢艦が研究されていました。

 護衛艦わかば、海上自衛隊の航空母艦導入計画について考える際にS-2艦上哨戒機と空母艦載機G.98J-11戦闘機と並ぶ、もう一つの奇妙な一致点は、大日本帝国海軍駆逐艦梨として大戦末期に建造され、戦後海中から回収された際に損傷部分が少なく、護衛艦として再就役した後、部隊を転々と転籍した、この数奇な運命をたどった海上自衛隊護衛艦です。

 大戦末期に松型駆逐艦の一隻として、柿、樺、梨、椎、榎、と同時に就役、終戦から二週間前に米空母機動部隊による対艦攻撃を受け沈没、損傷度合いが低かった事から海上自衛隊は護衛艦として再就役させる決定を行い、1955年に浮揚補修が開始、1956年に警備艦わかば、として自衛艦旗を受領、高性能レーダーを搭載しレーダー警備艦DERとなりました。

 レーダー警備艦DERの主要装備は艦砲や機関砲や対潜兵装に魚雷等の護衛艦定番装備ではなく、高出力のアメリカ製SPS-8Bを搭載、艦橋後部は全部CICに充てるというもの。当時の姿は東宝映画“潜水艦イ57降伏せず”にてアメリカ海軍駆逐艦役として登場していますが、艦砲を持たない護衛艦の艦容は試験艦のような一種独特な形状となっています。

 護衛艦わかば、ですが搭載するレーダーは高性能であり、同時に多数の航空機を洋上にて航空管制すると共に航空機からのレーダー情報等を処理し、艦隊航空の能力を最大限発揮させる、という機能を有していました。海上警備隊時代に将来の警備艦として対潜戦闘中枢艦という構想があった事は紹介しましたが、この一つの具現化といえるやもしれません。

 SPS-8B高角測定レーダー、わかば艦上に搭載されたレーダーは大型のもので且つ高性能、その導入と搭載は再就役から4年間を経て1960年に実現しています。高性能レーダーを有する駆逐艦を艦隊前方に展開させるレーダーピケット艦という運用そのものは第二次大戦中にアメリカ海軍が沖縄戦で多用しましたが、わかば搭載機材はもう少し先を見越します。

 レーダー指示器と目標表示装置に多重無線機の配置し、レーダーリレー機能によるレーダー情報の中継能力やレーダーサイトの代替任務、更には画像送受信装置として、P-2V対潜哨戒機を筆頭とする対潜哨戒機や他の航空機および護衛艦のレーダー情報をレーダー画面毎伝送し受信することで情報を包括統制する、極めて進んだ技術が搭載されていました。

 最新鋭装備P-2V対潜哨戒機のレーダー映像をそのまま伝送、艦上のコンピュータ、当時は電子計算機というべきでしょうか、この高い処理能力によりP-2V対潜哨戒機機上では見落としている可能性のある潜水艦徴候を処理することで見逃さず潜水艦を駆逐するという能力は、アメリカ海軍が着手したばかりの技術を早速供与を受け海上自衛隊が導入したもの。

 機上情報処理能力ですが、これは極めて重要です。海上自衛隊はP-2V対潜哨戒機に続き改良型の国産P-2J対潜哨戒機を導入しますが、アメリカ海軍との共同訓練において当時最新のP-3B対潜哨戒機の情報処理能力に驚かされ、1981年に遂に海上自衛隊も改良型で当時最新のP-3C哨戒機を導入し、情報処理能力向上により対潜訓練で圧倒的優位に立ちました。

 護衛艦わかば、艦隊航空の先駆けとして導入されたレーダー及び航空管制機能を有していますが、ここには戦闘機部隊への航空統制機能も盛り込まれていました。米海軍の艦隊航空管制能力を導入したのですから戦闘機の航空統制はある種当然ではありますが、重要な点は当時の航空自衛隊戦闘機はF-86、航続距離は勿論データリンク機能も有していません。

北大路機関:はるな くらま
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