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【くらま】日本DDH物語 《第二五回》HSS-2対潜ヘリコプターと世界のヘリコプター巡洋艦

2017-09-23 20:00:08 | 先端軍事テクノロジー
■護衛艦はるな建造前夜
 ヘリコプターは戦後の世界海軍航空体系へ大きな変革をもたらしました。対潜戦闘に重点を置きシーレーン維持を最重要視する海上自衛隊は草創期からその有用性を認識しています。

 HSS-2対潜ヘリコプターは大型タービンヘリコプターであり、高度な対潜機材を搭載すると共に実に1000kmもの長大な航続距離を有しています。しかしソナーを吊下してのホバーリングは大量の燃料を消費するため、1000kmの航続距離を有していても、広い洋上での対潜哨戒を行うには陸上の航空基地からの運用は常に燃料残量を考慮せねばなりません。

 ヘリコプターを艦上運用する、という戦術研究は当然高まってゆきます。HSS-2は対潜ヘリコプターとしてはかなり大型の機種で、その分、一機で索敵から標定を経て攻撃まで自己完結された対潜システムを担える分、艦上運用にはかなり難易度が高くなります。大型の艦艇と飛行甲板が必要で実際、アメリカ海軍では対潜空母等に搭載し運用していました。

 1960年代を迎え、海上自衛隊において幾度かの航空母艦建造に関する研究が進められる最中、世界の海軍趨勢に目を転じますとオーストラリア海軍やオランダ海軍等、今日は航空母艦を運用していない諸国が航空母艦を運用しており、その世代交代の時期を迎えつつあったことで、従来型代替の航空母艦新世代の到来が展望されている時代でもありました。

 オーストラリア海軍は空母メルボルンを運用、これはイギリス海軍が第二次世界大戦中に建造し、戦後工事を中断していた空母マジェスティクを1955年に取得したもので、シーヴェノム戦闘機8機とガネット対潜哨戒委17機にシカモア多用途ヘリコプター2機を艦載機として運用しました。基本的に大戦艦の古い設計ですが1963年に近代化改修を受けます。

 空母メルボルンの1963年近代化改修は電子装置の近代化改修に重点が置かれ、フィリップスLWO対空レーダーが追加搭載され、戦闘指揮所CICの電子計算能力も大幅に自動化、更にアメリカより4600万ドルを投じ、A-4スカイホーク攻撃機10機とS-2Eトラッカー対潜哨戒機14機を調達、イギリスよりウェセックスヘリを導入し、艦載機を一挙に更新する。

 海軍総旗艦としてオーストラリア海軍の最重要艦艇となった空母メルボルンですが、特筆すべきはA-4攻撃機とS-2哨戒機は空母艦載機用として特別区分を敢えて調達したもので、整備補給系統と教育訓練体系の複雑化以上に航空母艦の維持が優先された訳です。空母メルボルンは日本に寄港しており、神戸港へもヴェトナム戦争中に幾度か入港しています。

 ヘリコプター巡洋艦という艦種は、戦時中の航空巡洋艦の延長線上にある区分として早くから認識されており、イギリスではタイガー級ヘリコプター巡洋艦として第二次大戦中の巡洋艦の後部艦砲を撤去、ヘリコプター格納庫と飛行甲板を追加する事で4機の運用を可能とする改修を実施されており、巡洋艦タイガー、巡洋艦ブレークがこれにあたります。

 ペルー海軍も中古のイギリス巡洋艦をオランダより取得しヘリコプター巡洋艦アギーレへ改修しました。日本海軍の航空巡洋艦では軽巡洋艦利根型や軽巡洋艦大淀型がこれに当り、また、戦時改修後の最上型重巡洋艦等も、仮に日本が太平洋戦争を早期講和を以て壊滅を回避する選択肢が採られたのならば同様の近代化改修などが行われていたかもしれません。

 しかし、新造時からの純粋なヘリコプター巡洋艦はイタリア海軍のアンドレアドリア級ヘリコプター巡洋艦2隻が鏑矢となりました。大戦艦の改修型は艦砲を主体とした基本設計の延長線上にヘリコプターを搭載したもので、やはり付け焼刃的な発想は否めません。新造ヘリコプター巡洋艦の第一陣イタリアに続き、フランスがジャンヌダルクを建造します。

北大路機関:はるな くらま
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