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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

巨大災害,次の有事への備え 16:南海トラフ地震、FC- Systemの救援物資最適給付応用

2017-07-26 20:23:39 | 防災・災害派遣
■天文学的被災者数への対応
 南海トラフ地震が連動型として発生すれば、東海と中京阪神地区と四国紀伊南九州を津波が襲います、直撃を回避できる東京と京都、広島と岡山、熊本と福岡から天文学的な被災者へ官民一致で救援物資を送らねばなりません。

 野外通信システムFC- System、災害派遣に運用するならば非常に大きな能力が期待できます。孤立地域は何処までか、どの接近経路が復旧しているのか、重点捜索地域の被害評価、避難所の状況と避難民数、避難所の不足物資と支援状況、ノード中継装置が展開し、広帯域多目的無線機コータムのデータ通信能力ならば即座の状況把握が可能となります。

 災害となれば大量の救援物資が現地へ集積されますが、仕分けは困難を極めます。従来大規模災害時に当然の後継であった整理されない物資の山、必要な物資が届かず遅れたニーズに基づく不要な救援物資の山積、情報は洪水となり情報整理へ用意されたホワイトボードは無数の走り書きメモに埋没してゆき、その中で人命を左右する情報も埋もれてゆく。

 アクセスノード装置と広帯域多目的無線機間でのネットワーク形成と共に、野外通信システムFC- Systemが災害派遣の第一線に展開するならば、この種の問題は、整理へ人海戦術を行使しようにも他の救援作業に忙殺され、善意の山が活用されない、という状況は過去のものとなるのかもしれません。何故ならばこの状況は戦時と同じ要素を含むのですから。

 105mm戦車砲を搭載する74式戦車や16式機動戦闘車の部隊へ90式戦車用の120mm戦車砲弾が届いても使い道がありませんし、火力支援部隊という事で120mm迫撃砲部隊へ誤って155mm野砲が送られても発射は出来ません。砲弾という事で端的に示しましたが、予備部品、整備治具、電装品、糧食、要求が一つでも異なれば用をなさないものは実に多い。

 アイアンマウンテン、と揶揄される軍事用語があります。これは必要かが切迫していないものの万一不足した状況に備え大目に、万一への備えを様々な地域で蓄積しておくことで、段列地区や策源地に鉄のコンテナ資材の山が形成され、無駄となってしまうというもので、戦争とは物資の衝突でもある為、ある種正しいのですが、度を越せば軍事費を逼迫させる。

 過度な在庫を持たない、という発想は突き詰めれば日本の製造業が最もその効率性を世界に誇示し、経営効率の高さを示していた1980年代の姿を思い起こさせるものなのですけれども、実のところこの分野において最先端を往くアメリカ軍が、現在のアイアンマウンテンを構築しない効率的な戦場ロジスティクス体系を構築する際に参考としたのは日本です。

 日本のトヨティズム方式、多国間国際分業に基づく東南アジア地域での広範な部品流通網の構築と在庫管理の最適化方式をアメリカは物流大手フェデックスの管理システム方式を援用し更に効率化、バーコード利用の地球規模での物資管理体制とICタグ活用に基づく兵站基盤を構築した訳です。この方式を我が国が災害派遣に応用、当然と云えば当然です。

 被災地への物資集積と最適な配分を即時行う事で被災地域での被災者救助の立ち上がりと生活基盤再建への迅速な意向を行い、復旧即復興の体制を構成する、この為に被災地のニーズを概略ではなく明確に把握する枠組みが必要となります。これは一種サービス業の手法ながら、全国規模の基盤をスタンドアローンでインフラ毎構築できる組織はありません。

 自衛隊には民間企業には不可能な電気水道途絶状況下、燃料供給は勿論道路さえ封鎖下、任務遂行を独力で基盤構築する能力があり、ここに先端の兵站技術を防災と併用可能な水準で構築する。逆に視れば防災予算で最新の野戦通信基盤を構築しているとの批判を受ける可能性は否定できませんが、防衛防災双方に資する部分は敢えて進めるべきでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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