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ミサイル防衛3000億円平成28年度第3次補正予算案へ 異常規模の北朝鮮弾道ミサイル実験受け

2016-10-20 22:15:44 | 防衛・安全保障
■ミサイル防衛を緊急強化
 北朝鮮が本日、今年に入り23発目となる弾道ミサイル実験を実施、政府は外務省を通じ国連安保理決議違反であるとして改めて、強く抗議しました。

 防衛省は北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイル実験を受け、弾道ミサイル防衛体制を強化するべく、平成28年度第3次補正予算案へ防衛省より2000億円から最大3000億円規模のミサイル防衛装備調達を盛り込む方針、産経新聞が報じました。弾道ミサイル防衛には多くの予算を必要としますが、最大3000億円を補正予算で要求する、事態の深刻度を示します。平成28年度第3次補正予算案への弾道ミサイル防衛費用2000億円から3000億円の盛り込みは、15日に実施された今年22発目となる弾道ミサイル実験を受け、我が国へのミサイル攻撃能力向上に伴う脅威が急激に高まっているとの認識の下で示されたものですが、北朝鮮の次のミサイル実験はこの報道のわずか4日後に実施、懸念が的中してしまいました。

 北朝鮮は本日20日日本時間0700時頃、北西部の平安北道より新型中距離弾道ミサイルムスダンの発射実験を実施しました。ミサイルは上昇段階で爆発したものとみられ実験は失敗しています。しかし、ムスダン発射実験は今月15日にも実施され失敗しており、非常に短期間で弾道ミサイル実験が繰り返される現在の状況は、異常事態と云わざるを得ません。ペトリオットミサイルPAC-3の近代化費用を平成28年度第3次補正予算案へ盛り込むようです。現在自衛隊の弾道ミサイル防衛能力は、海上自衛隊イージス艦より投射される射程1000km超のスタンダードSM-3迎撃ミサイルと、航空自衛隊のペトリオットミサイルより運用され射程15kmから20kmのPAC-3ですが、PAC-3は改良型が開発されています。

 防衛省はこのPAC-3改良型、PAC-3MSEを今回の補正予算により要求するものとみられます。元々平成29年度予算概算要求へ、PAC-3MSEの調達は1000億円規模の要求が為されているのですが、ミサイル脅威の増大を前に来年度予算を座印象と折衝し国会での決定まで待つ時間的余裕が無くなり平成28年度第3次補正予算案へ盛り込むこととなったもよう。PAC-3MSEと呼ばれる改良型はペトリオットミサイルPAC-3を大型化させ』射程を延伸したものです。元々ペトリオットミサイルは対航空機用のPAC-1,航空自衛隊では改良型のPAC-2を運用していまして、射程は100kmを超えます。対航空機用の場合は音速の二倍程度で飛行している為、目標付近にて爆破し破片で飛行不能とし撃墜が可能となっています。

 PAC-3MSEこのPAC-2やPAC-3と装置から運用可能な改良型として開発されたもので2011年に発射実験に成功しました。PAC-3MSEは、弾道ミサイルへの対処能力と共に対航空機用及び対巡航ミサイル用として運用可能です、PAC-3にもその能力はありますが射程が15kmから20kmと狭いものでした、しかしPAC-3MSEは30kmから40kmに達する。弾道ミサイル迎撃の難しさは、弾道ミサイルは宇宙空間を経由するため落下速度が航空機の飛行速度よりも遥かに早く、更に落下するものですので、破片を当てただけでは落下するものはそのまま落下し目標付近へ命中するため、ミサイル本体へ直撃させ弾頭部分を空中で粉々に破壊させなければなりません、弾道ミサイル防衛の難しさは此処にある訳です。

 航空自衛隊は首都防空に入間基地第1高射群を置き、習志野や入間と武山及び霞ヶ浦へ隷下後者部隊を展開させ、その上で首都防空へ市ヶ谷派遣班を展開させています。対航空機用のPAC-2では射程が100kmを超える為、鉄壁の布陣といえましたが、射程15kmのPAC-3ではこの離隔では首都圏防空が担えず、PAC-3MSEへの換装により首都防空が完成します。航空自衛隊にはペトリオットミサイル部隊は6個群あり首都防空に当たる第1高射群、九州北部防空に当たる第2高射群、北海道中部防空に当たる第3高射群、中部地方防空に当たる第4高射群、沖縄防空に当たる第5高射群、北海道南部および東北地方北部防空に当たる第6高射群が展開していまして、対航空機防空と弾道ミサイル防衛に当たっています。

 弾道ミサイル防衛は喫緊の課題ではありますが、2000億円から最大で3000億円という規模の予算を補正予算へ盛り込むことは東日本大震災補正予算への装備品要求以来の物となります。一方、我が国には南西諸島防衛や西日本地域へ広がる防空への問題など、防衛力が現状の均衡を破綻させぬよう、周辺国の圧力へ耐えるには必要な予算が確保出来ません。3000億円と云えば例えば周辺地域での警戒任務用に先頃一番艦が進水式を迎えた、あさひ型護衛艦の建造費4隻、F-35戦闘機縮小2個飛行隊、イージスシステム搭載8200t型ミサイル護衛艦2隻、AH-64D戦闘ヘリコプター42機、一括清算ならば10式戦車420両分に当たります。

北大路機関:はるな くらま
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