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八月八日は“八八艦隊の日”,全通飛行甲板護衛艦四隻体制確立とF-35運用開始で揃う将来防衛

2017-08-08 23:32:56 | 北大路機関特別企画
■新八八艦隊DDH×8&DDG×8
 八月八日は“八八艦隊の日”、毎年恒例の八月提言、海上自衛隊には新しい八八艦隊が必要だ、という特集を今年も考えてみましょう。

 海上自衛隊は現在4隻運用するヘリコプター搭載護衛艦を8隻に増勢し、護衛艦隊隷下の4個護衛隊群隷下にある8個護衛隊全てをヘリコプター搭載護衛艦、イージス艦、2隻の汎用護衛艦、以上4隻で編成を統合すべきではないか。更に航空自衛隊において試験運用が開始されたF-35A戦闘機の運用基盤をもとに護衛隊群に垂直着陸と短距離離陸が可能なF-35B戦闘機12機を基幹とする航空隊を配置し、2隻に分散配置することで艦隊戦闘優勢へ活用すべきではないか。

 八月八日は88艦隊の日、ということで毎年恒例となりましたこの一日ですが、本年は新ヘリコプター搭載護衛艦かが竣工により、巡洋艦型ヘリコプター搭載護衛艦最後の一隻であった護衛艦くらま除籍となり、全通飛行甲板型のヘリコプター搭載護衛艦四隻が全て揃うこととなりました。F-35A戦闘機の三菱小牧FACO初飛行により、航空自衛隊へ第五世代戦闘機時代が漸く到来し、二つの意味で防衛力変革の一年と言えるかもしれません。

 防衛力変革の一年と同時に昨年度は航空自衛隊の対領空侵犯措置任務緊急発進回数が1100回と過去冷戦最盛期の950回台を一挙に大きく突破し、脅威という視点でも大きな転換点にあります。中国海軍は国産空母の建造を本格化させており、大凡十余年を経て複数、二十余年の先には五隻程度の航空母艦を保有している可能性も否定できず、脅威の進展という意味でも変容が進んでいます。現在でこそ、アメリカ海軍のニミッツ級原子力空母と最新型のジェラルドフォード級空母が優勢となっていますし、中国が建造中の航空母艦とは単艦で視た場合でも有力な設計ですが、日中を見た場合には、現状を放置すれば深刻な抑止力の欠缺に達する可能性が高い。

 88艦隊、これは日本海軍が夢見た巨大艦隊の創設計画で、戦艦8隻巡洋戦艦8隻を主体とした16隻の決戦兵力創設を目指したものでした。この88艦隊という言葉の響きは戦後海上自衛隊が、護衛艦隊護衛隊群を編成する場合に護衛艦8隻とヘリコプター8機を基幹とする艦隊に88艦隊の呼称を用いたほど、親しみを込めて顧みるもの。日本海軍は太平洋戦争開戦時に10隻の戦艦を保有し、開戦直後に戦艦大和が竣工、続いて武蔵も竣工していますので、88艦隊といわれたとしても錯誤が介在しますが、88艦隊とは1920年代に新型戦艦のみで艦隊を建造する壮大な計画でした。

 戦艦長門、16インチ砲を世界に先駆け採用した巨大戦艦は88艦隊最初の1隻であり、二番艦陸奥、とともに土佐型戦艦の建造に着手、同時に巡洋戦艦天城、戦艦加賀、と建造を展開する途上でしたが、第一次世界大戦後の世界的な軍縮機運とともにワシントン海軍軍縮条約が成立、日本も批准した事で長門と陸奥を除き、未成戦艦となっています。もちろん、当時の日本の経済力では88艦隊編成は限界があり、仮に実行したならば予算の大半が88艦隊にまわり、結果、艦隊航空や護衛艦艇建造に大きな影響が及んだであろう事はいうまでもありません。

 新しい88艦隊、これは海上自衛隊に高速戦艦を建造するというようなものではなく、ヘリコプター搭載護衛艦8隻と艦隊防空用イージス艦8隻を護衛艦隊に配備させ、海上防衛の主軸に充てる、というものです。既にイージス艦は6隻に加え8200t型護衛艦としてより大型のイージス艦2隻が建造され、ミサイル護衛艦8隻がイージス艦により充足され、全通飛行甲板型護衛艦は、ひゅうが型いずも型の4隻が竣工していますので、この壮大な案はヘリコプター搭載護衛艦を4隻増勢すべき、というものです。

 ヘリコプター搭載護衛艦、海上自衛隊が1973年に最初のヘリコプター搭載護衛艦はるな竣工とともに長く日本独自の装備体系として練成しました艦種で、大型の対潜ヘリコプターを3機集中運用し、対潜中枢艦とする運用です。イタリア海軍のヘリコプター巡洋艦アンドレアドリア級やイギリス海軍のヘリコプター巡洋艦タイガー、日本を度々親善訪問したフランス海軍ヘリコプター巡洋艦など、世界をみればヘリコプター巡洋艦は多種多様ですが、対潜戦闘へ日本ほど体系化した実例はありません。

 ひゅうが型護衛艦、いずも型護衛艦、全通飛行甲板型護衛艦を4隻そろえた海上自衛隊ですが、こうした運用を実施しているのは日本だけでしょう。全通飛行甲板型護衛艦の最大の利点はF-35B戦闘機を運用できる点です。航空自衛隊が装備するF-35Aは空軍型で、F-35Bはアメリカ海兵隊が岩国航空基地へ前方展開させている機種で、垂直着陸と短距離離陸が可能です。しかし、F-35BはF-35Aにたいし、燃料搭載能力の関係で航続距離だけは若干劣りますが、空対空戦闘能力や戦場情報統制能力では全く同等の能力を有しています。

 F-35Bを海上自衛隊に配備する、この利点はF-35戦闘機のレーダーに探知されにくいステルス性能と卓越した情報統制能力にあります。こういいますのも、F-35は戦域情報優位を念頭に情報支配こそが戦域支配に直結するとの思想に基づき設計された第五世代戦闘機の鏑矢で、相手に探知されることなく水上戦闘艦や航空母艦などの目標位置を把握し、艦隊ミサイル戦闘の先手を打てる点、更に水平線を越えて水上戦闘艦艇のレーダーからは捕捉できない遠方の目標を探知できるほか、必要であれば艦隊防空戦闘、陸上戦闘機部隊の邀撃戦闘能力の補完さえ、可能となるでしょう。逆の視点から、アメリカの友好国以外にはF-35Bは調達できず、第五世代戦闘機は勿論、第四世代戦闘機を艦上運用する場合には40000t以上の大型艦が必要となります、即ちF-35にアクセスできる日本ならではの選択肢といえるのです。

 8隻のヘリコプター搭載護衛艦を必要だ、として88艦隊の必要性を提示する背景には、1個護衛隊群へ2隻のヘリコプター搭載護衛艦を配備することで、仮に一方が大きな損害を被ったさいにも戦闘行動を群として維持できるという部分、更に1個護衛隊群の能力を無理矢理2個の群として行動させる場合の運用を考慮したものです。数の上では、中国海軍が大量生産する小型水上艦艇に海上自衛隊は対抗しえるものではありませんが、質的優位を喪失することは、抑止力の破綻に直結しますので絶対にさけなければなりません。

 1個護衛隊群に2個の群としての機能を付与させる、この視点について。これは1個護衛隊群に1個航空群を配置させ、艦上から機動運用させるという施策を意味します。海上自衛隊は現在、1個護衛隊群に航空隊に相当する哨戒ヘリコプター部隊を配置しています。SHー60J/K哨戒ヘリコプター部隊を艦上運用していますが、ここに12機のF-35Bを搭載することで、SH-60の航空隊とF-35Bの航空隊を配置することとなる。SH-60は対潜戦闘を主眼に哨戒任務に当たる航空機ですが、F-35Bは空対空戦闘と対地戦闘を含め哨戒任務にあたる航空機で、この二機種が配備されているならば、自衛隊が求める洋上任務のかなりの部分を遂行できるでしょう。

 Fー35B航空隊とSH-60航空隊で航空群を編成し、2個護衛隊を基幹として運用される護衛隊群に配備する、いわば護衛隊群に航空群という2個群を洋上に展開させることができるのです。この威力は大きい、我が国へ軍事的冒険を考える勢力は常に航空自衛隊のF-35とF-15に気を配るとともに陸上の航空基地以外の艦上から飛来するF-35Bの能力を想定しなければなりません。そして、航空機の進出速度は大きく、護衛隊群の展開海域から離れた方面へも迅速に展開できるのです。この利点は大きく、ヘリコプター搭載護衛艦運用k版を最大限活用する施策であると考えます。

北大路機関:はるな くらま
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1 コメント

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Unknown (軍事オタク)
2017-08-09 10:03:20
賛成です。
F-35Bを載せれば劇的に海自の能力が上がる。
なんちゃってステルス機とは桁違いのステルス性能があるので一方的に相手をせん滅できるでしょう。
ミサイルの数に制限はありますがね。

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