北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

南スーダンPKO情勢悪化、89式装甲戦闘車とAH-64D戦闘ヘリコプター緊急調達の英断が必要

2016-10-12 22:07:24 | 国際・政治
■政府は拍手ではなく装備を送れ
 時事、南スーダン首都での緊張高まる。自衛隊PKO部隊が派遣されている南スーダンにおいて政府軍部隊とPKO部隊の緊張が高まる事態となりました。

 南スーダンにおいて状況がひっ迫しています。大統領派と副大統領派の対立を起因とした事実上の内戦状態に陥っている南スーダンですが、2011年に独立を果たした同国の国家創造を支援するべく国際連合南スーダン派遣団UNMISSのPKO部隊8000名が派遣中で、UNMISSには我が国自衛隊も施設部隊及び警備部隊等を派遣中、当事国となっています。政府は先頃国会において自衛隊員の貢献全般に拍手を送りましたが、今送るべきは装備です。

 自衛隊は国際平和維持活動へ対応するべく、89式装甲戦闘車とAH-64D戦闘ヘリコプターの調達再開を真剣に検討し、当初の装甲戦闘車350両体制と戦闘ヘリコプター60機の整備計画を早急に固めるべきではないのか、89式装甲戦闘車とAH-64D戦闘ヘリコプターは共に用途を広く運用でき、その緊急性から補正予算を組んででも取得すべきではないか。

 現在送るべきは戦車等で、新装備は今後の課題への対応という範疇ですが、安全保障関連法制整備に際して、自衛隊の国際平和維持活動における文民及び国際平和維持部隊等への駆けつけ警護が法的に可能となりました。駆けつけ警護に当たる英訳が無いのですが、これは軍事行動へ一体として参加する中に在って、構成部隊の一部が攻撃を受けた際に一体行動しない選択肢そのものが無い為の、日本独自の法的表現である為です。

 しかし、安全保障関連法制における駆けつけ警護の法的な可否ばかりが、国会や識者の間での論争となりましたが、我が国の装備体系、専守防衛故の地形防御重視に依拠した対戦車戦闘を基本とした装備、対戦車ミサイルは多いものの軽装甲車を除く装甲車が殆ど無い装備体系では、部隊による任務遂行能力の有無についてはほとんど議論されませんでした。

 T-72主力戦車等、南スーダンでは強力な装備が第一線で運用されています。駆けつけ警護、といいましても、相手が重装備過ぎます、陸上自衛隊は軽装甲機動車を若干数派遣していますが、125mm戦車砲の前には防御力がありませんし、軽装甲機動車に搭載するMINIMI分隊機銃では撃破能力は論外、戦車に擦過傷しかつけられず、文字通り歯が立ちません。現時点では本当に隊員の安全を考えるならば、中距離多目的誘導弾か10式戦車を小隊規模で緊急派遣するしかないでしょう。

 89式装甲戦闘車であれば、大口径の35mm機関砲により威嚇射撃が可能ですし、重装甲車の撃破可能、搭載する79式対舟艇対戦車誘導弾はT-72戦車の火器管制装置による125mm戦車砲の射程外に当たる4000mの遠距離から撃破可能です。防御力は戦車砲には耐えられませんが、重機関銃弾程度には耐え、不整地突破能力が高い為、回避能力も非常に高い。

 調達できるのかという視点について。確かに生産終了した装備ですが、再生産は可能です。例えばイタリア陸軍のダルド装甲戦闘車などは1989年に完成したものの、財政難や装備計画二転三転により部隊配備開始が2000年から、と大きく遅れた事例があります。89式装甲戦闘車の最終調達は2004年度ですが、年産45両程度1中期防以上の機関の調達ならば、生産ライン再構築は可能でしょう。

 AH-64D戦闘ヘリコプターですが、イタリア陸軍などはA-129マングスタ対戦車ヘリコプターをボスニアPKO任務へ派遣させた事例がありまして、突発事態に対し即座に航空支援を行う体制を立てる事は派遣部隊の安全上重要な選択肢です。今年に入りイギリス陸軍がAH-64Dの後継としてAH-64Eの50機調達契約を行い、この種の装備の有用性は大きい。

 89式装甲戦闘車は運用と整備共に戦車と同等の厳しい運用の負担がありますが、陸上自衛隊には74式戦車の縮小を以て機甲部隊を離れた潤沢な経験を持つ要員が多数在籍していまして、74式戦車の経験を有する要員ならば89式装甲戦闘車の運用にも対応し得る、AH-1S対戦車ヘリコプターの要員が多数在籍する現在ならばAH-64Dへの移行も可能でしょう。

 現在、南スーダンでは非常に懸念すべき状況が展開しています。勿論、即座に部隊を緊急展開する以外、新たな装備品調達は間に合いませんが、現在の国連PKOは国連憲章七章措置であり、危険な地域へも派遣されます。政府は自衛隊を派遣する責任から、拍手を送るだけではなく、責任を持った任務遂行へ必要な重装備の調達を行う、これこそが自衛官の任務に応える政治の責任だ、と考えます。

北大路機関:はるな くらま
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36 コメント

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Unknown (あ)
2016-10-13 08:34:17
いや情勢悪化したんなら撤退しろよ
安定している、隊員に危険は及ばないって建前で自衛隊派遣したんだから
危機迫る状況なら大人しく撤退すればいいだけ

危険だからってよりアグレッシブな兵器突っ込んで解決とか頭悪すぎ
んなことしたら泥沼不可避だし隊員にも遅かれ早かれ危害が及ぶ
というかそもそも国内でも大問題になる
バカなミリオタが政治や法律を知らずに非現実的なことを喚くからミリオタ全体が忌避さらるんだよ
自重してくれ
UNMISSとして参加 (はるな)
2016-10-13 08:59:38
あ 様 

UNMISSとして参加しているのであって、日本一国が参加している訳ではありません、だからこそ参加する際に慎重な配慮が必要だ、と当時当方も書いていた訳ですが

安保理決議により実施されているPKOですので、日本がUNMISSから一方的に撤退し、それによりUNMISS全体が失敗し、大きな人道危機が生じた際に日本はどう責任を執るのか、安易に撤退する事は出来ません

2002年以降のPKOは昔のPKOとは根本的に異なるという点を留意し、観てゆかなければなりません。まあ、自衛隊員の人命さえ無事ならばUNMISSが失敗しても、人道危機があっても、というならば別ですが、それはちょっと難しいかもしれません
Unknown (Unknown)
2016-10-13 10:11:14
そりゃゴラン高原のように部隊引き揚げっつーことになるんじゃないの
Unknown (ドナルド)
2016-10-13 15:28:17
はるなさま

私は「あ」さんと同意見です。原則は守るためのものであり、ここで法をまげるのは、将来に大きな禍根を残します。それは、UNMISSへの不義理などとは比べ物にならない大きな問題と思います。PKO法の廃止につながるくらいの。

ゴラン高原だって、シリアとイスラエルはとんでもない重装備を持っていますが、あそこのPKOが戦車は攻撃ヘリで武装しているわけではありません。96式くらいは問題ないですが、それ以上が必要な情勢なら撤退すべきです。

逆に撤退の決断ができないのであれば、それこそ危険です。

もちろん情勢をきちんと理解していないので、内戦なのか、内戦状態なのか、単に犯罪者が武装しているだけなのか、私にはわかりません。しかし、「内戦状態」なのであれば、撤退すべきです(もちろん、手順を踏んで)。「内戦状態でない」のなら重装備は必要ありません。むしろ撤退時の邪魔になります。
新しい安保理決議があれば (はるな)
2016-10-13 18:39:35
Unknown 様 こんばんは

日本だけ撤退するのではなく、新しい安保理決議に基づき、UNMISS任務を終了でき、ECOMOGなどへ任務を移管し撤退できるのであれば、それに越したことは無いと思います

ゴラン高原PKOは、イスラエルシリア兵力引き離し協定に基づくPKO部隊派遣ですので、国家創造を任務とするUNMISSとは根本から意味が違うのですよね

ただ、内戦の長期化を念頭に、出口戦略を模索しなければ、今回のUNMISSは国連憲章七章措置に基づく法的拘束力がある派遣ですから、情勢によっては国連防護軍へ改組される可能性もあります、これは、我が国PKO協力法の趣旨から、参加は難しいかもしれません
ゴラン高原PKOの任務は”監視” (はるな)
2016-10-13 18:49:19
ドナルド 様 どうもです

ゴラン高原PKOですが、UNTSOの派遣はイスラエルシリア兵力引き離し協定に基づく監視任務の国連への協力要請に基づくものでしから、阻止の任務は含まれていません、もう一つ、査察任務も付与されていたのですが、これも阻止行動は査察任務に含まれていなかっただけなのですよね、国連は違反行動を確認した場合にはイスラエルシリア合同委員会へ、UNTSOから主席調整官を派遣し、兵力引き離し状況を公正な立場から指摘する事が任務です

逆に2006年のレバノン侵攻南レバノン戦争では、国連レバノン暫定軍へ防護任務が付与されたため、フランス軍のルクレルク主力戦車をはじめとした大部隊が派遣されました
東ティモールPKO派遣以降はPKO任務が国連憲章七章措置 (はるな)
2016-10-13 19:02:14
少し長くなりましたので引き続き

南スーダンPKOですが、2002年の東ティモールPKO派遣以降はPKO任務が国連憲章七章措置として強制力のある決議に基づく実施となっていますので、枠組の上では国連防護軍への改組が容易となっていまして、逆に、潜在的危険地域へのPKO部隊派遣が増大しています、改組の際が撤収の時機ではあるといえますが、現在はその分水嶺といえるのかもしれません

UNMISSへの部隊派遣ですが、宿営地付近が幾度も戦闘地域となり難民収容の際に戦死者が出たインド軍は2014年にBMP-2装甲戦闘車を派遣しました、人民解放軍も当初は92式装輪装甲車を派遣していましたが、現在は90式装甲車機関砲搭搭載型を追加展開させています

少なくとも、駆けつけ警護を要請される蓋然性が高まり、その上でジュバ空港という南スーダン唯一の国際空港に宿営地を置き、宿営地付近では既に幾度が戦闘が展開されている状況で、必要な装備を送らず、状況に問題は無い、とする現状は、第一線部隊へ配慮をしていません

一方、繰り返しますが、PKOは現在全て七章措置です、故に、こうした状況は、日本がPKO部隊を派遣する限り将来的に重ねて考えられる事態ですから、今回は勿論、次への備えは必要だとして、今回の提案となりました

ただ、これを契機に、日本はPKOとは金輪際手を切って独自の国際平和維持活動へ転換する、という選択肢もありますし、PKO派遣を再度総会と安保理の6.5章決議へ回帰させる外交努力を行うという選択肢もあるともうのですけれども、ね
今後の本格的PKOに備えて (tk)
2016-10-14 02:22:10
戦闘になった場合に撤退するというのは国際社会が求める日本の役割に反するものである事はよく理解しています。しかし、今回のPKOにおいて戦死者が出た場合に「自衛隊はPKOに一度派遣されれば戦闘になっても撤退出来ない」という論調を助長する事になります。この事は次のPKOに支障をきたすでしょうし、何よりそれは長期的に国際的な期待を裏切り続ける事になるでしょう。
今回のPKOでは現状で出来得る限りの任務を行い、更に状況が切迫した場合には撤退すべきと考えます。無論次のPKOでは重装備を持ち込み、戦闘を行う事を考慮する必要がありますが。
後、89式装甲戦闘車は派遣するならばもう少し市街戦を考慮し、爆発反応装甲や、センサ類を増やす必要があるでしょう。それに、戦車回収車も増産する必要があるでしょう。
Unknown (名無し)
2016-10-14 11:28:54
非武装の停戦監視団オンリーに出来ないのですか?
Unknown (人民の目)
2016-10-14 11:56:36
南スーダンに戦争しにいくつもりですか?
ブログ主は冷静に発言するべき。
長谷川豊のように愚かな表現をして炎上することが無いよう望みます。心配ですよ

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