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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

北朝鮮,日本海へ北極星2型弾道ミサイル・火星12型弾道ミサイル二週間連続の発射実験

2017-05-22 23:59:10 | 防衛・安全保障
■北極星2型弾道ミサイルの発射
 北朝鮮は昨日21日に北極星2型弾道ミサイルの発射実験を行いました、火星12型弾道ミサイルとあわせ二週間連続の発射実験となります。

 火星12型弾道ミサイル、先週日曜日に発射され短距離を長時間の飛翔時間を経て落達したことから高高度を飛翔し落下速度を極超高速へ到達させるロフテッド軌道方式がとられたことを強く印象付けました。昨日、北朝鮮は先週日曜日に続き弾道ミサイル実験を実施し、今度は日本時間夕刻に北極星2型ミサイルを内陸部から日本海へ向け発射しました。

 北極星2型ミサイルは火星12型弾道ミサイルと同じく移動発射装置による運用を基本としており、従来実施された固定ミサイル実験施設からの運用に対して、移動発射装置の発見は兆候をつかみにくく、ミサイル防衛を行う側としては北朝鮮全域を警戒監視範囲に含める必要が生じ常続的警戒飛行やイージス艦複数の遊弋等、負担が増大する事を意味します。

 ロフテッド軌道方式を用いた場合、弾道ミサイル防衛は迎撃ミサイルの発射に関する時間的猶予が非常に短く、また、弾道ミサイル防衛は宇宙空間から落下するミサイルを破壊するため、単に撃墜しても落下する結果がかわらない為、直撃し弾頭部分を高空で破砕する手法が採られますが、早すぎれば通常弾頭での迎撃はさらに難しくなり、課題は大きい。

 ミサイル防衛体制の強化を急ぐ防衛省ですが、現在の予算規模では限界があります。現在は首都圏中心部へミサイル防衛部隊を展開させると共に、ミサイル破壊措置命令を常時発令する事で全国の地対空ミサイルペトリオットPAC-3部隊が待機態勢に入っていますが、現段階ではPAC-3は射程が短く、京阪神中心部や中京中心部は迎撃範囲に入っていません。

 飽和攻撃としまして、単一箇所へ複数の弾道ミサイルを集中された場合には、現在のミサイル防衛システムでは突破される可能性があります。それではどの程度の密度が望ましいか、と問われれば、一例として沖縄の嘉手納基地を防護するためにアメリカ軍は陸軍防空砲兵1個大隊を集中させています。一箇所の基地防空でもこれだけ必要だ、という事です。

 脅威度についてですが、従来のノドンミサイルであれば配備数は150発から200発程度とされ、ノドンよりも射程の大きなものは日本本土ではなくグアムを射程とし、射程の小さなものは北部九州を射程に収めますが主として韓国攻撃用のものでした。最大200発は大きな脅威ですが、第二次大戦中の絨毯爆撃程の脅威は通常弾頭ならば、ありませんでした。

 しかし、核開発が行われると共に、核弾頭を弾道ミサイルへ搭載できる程度に小型化出来たとすれば、これは北朝鮮が実現したと自称する一方、証明する手段がないという状況にあるのですが、日本本土へ核兵器が投射される可能性が生じた事を意味し、看過する事はできません。200発の内喩え1発でも核弾頭を搭載していれば、大変な被害が生じます。

 北朝鮮核開発及びミサイル開発はどの段階が到達点となるのかについてが、今後のミサイル実験継続を左右する問題となるでしょう。この点について、北極星2型ミサイルの位置づけは射程をグアム程度とした中距離弾道ミサイルであり、次に大陸間弾道弾の開発へ展開し、場合によっては日本本土上空を飛翔する経路が用いられる可能性は否定できません。

 自衛隊が航空攻撃により北朝鮮ミサイルを発射以前に撃破する事は出来ないのか、と思われるかもしれませんが、第一に航空自衛隊は専守防衛の国是と共に戦闘機や爆撃機を日本本土に到達させない防空自衛隊というべき制空権維持に特化し、対地攻撃能力は元々限定的です。そして移動発射装置を北朝鮮から探し出す索敵能力も想定されていない現状です。

専守防衛は我が国の平和国家としての国是ですが、そもそもミサイル脅威が顕在化する中に遭って、祈るような手段としての平和主義か、国民の平和的生存権を国家が維持するための選択肢を残すのかについては、平和主義堅持というより前者か後者かの討議が充分行われているのかとの印象が無くもありません。そして現状の防衛力では限界があるのです。

有事の際には米軍への打撃力へ依存する他ないのですが、米軍の行動を支援する枠組み、そして米軍が主体となる事へのアメリカ世論への問題は無視できず、場合によっては日本が必要な打撃力の一端を担うという選択肢が突き付けられる可能性は充分あります。一方、北朝鮮のミサイルと核開発はアメリカ本土を標的とし、当面鎮静化の見通しはありません。

勿論、ミサイル防衛に限度があるとしても、攻撃以外打つ手なしという状況ではありません。イスラエルやフィンランドのように全土公共ミサイルシェルター建設の強化や、スイスのように建築基準法を改正し住宅新築に際しての地下シェルター設置義務化等により、消極的ですが国民保護に資する事は可能です。ただ、現状のまま事態放置という選択肢は非常にリスクがある選択肢となってしまいました。

北大路機関:はるな くらま
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