北大路機関

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【くらま】日本DDH物語 《第十八回》日本版ハリアー開発期す科学技術庁VTOL機研究

2017-07-15 20:31:04 | 先端軍事テクノロジー
■NAL-V/STOL機研究
 日本の空母建造計画は時期尚早として見送られますが、同時期に日本がハリアー攻撃機のような垂直離着陸機研究を行っていたのはご存知でしょうか。

 ハリアー攻撃機、イギリスで開発された滑走路を必要としない垂直離着陸が可能な亜音速攻撃機で、冷戦時代に滑走路が破壊された場合を想定しての前線航空機として開発されましたが、滑走路を必要としない利点は飛行甲板の短い航空巡洋艦でも運用できることを意味し、ハリアー軽空母という従来の航空母艦よりも遥かに小型の艦種を構成しました。

 F-35B戦闘機の岩国航空基地配備が開始されましたが、F-35B戦闘機はハリアー攻撃機の後継機として開発されました。遡ればイギリスにて画期的な垂直離着陸機技術実証型P.1127が1960年に初飛行を果たしました。続いて1965年からは対潜母艦用の垂直離着陸航空機ケストレル実験機による研究試験を開始、今日のハリアーへと発展してゆきます。

 垂直離着陸機、滑走路を必要としない未来の航空機として1960年代には多くの国々が研究を重ねていましたが、その実用化の筆頭となったのがイギリスのハリアーです。しかし、アメリカやソ連での研究が進められ、ドイツやフランスでも同種の研究が実施、未来を往く最先端の航空技術という事で日本も垂直離着陸航空機研究諸国の例外ではありません。

 我が国では当時の科学技術庁が主体となり航空宇宙技術研究所V/STOL機研究として進められていました。航空宇宙技術研究所NALにおけるV/STOL機研究として進められていたものです。航空宇宙技術研究所NALは宇宙航空研究開発機構JAXAの前身にあたる組織です。V/STOL機は新分野の航空機であり、技術的開拓の余地が大きいとされた技術の一つ。

 JR-100エンジンとして、当時、IHI石川島播磨重工が開発していた国産実用ジェットエンジンJ-3の技術を応用し、垂直離着陸用の派生型を開発しました。J-3エンジンは航空自衛隊の戦後初の国産ジェット練習機T-1Bや、海上自衛隊のP-2J対潜哨戒機等に採用されているエンジンです。これは戦時中の国産ジェットエンジンネ20の開発者が主導しました。

 J-3エンジンはジェットエンジン先進国イギリスのブリストル社製エンジンやロールスロイス社製エンジンに対抗するべく、当時の通商産業省と防衛庁が国内重工大手五社の出資を主導し創設した日本ジェットエンジン社NJEにより開発したものです。試作品は高熱に耐えられずタービンブレードが溶解し弾け飛ぶ等の散々な失敗から成功の芽を育てました。

 日本の垂直離着陸航空機はJR-100エンジンの圧縮空気を姿勢制御に応用しアニュラー型燃焼器からジェットを噴射させ離陸する方式を採り、まず航空宇宙技術研究所JR-100フライングテストベッドとして、先ずは離陸する事を第一目標として航空力学等は考慮せず開始され、これは骨組みにJR-100を直に搭載した実験機により飛行試験を実施しています。

 T-1練習機改造機にJR-100エンジンを搭載する実用航空機開発は、このJR-100フライングテストベッドに続いて予定されていました。NAL-V/STOL機研究とはいうものの第一段階の研究ではエンジンを実証しただけに過ぎず、航空機の形状を採っていなかった為です。T-1練習機改造機は高速飛行に適した後退翼構造を直線翼に改めJR-100エンジンを置く。

 NAL-V/STOL機研究とはいうものの、実際にはJR-100エンジンをT-1練習機改造の機体構造中心部に置くもので、構造上、VTOL飛行は出来るものの、飛行制御プログラム等を有さない構造であり、STOL機としての短距離離陸は非常に実用性を欠いたものであったかもしれません。しかし残念ながらT-1練習機改造V/STOL機研究機が実現しませんでした。

 JR-100フライングテストベッドののち、T-1練習機の縮尺模型による飛行実証試験は行われたとも言われますが、科学技術庁と防衛庁はそれ以上の段階まで進めていません。JR-100フライングテストベッドはその後保存され、岐阜県かかみがはら航空宇宙博物館にて展示されています。日本版ハリアーとは行きませんでしたが研究自体が、興味深い事実です。

北大路機関:はるな くらま
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1 コメント

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Unknown (流線形)
2017-07-15 23:24:03
ガスタービン機関の歴史は、燃焼温度の高温化による効率向上と共にあると言っても過言ではないでしょう。
この30年ほどのトレンドは、タービン動静翼に使用される合金自体の開発による高温耐性の向上というよりは、フィルム冷却技術、TBCコーティングの向上によって実現されてきていると思います。
近年では、航空用ガスタービンよりも陸用ガスタービンでの技術開発が先行しているようで、これも、今迄のトレンドとは違うと思います。
そうですね、H形ガスタービンといえば、GEですが、蒸気冷却をタービン動静翼冷却に採用し、東電冨津で採用され、営業運転してますね。
航空用ガスタービンで蒸気冷却が使えるかと言われると、Noなんでしょうが、合金自体の高温耐性化だけではなく、フィルム冷却、TBCコーティング、合金の凝固性質(sc翼の歩留向上)など、まだまだ技術開発の余地があるように思います。もしかすると、DS翼の歩留向上、若しくは、DSの結晶最大化というのも有りうるかもしれません。
本件話題のように、使用法の話もあるでしょうが、ガスタービン機関自体の性能、特に冷却技術の進歩は欠かせない視点だと思いますよ。

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