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【くらま】日本DDH物語 《第二〇回》日本版ハリアー断念と仮想敵国ソ連のVTOL研究展開

2017-08-05 20:14:03 | 先端軍事テクノロジー
■T-1VTOL機研究機断念の影響
 T-1練習機改造V/STOL機研究機の断念は、続くべき次をすべて解消させました。

 T-1練習機改造V/STOL機研究機、研究用模型の写真などを見ますとT-1練習機がジェット練習機として高速飛行に対応する後退翼を採用しているのに対し、T-1練習機改造V/STOL機研究機はT-33練習機のような直線翼を採用する構造でした。これは、JR-100エンジンの左右噴出部を左右の主翼に配置、垂直離着陸時の安定を確保するものでしょう。

 JR-100エンジンはT-1練習機の胴体部分に配置し、練習機としての複座構造の内、操縦席一つをエンジン区画に転用し単座型とした構造を採用する計画でした。この構造では、ジェットの噴射により垂直離着陸は可能で、主翼を燃料タンクとして用いる事から先行するJR-100フライングテストベッドよりは飛行時間は長かったでしょうが、実用性は難しい。

 JR-100フライングテストベッドに続いて、中止されたT-1練習機改造V/STOL機研究機を完成させていたとしても、この機体に70mmロケット弾を搭載し支援戦闘機として運用するような、実用航空機へ展開する事は難しく、更に姿勢制御機構を研究し、その上で主翼からの整備上複雑過ぎる噴出機構に頼らない構造としなければ、実用機とはなり得ません。

 しかし、仮にT-1練習機改造V/STOL機研究機が完成していたならば、勿論その為に必要な費用を相当に掛けており事業評価上中断リスクが大きくなるという理由もありますけれども、実現性が高まる事で、用途模索は広範に行われるでしょう。この実例として、ソ連のYak-36試作垂直離着陸機がありました、試作機ですがこの完成が転換点となったのです。

 海上自衛隊がHSS-2対潜ヘリコプターの運用を通じ着実にその能力を最大限活かした戦術運用を研究する同時期、我が国が事実上の仮想敵国として対峙していたソ連海軍ではモスクワ級ヘリコプター巡洋艦の建造を進めていました。モスクワ級ヘリコプター巡洋艦は1950年代にアメリカ海軍が進めたポラリス原子力潜水艦への対抗策として要求されたもの。

 モスクワ級ヘリコプター巡洋艦は基準排水量14000tと大型巡洋艦で、艦橋構造物と煙突及びマスト部分を一体化し、船体前部にSUM-N-1対潜ミサイル及びSA-N-35対空ミサイルという強力な兵装を搭載し、船体中央部から後部に掛け、船体内部に航空機格納庫を配置し、その上部を全て飛行甲板とした設計で艦載機にヘリコプター14機を搭載していました。

 1967年に一番艦モスクワが竣工、二番艦レニングラードが翌1968年に就役しています。艦載機はソ連発の艦載機として開発されたカモフKa-25ホーモン対潜ヘリコプターで1961年にツシノ航空ショーにて初めて公開された機種でした。広大な飛行甲板には着艦支援用ネットが設置され、着艦と同時に船体動揺による横滑りを防止する構造となっています。

 モスクワ級ヘリコプター巡洋艦は当初10隻程度が建造される計画でした。ポラリス弾道ミサイルを搭載しソ連中枢部を狙うアメリカのポラリス原潜からソ連本土を防衛するにはそれだけの規模が必要だと考えられたのですが、モスクワ級ではYak-36試作垂直離着陸機の実験を行った際に、実用性と共に将来発展性に限界があるとして量産が断念されたのです。つまり、モスクワ級ではVTOL機が運用できない、として見限られた訳ですね。

 Yak-38VTOL攻撃機は、1971年にYak-36試作垂直離着陸機の技術的成果を以て開発されました。実用性では飛行時間が極端に短く、搭載量も限られ、短射程空対空ミサイル2発と機関砲を搭載する事しか出来ず、実用性は難色が付くものでしたが、Yak-36試作垂直離着陸機初公開から僅か4年後にYak-38VTOL攻撃機を完成させた程影響力があったのです。

北大路機関:はるな くらま
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