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F-22戦闘機再生産計画!【前篇】 米連邦議会下院小委員会がステルス戦闘機再生産を軍事委員会へ提言

2016-05-02 21:14:44 | 先端軍事テクノロジー
■F-22戦闘機再生産計画
 CNNが報じたところによれば、米連邦議会下院の小委員会において、かなり現実的且つ具体的にF-22戦闘機の生産再開が討議されているとのこと。

 F-22,最強の戦闘機、と提示して本機ほど異論がない航空機もないでしょう。米連邦議会下院の小委員会は4月30日までに、コスト増大を理由に生産中止となっていた最新型戦闘機F-22について、再生産を行った場合の財政負担水準及び再生産の工程上において生じる諸問題等の説明を求める条項を国防関連法案に盛り込むことで合意に至った、とのこと。共和党議員で議会下院小委員会委員長のマイクターナー議員は、F-22再生産の是非に関する検討は米空軍の戦力優位性を問う上で有意義な議論になるとし、この決定を元に下院軍事委員会はF-22再生産を審議するという。

 何故F-22か、それは更に先進的というF-35の開発遅れ、無人ステルス空母艦載機X-47Bの中止、アメリカ下院でのF-22生産再開論争、F-22よりも先進的と云われていたF-35が予備エンジン開発凍結後のメインプランの混乱などを受け開発は遅延に遅延、その上でロシアと中国が第五世代戦闘機開発を進めている事から、急遽F-22を再生産するという下院での討議が現実味を帯びてきた形です。もともと、F-35はF-22とハイローミックスを構成する廉価版という位置づけでもありましたが、ここが冷戦後の防衛計画見直しにより頓挫しています。

 空軍は187機のF-22戦闘機を運用しています。AN/APG-77レーダーは250km先の敵戦闘機を発見する能力があり、ファーストルック&ファーストキル、という運用が基本となっています。F-22はステルス設計により0.025㎡程度のレーダー反射面積しか有しませんが、高精度のレーダーならば索敵は可能です、しかし、AN/ALR-94電子戦装置により戦闘機からの450km先からのレーダー照射を探知でき、逆にいち早い位置把握が可能というもの。即ち、ステルス性を活かして相手に発見されず攻撃優位位置から一方的に攻撃し相手が気付いた時にはミサイルが極超音速で命中する直前というこの航空機は超音速巡航能力を持っている。

 主として任務は敵国上空へ進入し、上空を防護する敵戦闘機を全て叩き落とす事で空域の絶対航空優勢を確保するというもので、従来の制空戦闘機よりも進んだ、航空支配戦闘機と称され配備されました。F-22戦闘機は冷戦時代、749機を調達し空軍のF-15C制空戦闘機を全て置き換える計画でしたが、4億1200万ドルという高い費用を要し、このため生産が縮小されることとなりました。空軍がF-16戦闘機の後継として開発を進めるF-35戦闘機の調達費用はは9800万ドルから1億1600万ドルとされ、このF-35も元々は2400万ドルから3500万ドルに収められる予定であったのが高騰しているのですが、そのF-35と比較しても群を抜く高価な航空機であることは変わりありません。

 F-22への急浮上ともいえる再評価はその現状でのポテンシャルにあります、特に、近年急速に東西冷戦時代以来の通常戦力同士の対峙を含めた対立関係が再構築されている中、即座に威力を見せ付ける装備として有望視されているものです。緊張関係、米国防総省によると、先日のイージス艦へのSu-24戦闘爆撃機異常接近事案に続きロシア軍のSu27が先月29日、バルト海上空の国際空域で米軍のRC135偵察機に異常接近し、同機の上方でバレルロールを行ったとのこと。

 電子偵察機RC-135へSu-27戦闘機が急接近、冷戦時代はありふれた光景で近年では中国のSu-27が南シナ海において実施している構図ですが、報道によればバルト海上空においてロシア軍のSu-27戦闘機が米軍のRC-135へ15mという近距離まで接近しバレルロールの機動飛行を実施、最も接近した事案では7.6mまでの超近距離まで接近したとの事です、この地域での緊張に対し、アメリカ政府は挑発行為を停止するようロシア政府へ繰り返し要請していますが、ウクライナ危機後緊迫化する米ロ対立を背景に沈静化の見通しは立ちません。

 F-22が展開するだけで大きな抑止力が発揮できる、それならばこのF-22をもっと増やそう、ということ。ウクライナ危機後、緊迫の度合いを増す欧米とロシアの対立、特にソ連軍に占領された過去を持つ東欧諸国は、全力で防衛力の近代化を進めていますが、その軍事圧力に対し充分な抑止力を確保するには至っていません。こうした中、F-22はアメリカの象徴的な先端装備としてその動向が大きく報じられている形です。アメリカ空軍はF-22戦闘機をルーマニアのミハイルコガルニチャヌ空港へ初展開、イギリスのレイクンヒース基地より長躯展開訓練を実施したという行動でした。

 ポテンシャルについて。F-22ルーマニア初展開、とはいっても数時間後には撤収する一時的な訓練でしたが、大使が到着したF-22戦闘機2機を出迎えるなど、F-22の持つ強力な能力、ステルス性と超音速巡航性能を以て展開する航空優勢支配能力が大きなポテンシャルを期待されている事が端的に視てとれます。また、朝鮮半島等へもF-22が展開した際、大々的に報道される事も記憶に新しいでしょう。ただし、F-22の現在の装備数が空軍の世界規模での運用へ制約を課しているとの視点、更に他の次世代航空機、F-35戦闘機開発の遅延、X-47Bの開発中止という実情等もその再生産討議へ大きな影響を与えている事も確実です。

北大路機関:はるな くらま
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2 コメント

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Unknown (国民の目)
2016-05-03 00:23:46
 今更再生産してもF-22はもう技術的に旧いとの批判があり、今から投資するならどうせならその先のF-Xだとの言説も目にしますが、説得力がないんですよねぇ。何でかと言うと、まずF-22はアップデートが行われていて決して旧くなってはいないこと、そしてF-Xに関しては、今のF-35があれだけ遅延していて、今思えばF-22だってそれなりに遅延していたのに、F-Xが遅延しないだろうなど、安直に考えて想像し辛いです。F-Xを遅延前提に考えれば、F-22歳生産はそれほど筋が悪いとは思えません。
 但し、F-35のFACOを誘致し部品の一部も生産する日本としては今更感が拭えませんし、もはや魅力的と言いかねるので日本は買わないでしょう。日本としては米F-Xの共同開発に参画するか、無理をしてF-3国産に走るか、いずれにせよF-22という選択肢はもはや過去のものと考えます。
F-35の先進技術とX-47Bの未来戦 (はるな)
2016-05-03 00:36:39
国民の目 様 こんばんは

F-35の先進技術とX-47Bの未来戦、共に技術的困難と予算節約の代償により転倒している状況ですので、F-22への期待というものは確かにあると考えられるのですよね

F-35による航空支配、ですが、陸海空統合戦域プラットフォームとしての能力に、統合光学装置EODASシステム等諸技術が傾注され過ぎていて、戦闘機としての部分が蔑ろにされている印象があるが、中ロを中心にF-35を空対空戦闘で対応する制空戦闘重視の航空機を開発しており、F-35はドンキホーテのように目標を見誤っている懸念がある

X-47Bを発展させ、F-35と連携する無人機編隊統合管制による将来戦闘という展望も、X-47Bが所要の技術成果を得た、としてその後MQ-47Bとして実用化される見通しが断たれてしまった事で、F-35の関与する空間支配の構成要素も躓いた印象が出てきた

そうした中で、純粋に空対空戦闘を重視しているF-22は、かのF-105の後で多機能性よりも空対空戦闘を重視したF-15の開発、というような、勿論開発順番は逆になりますが、そういった構図と同質のものがあります、故に議会ではF-22再評価、という視点が示されたのでしょう

もっとも、F-22生産ラインはF-35用に置き換わり、治具のみ倉庫保管というかたちですので、生産ライン再構築には工場社屋増設の必要、若しくはF-35生産ラインを調整しなければならず、ここが難点といえるところです

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