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安倍総理プーチン大統領,日ロ首脳山口東京会談開催 日ソ共同宣言以来の平和条約へ前進

2016-12-17 22:30:09 | 国際・政治
■日ロ首脳山口東京会談
 安倍総理とプーチン大統領との間で、ロシアのウクライナ介入後から延期されていました訪日と日ロ首脳山口東京会談が行われました。過去の不幸な歴史を乗り越え、両国関係は着実に前進してゆくことを確認したかたち。

 日ロ首脳会談、山口県長門市での一日目の会談に続き、二日目の東京での首脳会談が無事終了しました、領土問題の進展を求める声は元島民に加えて野党の間でも大きく、北方領土返せよという声を高らかに叫びたいことも確かですが、しかし、一回の首脳会談において実現するほど簡単なものではありません、こうした意味で重要な一歩といえましょう。

 ロシアはソ連時代に北方四島からもと日本国籍住民を強制排除していますので、現在の択捉島や国後島などの北方四島での日本への帰属運動は無く、アメリカが沖縄占領に際して住民排除を行わなかったため、日本復帰運動が沖縄返還へ繋がった事とは対照的です、その上で領土問題と元住民の問題と共に現島民の様々な要素を踏まえて考えねばなりません。

 北方領土問題を複雑化させているのは、北方領土の地政学的な要点と共にもう一つ、認識相違があります。日本側の視点としてポツダム宣言受諾宣言による戦闘停止命令後にソ連軍上陸が為された事を連合国側の了解を得ない領土拡張行為との非難があり、ロシア側としては大祖国戦争として降伏調印式前に実施した正統な戦果、との認識があるのでしょう。

 北方四島、返還されるに越したことはないですが、実情を考えますと、冷戦終結直後の機会に必要な措置を大車輪で進める、こともなく、平和姿勢だけを継続してきました、最も理想なのは北極圏スバルバル諸島のような自由往来権を元住民へ確保する枠組み、最も現実的懸念は交渉が長引き元住民が高齢化で足を運ぶことも出来なくなる、ということ。

 しかしながら1956年の日ソ共同宣言以降60年間停滞している平和条約交渉を棚上げする事と、平和条約交渉を経たうえで領土交渉を継続的永続的に展開する、実現性は低下しますが選択肢としてないでもありません、実際、領土問題棚上げの平和条約締結はイタリアイレデンタ問題に揺れる仏伊関係と共にNATO加盟やEC加盟を果たした事例等あります。

 日ロ共同経済活動、ロシアには日ロ関係を強化へ指向する視点としましてシベリア開発の進展と人口流失の阻止への具体策としての産業創出という必要性、ウクライナ内戦介入を経ての欧米経済制裁下での唯一といえる欧米諸国との経済連携の可能性が日本との共同経済活動の強化です、対ロ経済制裁下の進展はプーチン政権へ大きな成果となるでしょう。

 この構図から共同経済活動と平和条約締結を併せている実情があります、ロシア側にはここで遅延しますと、極東地域の空洞化に歯止めを止められない状況が続き、ロシア国内資本ではこれを払拭し開発する事が出来ません。他方、日ロ関係は平和条約が締結されていない状況ではありますが、冷戦時代ほどの懸念事項は無く、関係強化にリスクは少ない。

 一方忘れてはならないのはロシアの資源外交として、国家間関係悪化の際に即座に資源供給を停止し、後戻りができない規模の経済的衝撃を相手に合わせるという実例が、実際に欧州においてウクライナ介入を契機としての欧ロ対立の際にきられていますので、資源の依存度を高めれば日ロ関係が今後悪化した場合に危険、この問題点は忘れてはなりません。

 このようにロシアとの関係は一筋縄ではいかない事はありますが、プーチン大統領との本の関係は森内閣時代から着実な実績があり、また、現在の複雑な関係の一方で、冷戦時代や日ソ共同宣言時代の関係と比較すればかなりの部分、良好化したといえるでしょう。その上で時間はかかりますが、敢えて平和的手段に限る交渉は時間を要します、長期的視野で見てゆくべきでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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2 コメント

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Unknown (人民の目)
2016-12-18 23:03:13
ソ連が日ソ中立条約を破って違法に攻め込んできた、というのが日本人一般の理解のようですが、これは狭い理解と言わなければなりません。日本は『関東軍特殊演習』に代表されるように、度々ソ連を攻めんと謀略を図っていました。ソ連は善意の隣人では無かったかもしれませんが、それは日本も同じ事。そもそも両国の打算で辛うじて維持されていた日ソ中立条約に対し、裏切られた等と日本人が主張するのには違和感を感じます。
ナチスドイツがモスクワを落としていれば、日本こそが日ソ中立条約を破っていたでしょう。
こう考えれば、北方領土問題が生じた根本的原因は日本にこそあります。すなわち、ファシズム陣営に属し、アジア・太平洋・欧州諸国に対し日本が侵略しなければ北方領土問題は起きえなかった。こう解釈するべきです。北方領土問題は、戦後国際秩序という観点を抜きに解決方法を考えるのには無理があります。
主張よりもまずは本文を (はるな)
2016-12-25 22:56:57
人民の目 様

主張よりもまず本文を読みましょう、日ソ不可侵条約一方的破棄への批判は書いていませんよ?

停戦後に千島列島へ侵攻し、降伏文書調印後もソ連側が攻撃を継続した事を、問題視しています

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