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【くらま】日本DDH物語 《第十二回》S-2艦載哨戒機導入とF-X選定G.98J-11戦闘機内定

2017-05-13 20:24:24 | 先端軍事テクノロジー
■検証:対潜空母研究と航空機
 はるな建造以前にあったとされる対潜空母研究について、S-2艦載哨戒機導入という装備計画と共に、その具体性を再検証してみましょう。

 海上自衛隊がヘリコプター搭載護衛艦はるな建造以前に幾つかの航空母艦や洋上航空機運用拠点に関する研究を実施していた、この一例として対潜空母研究や海上自衛隊創設以前の護衛空母導入等の研究を提示しましたが、第二次防衛力整備計画における対潜空母研究は、あくまで研究であった一方、幾つかの施策が一つの大きな方向性を示していました。

 S-2艦上哨戒機を海上自衛隊が導入し、これは海上自衛隊の固定翼機運用能力を持つ母艦研究への布石であったのではないか、との視点を前回に示しました。対潜空母として基準排水量23000tの船体にヘリコプター18機と固定翼哨戒機6機を運用する将来艦研究が同時期に為されており、固定翼哨戒機6機とはS-2艦上対潜哨戒機を示すものに他なりません。

 このS-2艦上哨戒機と対潜空母研究は、エセックス級対潜空母プリンストン艦上で運用教育が実施された実情から、対潜空母導入の現実味を増す一要素となるのですが、実際には海上自衛隊はS-2艦上哨戒機を大型のP-2V対潜哨戒機が哨戒飛行を行う際に難点となる狭水道、紀伊水道や豊後水道に大隅海峡や津軽海峡の局地対潜哨戒任務へ投入されています。

 対潜空母構想と局地哨戒機、この二つの事例は別問題ですが、一方が空母艦載機であり、海上自衛隊創設以前からの対潜空母研究という実情が、仮に対潜空母導入が実現したのならばS-2艦上哨戒機が艦載機として採用されたであろうことも事実で、陸上型を開発せず艦載機をそのまま艦上哨戒機区分としてそのまま導入した点が、分かちがたく結びつける。

 しかし、海上自衛隊の空母建造計画が研究に留まらず、幾つかの布石、若しくは基盤構築を経ていたと前述しましたが、この基礎構築はS-2艦上哨戒機導入とエセックス級対潜空母プリンストン艦上研修以外にも幾つかの不思議な一致点があります。もう一つが航空自衛隊次期戦闘機選定へ空母艦載機が提示されていた点です。そして更にもう一点あります。

 G-98スーパータイガー、1950年代末に航空自衛隊次期戦闘機選定として一時は内定に至ったF-11タイガー戦闘機の改良型、海上自衛隊の空母建造計画と不思議な一致といえるのではないでしょうか。G.98J-11戦闘機、航空自衛隊初の主力戦闘機となったF-86後継戦闘機候補です。グラマン社がF9F艦上戦闘機の改良型との呼称で全体を新設計した航空機です。

 F9F艦上戦闘機、朝鮮戦争へ立ち向かう空母艦載機搭乗員の苦悩と奮闘を描いた映画“トコリの橋”にてその優美な機体と素晴らしい対地攻撃性能が余すところなく描かれつつ、後退翼を採用しないジェット戦闘機草創期の設計をよく見る事が出来、劇中は危険な対地攻撃として重要橋梁を攻撃する様子が描かれていましたが、F-11戦闘機は後継機に当たる。

 F-11タイガー戦闘機ライトはJ65-W-18エンジンを採用していましたが、推力が草創期のジェットエンジンの日進月歩の性能向上から早晩に見劣りするものとなります。そこでエンジンを強力なGE J79としたF11F-1Fスーパータイガー戦闘機が開発されています。GE J79はアメリカ製エンジンがジェットエンジン先進国イギリスに追いついた初の機種だ。

 G.98J-11戦闘機は、日本の航空自衛隊向けとしてF11F-1Fスーパータイガー戦闘機を更に改良したものです。同時期、再建まもないドイツ空軍や中立国スイス空軍、アメリカの隣国カナダ空軍がミラージュⅢ戦闘機やF-104戦闘機と共に有力機種の一つとして提示されています。有力候補となっていますが一時的とはいえ内定に至ったのは我が国だけでした。

北大路機関:はるな くらま
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