熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

英国のUE離脱でフランスが活性化するのか

2017年06月16日 | 政治・経済・社会
   昨日の日経朝刊で、FTのギデオン・ラックマンの、「逆風下の英国離脱 仏に好機」と言うタイトルの記事が掲載されていた。
   英国ではメイ首相は、指導力を大きく失ってEUからの離脱交渉に臨まなければならないが、フランスでは、マクロン大統領の新党「共和国前進」が圧倒的過半数を獲得し、この力を失ったメイ首相と力を得たマクロン大統領の対応如何が、英仏の運命を決することとなり、フランスにとっては、政治面でも、経済面でも、チャンスである。
   英国が離脱すれば、欧州統合を推進してきた仏独が、再び、統合深化に向けて牽引車としての役割を果たせる可能性が高まり、フランスは、シティの退潮による金融で、そして、英国からの製造業の移転等で、雇用増を図るまたとない機会を得る。と言うのである。
   これは、一般論であり、誰でも考え得る見解であって、目新しくはない。

   果たして、そんな単純なものであろうかと言うのが、先日来、このブログで展開しているエマニュエル・トッドの見解を通しての、私の感想である。


   先のトッドの著書からの引用だが、
   英国が抜けた後のEUは、ベルリンの支配下となり、米国もドイツをコントロールする力を決定的に失う。イギリスのEU離脱は、西側システムと言う概念の終焉を意味し、今でも、ドイツ的ヨーロッパ(ドイツ語のEUROPAオイロッパ)だが、益々ドイツによるヨーロッパ大陸の経済的掌握と言う暴力が強化され、「ヨーロッパ」は最早存在しなくなる。
   ドイツの移民政策も強引で、これはユーロ圏諸国の経済を破壊するドイツの緊縮政策の論理的帰結で、背景には、スペイン、イタリア、ポルトガル、ギリシャから、そして遠からずフランスからも、失業に追い込まれた若い熟練労働者を回収してドイツ経済のために活用しようと言う、ドイツのあまりにも強引な思惑がある。と言う。

   「中国が帝国か」と聞かれて、「ノー、帝国とは、経済的にも政治的にも、ヨーロッパ大陸のコントロール権を握る、ドイツの様な存在だ。」と言っている。
   21世紀型のドイツ帝国主義が、政治的にも経済的にも、ヨーロッパを支配し、グローバルに対峙する。と言うのであろう。

   トッドは、”「ドイツ帝国」が世界を破壊させる”で、
   ドイツの動向はともかくとして、フランスの凋落とその不甲斐なさに言及せざるを得なくなったのか、最早、フランスは、ドイツを制御するレベルではなくなって自主的隷属国に成り下がってしまった、ドイツが持つ組織力と経済的規律の途轍もない質の高さと、それにも劣らない途轍もない政治的非合理性のポテンシャルが潜んでいることを理解しなければならない。と説いている。
   先に紹介したように、
   イギリスとフランスの関係を語っており、フランスにとって、ドイツとの関係よりも、現実を動かすパワーと文化のロジックに適っている英仏の良好な関係構築こそが、国益となる。フランスにとって、イギリスは、ヨーロッパ諸国の内、全面的に信頼できる唯一の国であって、それ故に、軍事安全保障においても効果的に協力し合える唯一の国であり、これは、技術的上のことではなく、極めて強固な信頼関係を極めた事象である。
   フランスの為政者はこのことを、理解しなかったと慨嘆している。
   
   トッドの見解とは少し違うが、ケインズ派ではなくても、ドイツの緊縮、均衡財政一辺倒の経済政策を貫いて、EUをぐいぐい締め上げて、一強街道を走り続けるドイツの姿勢には疑問を感じているであろう。そして、イギリスが抜けてしまったEUは、民主主義からも遠ざかって行く。
   そうなってくると、フランスの生きる道、EUでの政治的経済的位置づけが変わって来ざるを得ない。
   したがって、ラックマンの言うように、「独と手を組み統合深化へ」などと言う安易な気持ちになれないのである。

   因みに、ドイツ、イギリス、フランスの経済規模だが、次の通りで、アメリカ、中国、日本に続いて、夫々、4位、5位、6位の経済大国である。
   ドイツ 2016年GDP:3兆4666億ドル ・人口:約8068万人・一人当たりGDP:4万1902ドル
   イギリス 2016年GDP:2兆6291億ドル ・人口:約6471万人・一人当たりGDP:4万0096ドル
   フランス 2016年GDP:2兆4632億ドル ・人口:約6439万人・一人当たりGDP:3万8128ドル

  これだけでは、フランスが、ドイツの経済的な従属国かどうかは分かり辛いが、このままの独仏の経済状況や経済活力や格差が続くならば、トッドの心配も杞憂ではなかろう。
   いわば、カウンターベイリング・パワーとして働いていた英国が抜けてしまったEUにおいては、フランスの役割が、統合深化へウエイトが増して行くとは思えない。
   ドイツに対して、相対的に弱体化して行くフランスが、ドイツに対等に渉り合える筈がなく、イタリアやスペイン、ポルトガルなどと言った同類のラテン・ヨーロッパさえ糾合して、EUのかじ取りに、パワーを発揮するとも思えないのである。
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