熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

国立劇場…一月歌舞伎:しらぬい譚

2017年01月25日 | 観劇・文楽・歌舞伎
   今月の国立劇場は、通し狂言「しらぬい譚」。

   国立劇場のHPによると、
   『白縫譚』は、江戸時代初期に起きた筑前国黒田家のお家騒動を、主要な題材にしたもので、実在の黒田家をモデルにした菊地家が、菊地家に滅ぼされた豊後国大友家の残党によってお家存亡の危機に陥り、その事態に、菊地家の執権・鳥山豊後之助が対峙していくという物語。  
   蜘蛛の妖術を利用して菊地家への復讐を図る大友家の遺児・若菜姫(菊之助)と、その巧みな謀略からお家を守ろうと苦心する鳥山豊後之助(菊五郎)、豊後之助の倅・鳥山秋作(松緑)、秋作の乳母秋篠(時蔵)を始め菊地家の忠臣たちとの対決がテーマで、その活躍を物語の主軸に据え、緊迫したドラマが展開される。
   菊地家の重宝「花形の鏡」をめぐる豊後之助・秋作父子と若菜姫との対決、自らを犠牲にして鳥山家に尽くす秋篠の忠義、豊後之助の繰り出す意外な智略、変幻自在の若菜姫の変身や“筋交い”の宙乗り、足利将軍家を守る秋作の大立廻りや屋体崩しで見せる化猫退治など、見どころ満載の歌舞伎。

   通し狂言を旨とする国立劇場が、昭和52年(1977)に河竹默阿弥が劇化した『志らぬひ譚』を通し狂言として76年ぶりに復活上演したのだが、今回は、尾上菊五郎監修のもと、原作の面白い趣向や設定を換骨奪胎して活かし、先行の劇化作品や講談などを参照しながら、新たに台本を作成した。と言う意欲的な舞台である。

   今回の舞台で面白いのは、菊之助の何役かの男女取り混ぜての変身と、すっぽん後ろの舞台から、三階席上手側へと、客席上方を斜交いに宙乗りで華麗に演じる舞い姿で、2回演じて、楽しませてくれる。
   菊之助の素晴らしさは勿論だが、座頭役者菊五郎の貫禄と風格の備わった素晴らしい役者魂!の発露あっての国立劇場劇場の初春歌舞伎でもあった。

   お家騒動とお家の重宝の奪い合いと言った歌舞伎の常套手段のストーリー展開だが、通し狂言であるから、初めて見ても、筋書きが良く分かって面白い。

   時蔵の乳母秋篠が、命をなげうち忠義を尽くすと言う筋書きなどは、摂州合邦辻の庵室の玉手御前の完全焼き直しであって、なさぬ恋に悶えて殺されて、その生き血を飲ませて、思い人の病気を治すと言うことになる。
   乳母秋篠が、育ての主人秋作に恋い焦がれて、秋作の許嫁照葉(梅枝)を突き飛ばしてしなだりかかて思いのたけをかき口説くと言う凄まじさ。  
   玉手御前の場合には、合邦が刺すのだが、このしらぬい譚では、息子に殺されるなど、多少違いはあるのだが、あまりにも有名なストーリーの二番煎じなので、やや、興ざめである。
   それは、ともかく、時蔵は実に上手く秋篠を演じていてさすがである。
   

   化猫退治のシーンでは、猫役役者たちの群舞で、歌川芳藤の異り絵「五拾三次之内猫之怪」を思わせる人形絵模様を舞台に展開していて、興味深かった。
   秋作の大立廻りなど、歌舞伎の別な見せ場の一つなのであろうが、京劇の影響であろう、派手なアクロバティックな技師たちの動きに対して、鷹揚な主役歌舞伎俳優の型を重視した動きとの、ちぐはぐなアンバランスが、面白い。
   何時観ても、松緑は、松緑と分かり過ぎるほど素人ぽい演技なのだが、あのキャラクターの役者は他に居ない程貴重な存在で、存在感抜群であり、今回も、素晴らしい忠臣ぶりを披露してくれた。

   50周年公演のお祝いとさらなる部隊の盛り上げに一役買おうと、ピコ太郎本人が国立劇場に来場して、「しらぬい譚」の四幕目第一場「錦天満宮鳥居前の場」に、「謎の参詣人」本人役で登場した。
   知らなかったので、舞台下手から登場して、例の派手な衣装と振りで、軽快にPPAP
ペンパイナッポーアッポーペン模様を演じて、舞台背後に消えたのには驚いた。
   この件は、国立劇場のメールで紹介された次の23日の写真は、ピコ太郎に扮して出演の片岡亀蔵が出たようだが、私の見た18日は、ピコ太郎本人だけの登場だろうと思ったのだが。
   

   ストーリーとしては、特別面白い芝居ではないのだが、正月気分を味わうのには、格好の舞台であろう。
   国立劇場の前庭の蝋梅、梅、ボケが咲き始めて、春の気配を醸し出している。
   
   
   
   
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