熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ジョン・C・ボーグル著「米国はどこで道を誤ったか」・・・投信など買うな

2008年08月10日 | 政治・経済・社会
   世界最大のミューチュアル・ファンド(アメリカのオープン型投資信託)バンガードを立ち上げ、20年以上もCEOを勤めたジョン・C・ボーグルが、
   「巨大な暴利巻上げマシーン(スピツァー司法長官)」とか「世界最大のピンはね事業(フィッツジェラルド上院議員)」と言われるミューチュアル・ファンドについて、あながち根も葉もない言いがかりとは言えないと認めて、徹底的にミューチュアル・ファンドの悪を糾弾してドラスチックな改革案を提言し、資本主義をオーナーの手に戻して再び理想的な資本主義社会を確立しようと提言する経世の書が、この「米国はどこで道を誤ったか」である。

   実際の原題は、「THE BATTLE FOR THE SOUL OF CAPITALISM」で、日本版副題の「資本主義の魂を取り戻すための戦い」であるが、
   クリントン政権下で永年米国証券取引委員会(SEC)委員長を務めて、公正で効率的な市場を目指して徹底的に戦い抜いたアーサー・レビットの「ウォール街の大罪 Take On The Street」と同じ様に、現在のアメリカ資本主義の病巣を抉り出して改革しようとの意欲に燃えた胸のすくような素晴らしい本である。

   私自身は、昔から、サルにダーツを投げさせて当たった株を買っても、プロの證券マンが買った株の利回りと殆ど変わらないと言われており、その収益から、法外なアドバイザー料と言うか手数料等を巻き上げられる投資信託など買うのは馬鹿だと思っているので買ったことがないのだが、ボーグルは、正に、この点を指摘しており、それも並大抵ではなく、常識の域をはるかに超えたミューチュアル・ファンド業界の悪の限りを開陳して糾弾しており、
   多少、ニュアンスが違うが、この上に金融工学の粋を駆使して展開されたサブプライム問題も、根源は同じで、現代資本主義の病根の深さに驚きを禁じ得ない。

   先日、日経が、サブプライム問題の影響で投資信託が暴落して収益率が大幅にダウンしていると報じていたが、「貯蓄から投資へ」と言う錦の御旗を掲げて、証券会社に負けじとばかり、この投資信託の販売に銀行もゆうちょも必死になって販売戦略を駆使して戦っていると言うのであるから、日本もまだまだ豊かな国なのである。
   この著者ボーグルもバフェット先生も、分散投資で投資信託を買うなら、ファンド・マネージャーに利益を比較的掠め取られないインデックス・ファンドに限るべきだと言っているのが面白い。
   尤も、これでも、この1年間、相当暴落しており、長期保有でないと意味がないようである。

   現在の資本主義が、株主の利益を守るべきはずの取締役が、番人としての怠慢によって、善管注意義務・忠実義務・監視義務を十分に果たし得ないのを筆頭に、同じく番人である公認会計士や規制当局、議会などの無能力化などが加速して企業のコーポレート・ガバナンスが地に落ち、好き勝手に企業を操縦して暴利を貪る悪徳CEOが君臨するマネージャー資本主義に道を譲ってしまった、これが、株式会社アメリカをおかしくした原因だが、
   全く、同じことがミュチュアル・ファンド・アメリカにも起こっており、オーナーの利益が、悪徳限りないファンド・マネージャーによって好き放題に蚕食されてしまっている、と言うのがボーグルの論点である。

   かっては、個人投資家の増加を通じて株式所有の分散化が起こったが、今日では、機関投資家の上位100社が、上場株式の52%を所有しており、一握りの強力な金融機関に集中している。
   しかし、実質的には、これらの株式の運用は、巨大なファンド帝国を築いて起業家として利益を荒稼ぎしようと目論んで虎視眈々のファンド・マネージャーに明渡されてしまっていて、ファンド企業は、全くこの暴走を統治出来ない。
   ファンド業界も、今や焦点は資金集めと販売に移行し、長期投資から直前の利益を追求する短期投資、頻繁な乗り換え投資、更に、投機へと変貌し始め、利益相反の加速と共に、マネージャー資本主義が、本来のオーナー(投資家)資本主義を凌駕してしまった。
   実質的に、上場企業の株式を過半数抑えている筈のファンドが、利益相反などの由々しき現実の元においては、サイレント・オーナーになってしまって、株主の利益の為、コーポレート・ガバナンスの為に声をあげることは皆無に近いと言う。

   ライシュの「暴走する資本主義」にも列挙されているが、民主化、近代化等改革の烽火を上げても、既得利権を享受する関係団体の徹底的なロビー活動によって議会が懐柔されてしまって、悉く、法案が葬りさられているいるのがアメリカの民主主義の現状のようで、恐ろしい限りである。
   ボーグルも改革案を提示しており、その未来について比較的楽観的だが、エンロン事件でSOX法が制定されたように、極端な不祥事が起こってインパクトを与えて国民の目を覚まさせない限り、多くを望めないような気がする。
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