熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

国立劇場・・・歌舞伎:菊之助の「一條大蔵譚」

2017年07月11日 | 観劇・文楽・歌舞伎
   7月の国立劇場の歌舞伎は、普及版の学生や社会人や親子のための歌舞伎鑑賞教室。
   今日も、朝昼2回の公演だが、中高校生の団体が押しかけていた。
   前半に、「解説 歌舞伎のみかた」があって、若手の花形役者(この日は亀蔵)が、舞台や演者たちの模様や公演の解説などを丁寧に説明するこのセッションが、初心者には非常に好評のようである。
   今回、面白かったのは、下手の黒御簾の枠と簾を取って内部の演奏模様を見せてくれたことであった。

   今回のプログラムは、「鬼一法眼三略巻」の4段目の「一條大蔵譚」。
   この「鬼一法眼三略巻」は、清盛がまだ健在で平家全盛の頃を舞台にして、源氏再興のために暗躍する人物たちの物語で、源氏の縁者吉岡鬼一、鬼次郎、鬼三太の3兄弟が主人公だと言うことだが、3段目の「菊畑」は、結構見る機会があるのだが、殆ど筋書きは、関係がないし、よく分からない。

   従って、この「一條大蔵譚」も、この舞台だけを見ておれば、作り阿呆の一條大蔵卿(菊之助)が主人公の物語の筈だが、
   この通し狂言から行けば、鬼次郎が本来の主人公であって、鬼次郎(彦三郎)が妻のお京(尾上右近)と図って、一條大蔵卿の妻になっている常磐御前(梅枝)の源氏再興への本心を確かめたくて、一條大蔵卿邸に侵入して、常盤御前に会って、遊興三昧を隠れ蓑にして清盛の絵像を弓で打ち据えて調伏していたことを知った上に、夫の一條大蔵卿が、平家の重臣ながらも隠れ源氏であって、源氏の重宝友切丸を渡して、清盛の首を討って源氏再興を祈る。と考えるのが本筋であろうか。

   私は、2005年の勘三郎襲名披露公演で、勘三郎の、その後、吉右衛門、菊五郎、仁左衛門、染五郎の大蔵卿の舞台を見ているが、吉右衛門の舞台が、一番多くて、染五郎も今回の菊之助も、吉右衛門の監修指導と言うことであるから、吉右衛門の一條大蔵卿像が定着している。

   この物語で、興味を持ったのは、巷の定説を引いて、清盛はダメだが、重盛が素晴らしいので、重盛が消えてから、源氏の旗揚げをしろと長成に言わしめていることであった。
   常盤御前にメロメロであった清盛も、重盛の助言によって常盤を諦めて、長成に下げ渡さざるを得なかったと言うのも面白い。
   義経の母であった常盤御前は、清盛との間に一女をもうけたと言う噂が残っているが、長成との間には嫡男・能成と女子一人をもうけており、常盤は、この義経の妹とともに、一時鎌倉方に囚われたと言う。
   
   ウィキペディアによると、義経が幼少時、奥州平泉の藤原秀衡に庇護されたのは、縁戚でもあった長成の支援によるものといわれており、
   長成と常盤の子である能成は、異父兄の義経が武人として頭角を顕すとこれに接近し、平家滅亡後、義経が異母兄の源頼朝と対立した後も、能成は義経と行動を共にし、文治元年(1185年)11月の都落ちの際には自らも武装しこれに随行したという。から、長成の義経へのサポートは、かなり、鮮明なのである。
   それは、それとして、長成が、この歌舞伎のように作り阿呆を貫いたと言う話は残っていないので、作者の手の込んだフィクションであろう。
   
   さて、吉右衛門を義父に持つ菊之助の、謂わば、意表を突いたキャスティングだが、非常に期待する向きが多かったのか、このシリーズにしては、結構、満席の日もあって、人気が高い舞台である。
   とにかく、美しい。
   絵本一條大蔵譚と言った感じで、どこを見ても、菊之助の一條大蔵卿は、絵本から飛び出したような絵姿で、義父吉右衛門の薫陶宜しきを得て、吉右衛門バージョンの一條大蔵卿を、綺麗になぞっている。
   よく分からないが、実父菊五郎からも、一條大蔵譚卿像の教示を受けたのであろうが、そうだとすれば、二人の偉大な先達人間国宝からの直伝であろうから凄いことである。

   世間を欺くために本心を偽って、20年(?)も作り阿呆を装い続けている尋常ならざる剛の者である一條大蔵卿を、どう見るかだが、こんなに若々しくて美しくて良いのかと言う戸惑いも隠せない。
   これも、大衆あっての歌舞伎で、このような清新なバージョンもあってよいのではないか、と言うのが印象であった。
   とにかく、いずれにしろ、また、菊之助の末恐ろしい芸の新境地を観たと言う思いであった。

   これまで観た「一條大蔵譚」と比べて、一気に、若手役者の舞台を見た感じであった。
   常盤御前の梅枝、鬼次郎の彦三郎、お京の尾上右近が、素晴らしい舞台を見せてくれた。



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