熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

團菊祭五月大歌舞伎・・・「昼の部」

2017年05月18日 | 観劇・文楽・歌舞伎
   今回、観たかったのは、まず、新皿屋舗月雨暈の「魚屋宗五郎」。
   新皿屋舗月雨暈と言った雰囲気の殆どない独立した世話物の舞台で、庶民の典型的な代表のような魚屋宗五郎の泣き笑いの生き様を、人間国宝の菊五郎が至芸を見せるのであるから、何回観ても感動する。
   それに、この舞台には、菊五郎の孫、すなわち、寺嶋しのぶの長男寺嶋眞秀が、酒屋丁稚与吉として初舞台を踏み、可愛くて器用な素晴らしい芸を見せてくれたのである。

   この舞台については、あまりにもポピュラーなのだが、
   ”屋敷勤めの妹が無実の罪を着せられて殺されたと知った宗五郎は、堪らずに禁酒の誓いを破って、酒乱と化して磯部屋敷に乗り込むと言う話である。
    普段は分別のある宗五郎だが、次第に酔って行き、恨み辛み憤りが朦朧とし始めて、磯部(松緑)憎しだけが昇華して、われを忘れて酒乱状態になって行く。
    召使おなぎ(梅枝)が持参してきた酒を、湯呑茶碗に注がれたのを口をつけて一気に飲み干し、飲むうちに湯呑茶碗では満足できずに片口から直接飲み始め、おはま(時蔵)や三吉(権十郎)の止めるのを振り切って、角樽を鷲掴みにして飲み干して酒乱に変身。目が座って、人が変わったように暴れ出して、おはまや三吉を蹴飛ばし突き飛ばし、壁をぶち破って、角樽を振り回しながら、磯部の屋敷へ突進して行く。
   酒乱と化した宗五郎は、磯部邸の門先で、散々に悪態を突き家老の浦戸(左團次)に悔しい胸の内をぶちまけて寝込んでしまう。
   目が覚めたのは屋敷の庭先、そこへ磯部主計之助が現れ、短慮からお蔦を殺めたことを深く詫び、弔意の金も与え、典蔵の悪事も暴かれ、めでたしめでたし。”

   去年、国立劇場で、芝翫の魚屋宗五郎と梅枝のおはまで観ており、幸四郎の魚屋宗五郎でも観ているのだが、菊五郎の舞台が一番多くて、今回同様に、時蔵のおはまと團蔵の父太兵衛と左團次の浦戸十左衛門が定番のように印象に残っている。
   玉三郎のおはまもそうだったが、格調高く風格のある芸で観せる時蔵が、「文七元結」や、この舞台で、菊五郎と魅せる庶民の女将の実に滋味深い味のある芝居は特筆ものである。

   短気で一寸問題のお殿様磯部公は、今回は、松緑であったが、染五郎であったり錦之助であったり梅玉であったり、颯爽とした二枚目が登場して、それぞれの風格を見せてくれた。
   この新皿屋舗月雨暈の舞台だが、この魚屋宗五郎の前の舞台などが上演されて、殺された妹のお蔦が登場してお家乗っ取り騒動の物語が展開されるなど面白いのだが、私は、この魚屋宗五郎の世話物の舞台だけで、完結していると思っている。

   今回は坂東彦三郎家の襲名披露公演であるので、昼の部では、「梶原平三誉石切」が、メイン舞台であろう。
   襲名した彦三郎の祖父十七世市村羽左衛門の殆ど晩年の舞台あたりから歌舞伎鑑賞を始めたので、襲名した楽善の渋い舞台を観続けてきた感じだが、
   今回の「梶原平三誉石切」は、彦三郎の梶原平三、父楽善の大庭三郎、弟亀蔵の猪俣五郎の親子二代が、重要な役を演じた正に襲名披露狂言に相応しい素晴らしい舞台であった。

   これまで、何度か、この「梶原平三誉石切」を観ているが、吉右衛門や幸四郎の梶原平三で、吉右衛門型だったようで、今回は、彦三郎は、当然、羽左衛門型で演じると言う。
   いい加減にしか観ていないのか、その違いは良く分からないのだが、これまでは、大御所の成熟した舞台を観ていたので、彦三郎の若さと活力の漲った清新な梶原平三像は、正にフレッシュで、強烈な印象を与えた。
   朗々と響き渡る綺麗な台詞回しやハツラツとした流れるような演技や流麗な見得の数々、多少ぎこちなさの残る芸ながら、感動的な舞台であり、父弟そして二人のおじのバックアップも素晴らしかった。

   今回、菊之助が颯爽とした奴菊平で、松緑がコミカルで愉快な剣菱呑助で登場して、華を添えていて面白い。
   それに、團蔵の父太兵衛と市川右近の梢が、良い味を出していて楽しませてくれた。

   義経千本桜の「吉野山」は、海老蔵の佐藤忠信と菊之助の静御前の観せて魅せる絵の様な美しい舞踊劇。
   それに、コミカルな男女蔵の逸見藤太が、華を添える。

   いずれにしろ、流石に團菊祭で、密度の濃い舞台であった。
   
   
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