熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

日本の中小企業継承:婿養子

2012年12月03日 | 中小企業と経営
   この口絵のイラストは、エコノミスト誌の、Adult adoption in Japan Keeping it in the family Family firms adopt an unusual approach to remain competitive の記事から借用したものである。
   養子縁組と言うのは、欧米では、赤ちゃんや子供の場合が大半なので、大人の男性を養子にして、中小企業を継承させると言う日本の婿養子制度が、不思議だと言うことであろう。

   関西の大店では、昔から、女の子が生まれると、むしろ喜んだと言う風習があったくらいだから、何も少子化になったからと言うことでもなく、日本では、ごく普通の伝統なり習わしだと言っても良さそうである。
   それに、最近では、女性社長も多くなって来たのだが、やはり、後継者は男性でなければと言う日本の男社会意識が残っていることも一因かも知れない。

   昔の商家の大店などでは、多くの奉公人の中から、これだと思う人物を選んで番頭などに引き上げて、娘と結婚させて、家業を継がせると言う風習があったのだが、優秀な後継者かどうか分からない息子に後を託すよりも、血筋は残るのであるから、確実な家業の継承方法であったと言うことであろう。
   この同じ方法が、現在の中小企業で、実現可能かどうかは分からないが、この記事では、中を取り持つ結婚斡旋業について書いているが、いずれにしろ、日本の中小企業では、婿養子をとることによって、会社を継承する場合が多いと言うことで、欧米では、珍しいと言うことである。

   その前に、企業経営における同族経営ダイナスティの問題だが、これには、良いか悪いか賛否両論があって定説はない。
   しかし、企業家を育成し新しいベンチャービジネスを開発するには、ファミリー企業の利点は十分にあり、経済成長著しい開発途上国にあっては、ファミリー企業の起業と活力に期待する側面が強いであろうし、世界企業の過半がファミリー企業であり、大企業においても「フォーチュン500」の3分の1は、ファミリーの経営か創業者の家族が経営に参加しているとデビッド・ランデスなども言っている。
   ドイツなどでも、優秀な同族企業が多数存在するし、華僑やユダヤ、あるいは、ラテン系の国など同族やアミーゴ意識の強いクローニー・キャピタリズムの国では、同族経営ダイナスティ経営が、極一般的である。

   いわば、日本の婿養子は、その同族企業の継承者を、どのように選ぶかの選択肢の問題であって、創業者なり社長なりは、自分の目に叶った婿を取って、血筋を残しながら、事業を継承できるのであるから、成功するかしないかは、後継者の問題であって、願ったり叶ったりの次善(?)の方法だと言うことであろう。
   岡野工業株式会社の岡野雅行社長が、眼を細めて娘婿のことを語っていたが、この婿養子制度は、日本の良き伝統だと思う。
   日本のマッチメーカー企業が、意欲に燃えた若い男性と後継者候補の欲しい中小企業経営者の娘とを娶せるべく、活躍していると言うことだが、見つからなければ、企業の将来も危ういと言う表現が興味深い。
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