熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

映画:マダム・フローレンス!夢見るふたり FLORENCE FOSTER JENKINS

2016年12月13日 | 映画
   映画:「マダム・フローレンス!夢見るふたり 監督:スティーヴン・フリアーズ」 を見た。
   1944年10月25日に、ニューヨークのカーネギーホールで、今もアーカイブで一番人気が高いと言うこの映画の主人公フローレンス・フォスター・ジェンキンスのリサイタルが開催された。
   この時、76歳、翌年亡くなる。
   このフローレンスは、絶世の音痴であったにも関わらず、カーネギーホール公演と言うのも驚きだが、チケットは2時間で完売し、ホールの外には入りきれない群衆たちが押し寄せたと言うことで、この信じられない様な実話を映画化したのだから、面白くない筈がない。
   それに、フローレンスを演じるのが、アカデミー賞が服を着たような メリル・ストリープで、本来歌が上手い筈の彼女が、「ド下手」に歌う歌唱法を徹底的にマスターしたと言う。
   ボイストレーニングで、上手く歌うことから始めて、そこからちょっとずつ、オンチになるように崩していったと言うのが、何故だか人の心の琴線を揺さぶるフローレンスの不思議な歌声を再現すべく努力したと言うのが凄い。
   メリルは、マリア・カラスが晩年に出すことに苦労していた、ハ長調の高音より上のヘ長調で歌うことができたと言っているのだが、
   しかし、正直なところは、メリルの歌う「魔笛」の夜の女王のアリアや、ラストのクレジットタイトルで流れていたフローレンスの歌声などは、それ程聞きたいとは思わない。

   親の遺産と富に恵まれニューヨークの社交界きってのマダム・フローレンスは、奇態稀なる音痴にも拘らず、その致命的な欠陥を自分だけ知らずに、ソプラノ歌手になる夢を追い続ける。
   フローレンスを愛する夫のシンクレア(ヒュー・グラント)は、妻に夢を見続けさせるために、実直でお人好しのピアニスト・コズメ(サイモン・ヘルバーグ)を伴奏者につけて、マスコミを買収し、信奉者だけを集めた小さなリサイタルを開催するなど献身的に立ち回るのだが、とうとう、何を間違ったのか、フローレンスは世界的権威の高い音楽の殿堂カーネギーホールでリサイタルを開くために劇場を押さえたと言う。
   止めるべく説得するが、結局、17歳の初婚で遊び人の夫に梅毒をうつされて厳しい持病を抱えながら、音楽を生きがいにして命がけの挑戦に挑んでいるフローレンスの夢をかなえるべく、シンクレアも一緒に夢をみることを決めて、奇跡のリサイタルが幕を開ける。
   シンクレアが買収に失敗したNYポストの記事を見てフローレンスは倒れ込むのだが、真実の愛を確かめ合った二人の夢のリサイタルで、あなただけに歌うと、フローレンスの美しい歌声が、流れる感動的なシーンで、映画は終わる。

   “ロマコメの帝王”と言われるダメ男俳優のヒュー・グラントは、ジュリア・ロバーツとの共演の『ノッティングヒルの恋人』しか見ていないが、監督やメリルに恐れをなしたと言うのだが、中々、好演していて、コミカルタッチ以上の人間臭さや風格を見せて面白い。
   伴奏ピアニストのサイモン・ヘルバーグは、プロ並みのピアノ奏者だと言うことで、サンサーンスの「白鳥」など、ストリープがうっとりとして聞いていたが、音が外れっぱなしのこの映画で、唯一の清涼剤であった。
   
  また、 蓮っ葉ながら正義感の強いキャサリンを演じたマリリン・モンロー張りのグラマー女優レベッカ・ファーガソン 、 シンクレアの愛人アグネス・スタークのニナ・アリアンダ など、魅力的な女優の貢献も見逃せない。

   私は、このブログのニューヨーク紀行でも書いたが、一度だけ、カーネギーホールに行って、アンドリュー・リットン指揮のニューヨーク・ポップス・オーケストラの”GREAT MOMENT FROM POGGY AND BESS AND JOYFUL OF SONG"と言うタイトルのオール・ガーシュイン・プログラムを聴く機会を得た。
   このカーネギーホールは、正に、一昔も二昔も前の骨董とも言うべき歴史遺産で、古き良き時代の雰囲気を醸し出す素晴らしいコンサートホールである。
   ニューヨークには、しばしば訪れたが、このホールで、絶えず凄い演奏会が開かれていると言う訳ではないので、METのオペラ優先で、行く機会が少なかった。
   それに、ウィーンフィルやトップアーチストのコンサートなどは、殆どのチケットがソールドアウトで、取得も難しい。
   しかし、東京にあるようなモダンなコンサートホールではない良さが、全館に漲っていて、前に行ったロシアのマリインスキーやボリショイ劇場の不便極まりない骨董的な劇場の、何とも言えない歴史の重みを実感させてくれる雰囲気が、堪らなく魅力なのである。

   そんな良き時代のムード濃厚のこの映画は、捨てがたい魅力があって素晴らしい。
   
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