空の洪水

春名トモコ 超短編、日記など

月管理人 (超短編)

2004年12月31日 | 超短編
   月管理人

 まあるい大きな月が、冬枯れの木に絡まっていた。
 ほろ酔いで気持ちよく歩いていたわたしは、すぐそばにある月を見上げる。巨大な裸電球のようにも見えるが、どうも違うらしい。
「ああ、やっと見つけた」
 大通りの方から制服の男の人が、長い棒を持って走ってきた。
「時間になっても昇らないから、捜していたんですよ」
 わたしの隣に並んで彼は言う。
「この間は川に落ちてたんだ。あの時は拾いあげるのが大変だったなあ」
 しみじみと言いながら、男の人は棒で何度も押し上げた。月はやわらかく光っている。濃厚なカスタードのようだ。五、六回目でようやく枝からはずれた。
 月はみるみるうちに空に昇り、いつものように夜空を照らした。仕事を終えた男の人は満足な顔をして去り、わたしは月夜の道をいい気分で帰った。
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