前田 朗「軍隊のない国家(23)――ナウル共和国」法と民主主義424号 から

2008-01-13 20:27:52 | 世界
前田 朗です。

1月13日

前田 朗「軍隊のない国家(23)――ナウル共和国」法と民主主義424号
(2007年)

目次

一 リン鉱石の島

二 憲法政治の構造

三 日本による占領

以下にさわりをご紹介。

* ************************************

  日本軍は、一九四二年八月二三日、ナウルに侵攻した。二隻の艦船と九機の
爆撃機による爆撃が行われ、翌日、オーストラリア側が降伏した。占領は八月二
六日である。日本軍兵士三〇〇人が上陸した。西欧人はすべて自宅拘禁となっ
た。八月二九日、南洋興発会社の七二人がナウルに到着し、リン鉱石採掘所の調
査を行った(4)。

 ナウルは戦略拠点とされ、さらに日本軍が集中した。一九四二年一二月には海
軍三〇〇人が加わって六〇〇人になり、日本人および朝鮮人労働者七〇〇人が送
り込まれた。三〇〇人のナウル人を労働させて飛行場滑走路建設も行われた。

 ナウル人の生活は劇的に変化した。オーストラリア統治下では想像もできない
厳しい強制労働につかねばならなかった。しかも、食料は一日あたり米二ポン
ド、牛肉十分の一ポンドしかなかった。日本人労働者も同じだったが、中国人労
働者にはもっと少ない食料しか与えられなかった。滑走路は一九四三年一月末に
完成し、日本軍機が飛来するようになった。二月二一日には連合軍による空襲で
戦闘機一五機が大破した。

 ナウル人は国内で強制労働させられただけではない。一九四三年六月三〇日、
日本軍はナウル人の強制移送のための選別を始めた。食料の豊富な島に避難する
という口実であった。ナウル人は、日本軍が土地所有者を移送することによって
土地を取り上げるのではないかと疑った。七月、ナウル人六〇〇人の移送が始ま
り、他方、六五九人の日本人がナウルに送り込まれた。八月一六日にも六〇一人
のナウル人がトラック島(現在のミクロネシア連邦のチューク島)に移送された。

 日本軍は結局、一二〇〇人のナウル人をはるか遠くのトラック島に運び、逆に
七〇〇人のバナバ人をナウルに送り込んだ。この強制移送は実に不可解なことで
あった。他方、占領期にナウルに送り込まれた日本軍兵士はのべ三〇〇〇人に及ぶ。

 ナウル人と入れ替えに送り込まれたバナバ人にとっても悲劇であった。バナバ
島はナウルの東にある六平方キロメートルの小さな島(現在はキリバス共和国
領)であり、ナウルと同様にリン鉱石の島である。かつては南洋の楽園であった
が、第二次大戦の悲劇や、ナウルやフィジーへの強制移住のため、民族が破壊さ
れた。かつては一万人であったのに、現在は二〇〇人がバナバ島に住んでいるに
すぎない(本連載次回キリバス参照)。

 日本占領期のナウルの人口構成については二つの統計が知られる。一九四三年
六月一日の調査によると、日本海軍一三八八人、南洋興発会社七二人、朝鮮人を
含む労働者一五〇〇人であり、以上の合計が二九六〇人である。西欧人二人、ナ
ウル人一八四八人、中国人一八四人、その他太平洋諸島人一九三人。総計五一八
七人である。

 一九四四年五月一二日の調査によると、日本海軍二八六七人、朝鮮人を含む労
働者一三一一人、ナウル人を含む太平洋諸島人一四六三人、中国人一七九人で、
総計五八二〇人である。

 強制移送に伴って、日本軍はナウルの家屋、学校、教会を破壊した。ナウル人
は飢餓ぎりぎりの状態に置かれ、伝統的な生活様式そのものが破壊された。ナウ
ル人の三分の二が強制移送され、トラック島で農作業を強制された。戦後、帰還
できたのは七三七人だという。約五〇〇人が死亡したと推定される。このため戦
後のナウル社会には世代間のギャップが生じ、通常の家族生活が成立しない有様
だった。社会の存続にとって最低限の一五〇〇人しか生存できなかったのだ。

 日本人はナウル人を通訳として利用したが、ナウル人が熟達した通訳や教師に
なるような教育は受けさせなかった。日本が提供した教育は最低のものでしかな
かった。オーストラリア統治期には、ナウルの学校教師はすべてナウル人であっ
たし、教員として訓練を受けるためにオーストラリアに留学した者もいたのと
は、対照的である。

 戦争末期、一九四四年には、ミクロネシアにおける日本軍守備隊は住民をさら
に虐待するようになった。ポナペ、トラック、ロタでも虐待が行われ、オーシャ
ン諸島とナウルでも虐殺があったといわれる。
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