社員の言論活動に対して、解雇を突きつけた、岩波書店/デジタル鹿砦社通信

2012-02-26 00:43:11 | 社会
鹿砦社・松岡です。
本日も「デジタル鹿砦社通信」の記事を紹介させていただきます。
尚、23日、24日にアップされた、月刊『創』に掲載の東電広告についての記事は大きな反響を呼びました。怒りに燃えたスタッフは更に取材・調査を継続しているようですが、少々のことでは驚かない私も、今回発覚した事実には、さすがに怒りを通り越して呆れるばかりです。

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『告発の行方2』【ブックレビュー】
2012年2月26日 カテゴリー 社会問題一般
http://www.rokusaisha.com/blog.php

社員の言論活動に対して、解雇を突きつけた、岩波書店。
「反差別の砦」を標榜しながら、組合員をイジメ抜いて組合消滅に追い込んだ、明石書店。
「押し紙」拒否の販売店主を、訴訟で窮地に追い込んだ、読売新聞。
共に闘った京品ホテル元従業員と対立することになった、東京ユニオン。
同僚教授にセクハラ疑惑をでっち上げた、同志社大学教授。
『告発の行方2』(鹿砦社)で追求されている事例は、どれも興味深い。
人権、反差別、反貧困、リベラルを旗印にする者たちの所行が、『告発の行方2』では揃って告発されている。

岩波書店は老舗出版社であり、月刊誌『世界』は左派論壇のオピニオンリーダーの役割を時代を超えて果たしてきた、と言えるだろう。
告発の主となっているのは、『世界』の編集者であった、金光翔(キム・ガンサン)氏だ。
金氏は2007年、「〈佐藤優現象〉批判」という長大な論文を『インパクション』に発表した。これに対して会社は、「一冊でも岩波から本を出したことがある人物への批判は慎め」と厳重注意を行ったのだ。
リベラルとされる出版社で、社員の言論の自由が認められていない、というのは驚きだ。

昨年、金氏は会社から解雇するという通告を受けた。その理由はなんと、岩波書店労働組合から除名されたことである。
この摩訶不思議な出来事の内実は、本書を参照していただきたい。

「出版活動こそ、反差別の思想と文化を創りだす運動の砦でなければならない」を理念とするのが、明石書店。2008年から3年間、労働争議が続き注目された。
社長自らが先頭で牙を剥いて労働組合に敵対した争議の内容も、本書では詳しく語られている。
労働組合は4つの裁判に勝利し、会社と勝利的和解をしたとされる。だがその後も会社は組合敵視を続けていた。編集者であった組合員にネズミが走る地下倉庫での印刷チェックをさせるなど、組合員であるがゆえのイジメ、不当労働行為を続け、退社に追い込み組合を消滅させたのだ。

もはや公然の秘密となっている、新聞業界の「押し紙」。たとえば、1000部しか配達していない販売店に、1500部を搬入する。この場合、500部が押し紙であり、配達されずに捨てられる。「押し紙」の分も、新聞社は卸代金を徴収する。これによって新聞社は、販売収入を増やすと共に公称部数をかさ上げして、誌面広告の媒体価値を高めるのだ。
2008年、「押し紙」を拒否した販売店主に対して、読売新聞は改廃を通告した。
販売店主は、地位保全を求める仮処分を裁判所に申し立てたが、読売側は様々な訴訟を繰り出した。
読売ジャイアンツを巡る騒動で、「法廷なら我が方の最も得意とするところだ。俺は法廷闘争で負けたことがない」と渡邉恒雄会長は豪語した。
販売店主もまた、法廷で窮地に立たされることになる。昨年彼は、失意の中で病死してしまった。
「押し紙」問題を追ってきた、この章の著者である黒藪哲哉氏にも、読売は訴訟をしかけている。
真実を社会に伝える新聞社がこんなことをしているのか、と驚くような数々の事例が明らかにされている。

収益を上げているにも関わらず、ハゲタカファンドに操られた経営者によって、廃業に追い込まれた、京品ホテル。廃業が宣言された後も、従業員が自主営業を行った。常連客や賛同者で賑わうレストランや居酒屋の様子は、ハゲタカファンドとの闘いとして、テレビでも放送され耳目を集めた。
闘争を指導したのが、個人で加盟できる組合、東京ユニオンであった。東京ユニオンもハゲタカだった? とネットなどで黒い噂が流れたがのが、昨年の夏頃だった。
2010年1月、東京地裁において、管財人から1億2500万円を引き出す形で和解が成立し、闘争は勝利した。ところがそのうちの7500万円を東京ユニオンが持って行ってしまい、京品ホテルの元従業員たちには5000万円しか渡らなかったというのだ。
東京ユニオン側は、職場再建のための資金だというが、元従業員たちは納得せず対立が続いている。

一貫して報道被害の問題に取り組んできた同志社大学の浅野健一教授が、学内でセクハラを行ったとする記事が載ったのは『週刊文春』2005年11月24日号だった。
浅野教授は文春を相手取り最高裁まで争い、2010年3月勝訴している。セクハラはなかったことが、法廷で立証されたのだ。
セクハラをねつ造したのは、同志社大学の同僚である渡辺武達教授であった。
驚くべきことに、最高裁判決が確定した後、現在も浅野教授は大学内でセクハラの被疑者の扱いを受けている。一方でセクハラをねつ造した渡辺教授には、大学はなんの対応もしていない。
真実を知ることを学ぶのが、大学の役割ではなかったのか。

大マスコミではほとんど報じられない事例、一時は報じられながらも顧みられなくなった事例が、本書では取り上げられている。だが、その一つ一つが、今の社会はどうなっているのかをえぐりだす、小さくも鋭い刃になっている。



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