洞爺湖サミット 問題は「テロ対策」ではない・・桂 敬一/JCJふらっしゅ

2008-03-03 20:17:55 | ジャーナリズム
◇◇ 洞爺湖サミット 問題は「テロ対策」ではない ◇◇
     メディアは世界の市民の生命・安全を守る取り組みを語れ

                   桂 敬一(日本ジャーナリスト会議会員)

 昨年から今年にかけて、在日米軍再編・日米軍事一体化の動きが急だ。
 新テロ特措法によるインド洋への海自再派遣、自衛隊海外派遣恒久法制定の動き、
ミサイル防衛PAC3の新宿御苑での実験・都内配備の展開・ハワイ洋上における米
軍との共同試射、沖縄・普天間基地の名護市移転計画促進、岩国基地の米軍艦載機移
転受け入れを拒否する井原前市長に対する市長選での追い落とし(新市庁舎建設政府
補助金の打ち切りなど)、相変わらずの拉致問題にこだわった北朝鮮制裁政策の続行
・強化など、指摘できる動きは枚挙するにいとまがない。みんなテロ対策が口実だ。

 だが、一方で、そうした軍事化政策が、沖縄・米兵暴行事件、イージス艦の漁船衝
突事件を不可避的に起こしており、その強行が、住民の生命・安全を守るどころか、
それを踏みにじり、住民に対する不安と危険を増すばかりである矛盾も、いま露呈し
つつある。

 このような状況のなかで洞爺湖サミットが開かれようとしている。気になるのは、
ここでも政府が訪日各国首脳の警備対策を「テロ対策」として印象づけ、それをメデ
ィアが無批判に伝える傾向をみせだしている点だ。

 イラン・アフガン戦争を始めたブッシュ大統領が無責任にも辞めようとしている。
アメリカ発の先例なき「サブプライム恐慌」の暗雲が世界の上に覆い被さっている。
世界のいろいろな国から多数の市民がサミットにあわせて日本を訪ね、サミット開催
地はもとより、日本各地でお互いに交流、サミットが中途半端な問題との取り組みし
かみせないなら、それに対して厳しい批判を加えるだろう。

 メディアは首脳外交だけに焦点をあわせるのでなく、これら日本の市民と各国市民
の声も重視し、伝えていかねばならない。

…   …   …   …   …   …   …   …   …   … 
(北海道新聞コラム・桂敬一「ニュースへの視点」 2月23日夕刊掲載)

 ■試されるサミット報道■

 「洞爺湖サミット 航空テロ撃墜検討 政府 警告に従わぬ場合」。今年一月二十
四日の読売新聞(東京)朝刊一面のトップ見出しだ。その活字の大きさもさることな
がら、ハイジャック機に向かって千歳基地の自衛隊機、F15が緊急発進という、激
越な内容の記事に、大きな衝撃を受けた。

 同紙の札幌板は基本的に東京の紙面と同じはずだから、本紙=北海道新聞の読者の
なかにもこれを読まれ、テロの危険がいよいよ身近に迫ったかと、驚いた方がおられ
るのではないか。

 ◇「テロ」に過剰反応

 だが、なにかヘンだ。これが本当なら、ほかの新聞も競ってこのニュースを追いか
けるはずだ。北海道洞爺湖サミットの開催地をカバーする本紙は、それこそ大々的に
続報を展開しなければならない。しかし、そんな気配は生じなかった。

 ようやく今月十八日、朝日が、同じ一面ながらやや小さい、「サミット周辺 飛行
禁止 緊急時は首脳待避」という見出しの記事で、「ハイジャック機の撃墜は乗客や
付近住民の犠牲を前提とするだけに・・・『実現可能性はゼロ』(日本政府関係者)」
と、読売の報道とは逆の内容のニュースを報じた。

 それでもまだ腑に落ちない。
 メディアは、「洞爺湖サミット」といった途端、なんで真っ先に、各国首脳を狙う
テロが日本めがけて襲来するという想定や、それへのおどろおどろしい対策を、大仰
に騒ぐのか。

 アメリカのサブプライム・ローン問題に端を発する世界恐慌の防止、行き詰まった
イラク・アフガン戦争の終結、パレスチナ紛争の根本解決、北朝鮮・イラン問題の平
和的解決、猶予ならぬ地球温暖化対策など、サミットに集う各国首脳が急いで取り組
まねばならない問題が、山積している。

 日本がその解決の場でリーダーシップを発揮する意欲を誠実に示すなら、「テロ組
織」も、主催国の国民をわざわざ敵に回す、逆効果となるような行動に出るわけがな
いではないか。日本のメディアがまずやるべきは、国際社会がいま洞爺湖サミットに
解決を期待する問題を大きく取り上げ、関係国政府の尻をたたくとともに、世界の市
民全体に訴えていくことであるはずだ。

 ◇国際的見識を示せ

 アフガン・イラク戦争につながるアメリカの「9・11」事件の発生直前、二〇〇
一年七月、イタリア・ジェノバで開かれたサミットは、アメリカのグローバリズム主
導と世界一極軍事支配に反対する、多くの国からの非政府組織(NGO)など二十五
万人の市民による大デモの“歓迎”にさらされた。

 ベルルスコーニ政府の過剰警備から参加市民一人が死ぬ犠牲が出た。それから七年、
国際情勢は新しい矛盾のなかで緊迫の度合いを高めており、そうしたデモが洞爺湖周
辺はともかく、札幌で発生する可能性は十分考えられる。

 サミットのあり方に異議を唱える市民の入国や集結、行動を嫌悪する日本の政府と
メディアが、これら市民の動向をわざと危険なものにみせ、万一ことが起こった場合
は、自国民が彼らに敵意を抱くよう予断を与えるために、いまからテロ騒ぎをあおり
立てているのだとしたら、あまりにも乱暴だ。世界の市民・メディアからの批判を浴
びるだろう。

 洞爺湖サミットは、これをどう報じ、論ずるかによって、日本のメディアの国際的
見識が試される問題ともなっている。その辺りのお手並みを、まずは事前の報道・論
評から拝見していきたい。

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