中国、政府批判したら強制入院 路上で不意に殴られ…/朝日新聞

2011-07-19 10:17:20 | 世界
政府を批判するなどした人がある日、突然、精神病と診断されて強制入院させられ、家族との面会も許されない――。中国で、こうした問題が相次ぎ表面化した。「反政府的な人を黙らせるもうひとつの手段だ」(北京の人権派弁護士)などと批判が高まっている。

■陳情4年、異常扱い

 路上で背後から、不意に硬い物で殴られた。上海市の工員だった周銘徳さん(53)は、意識を失った。

 2008年4月の暑い日のことだった。気づいたのは救急車の中。両腕が縛られている。送られたのは、ドアに鉄柵がある精神科の病棟だった。

 入院患者が着る、青色のしまの服を渡され、薬を飲むように求められた。強制的に入院させられたことが分かった。

 周さんは05年ごろから植物状態になった母親に対する治療で、地元医療機関に過誤があったと訴えていた。地元政府には相手にされず、70回以上も北京に足を運んだ。このときも衛生省に陳情に行ったが、当局者に連行され、上海に送り返されたところだった。

 「私は正常だ」。周さんは退院を求めて、医師に手紙を書き続けた。親族も退院を求めたが、聞き入れられなかった。薬はのみ込んだことを看護師に見せた後、トイレで吐いた。

 「なぜこんな残酷なことをするのか」。涙があふれてきた。「院外治療」が認められたのは66日後だった。

 退院後、裁判所に訴えたが、却下された。「政府に苦情を言えば、病気なのか。陳情は法律でも認められている。これ以上、わたしのような人をつくりたくないから訴え続ける」と周さんは悔しそうに話す。

 病院側は取材に応じない。ただ、裁判所に提出された診断書のコピーには入院理由について「偏執状態」としたうえで、こう書かれている。

 「4年間、陳情を繰り返す行為は異常である」

 同様のケースは、各地で相次ぐ。今年4月には、湖北省武漢市の国有企業の職員だった徐武さん(43)が精神科病院から脱走。別の病院による「精神疾患ではない」との診断を手に、地元メディアに訴えた。

 徐さんは腐敗問題の告発を繰り返していた06年、強制入院させられ、両親の面会も認められていなかった。地元当局は6月上旬になり「確かに精神疾患」との調査結果を発表しつつ、徐さんの退院を許可した。

■法律なく医師拒めず

 背景には、中国に精神病患者の強制入院に関する法律がなく、地方によって規定がバラバラという問題がある。例えば、上海市の場合、医療機関は患者に病態の認識がなければ、強制入院させることができる。つまり、「私には問題はない」と言えば、強制入院の対象になってしまう。

 警察当局が、都合の悪い人物を「病気」だとして医療機関に送り込んできた場合、これを医師側が拒むのは難しいとの現実もある。このため、「患者」の人権問題に取り組む広東省深セン(センは土へんに川)市の黄雪濤弁護士は「収容された人が異議を申し立てるメカニズムが必要だ」と訴える。

 相次ぐ事件を受け、衛生省は6月中旬、精神衛生法の立法に向け、草案を公表した。草案には、強制入院させられた場合の提訴や告発の権利が盛り込まれた。ただ、「公権力への監督無しで、責任を問うことができると考えるのは幻想だ」(第一財経日報)との冷めた見方は少なくない。(北京=古谷浩一)

      


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