田中宇の国際ニュース解説 米大統領選の焦点はテロ戦争の継続可否

2008-02-12 19:28:13 | アメリカ
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★米大統領選の焦点はテロ戦争の継続可否
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 アメリカ大統領選挙は、二大政党の予備選挙が進み、共和党はジョン・マケ
インへの一本化が進み、民主党はバラク・オバマとヒラリー・クリントンの接
戦が続いている。次期大統領はマケイン、クリントン、オバマのいずれかにな
る可能性が大きい。

 民主党では、全般的に見て、オバマが草の根の支持、クリントンがエスタブ
リッシュメント(政財界)の支持を集めてきた。2人は、政策内容にはそれほ
どの違いがないが、オバマは黒人が集まるアメリカ南部のキリスト教会の礼拝
での説教師の手法を会得し、聴衆に希望を持たせる前向きなキーワードのリズ
ミカルな繰り返しによって、演説を聞いた人々を感動に引き込み、支持を広げ
ている。オバマに比べてクリントンは演説が下手だが、夫のビル・クリントン
前大統領の政権に関与して以来の国家政策立案の経験を宣伝し、オバマを空想
屋だと批判して対抗している。
 共和党にも、ロン・ポール(テキサス州下院議員)という草の根の候補がい
る。ポールは昨年末、1日で600万ドルの献金を集め、アメリカにおける
1日の政治献金集めの記録を塗り替えた。この時の献金の大半は一人あたり
100ドル以下で、財界人がぽんと大金を出したのではなく、無数の一般市民
が少額の献金を出し、それが全体として600万ドルになる草の根の巨額集金
だった。
 ポールは絶大な人気なのに、マスコミにはほとんど無視され、テレビ討論会
でも出演を拒否されたことが多い。それは、彼が「連邦政府は最小限の規模と
予算にすべき」「対外不干渉主義」(いわゆる孤立主義)などを掲げる「リバ
タリアン」(自由論者)だからである。ポールは、連邦政府は米国民の世論を
無視して無意味な戦争を拡大していると批判し、連銀(FRB)は第一次大戦
前の設立時から今に至るまで戦費調達のためにドル札を過剰に刷ってインフレ
を起こす機関だと指摘して、連銀不要論を説いている。
 ポールの主張はまっとうなものだ。米連邦政府は1910年代から、ニュー
ヨークの資本家とイギリスに乗っ取られ、一般の米国民の意志と関係なくアメ
リカを動かし、戦争を繰り返している。米マスコミも好戦的なプロパガンダ発
生装置として、この連邦の戦争機関の一部であるため、ポールの存在をほとん
ど無視している。しかし、今のような戦争泥沼化の時期には、米国民の中には
連邦政府の本当の姿に気づき、ポールを支持する人が増えている。

「銃規制反対」なども掲げるリバタリアンは、地方分権、個人意思尊重の「古
き良きアメリカ」の復活を求める人々であり、共和党内でもともと強かった勢
力である。アメリカは今後、経済破綻とドル失墜、戦争の大失敗を経て、単独
覇権の呪縛から解放され、最終的にはリバタリアン的な、いわゆる孤立主義の
国(もしくは西半球の国)に戻り、そこから次のアメリカの発展が始まるので
はないかと私は思っている。この件は今回の記事の本題ではないので、このぐ
らいにしておく。

▼マケインは隠れ多極主義

 マケイン、クリントン、オバマという3人の最有力候補の政策を大雑把に比
べると、マケインはブッシュの政策を維持する方針だ。マケインが大統領にな
ったら、減税による収入減と、中東での戦争続行と米軍拡大による支出増によ
って、米財政は破綻し、インフレとドルの信用不安が悪化する。アメリカは世
界から嫌われる傾向を強め、経済・軍事・外交の3面で覇権を減退させる。米
はもはやイラクで勝てないのに「勝つまで戦う」と言っているマケインは、ブ
ッシュと同様の自滅的な「隠れ多極主義」である。

 マケインは「フォーリン・アフェアーズ」の論文で「(パレスチナの)ハマ
スは必ず孤立化させねばならない」と言っているが、これは中東を席巻しつつ
あるイスラム主義勢力がイスラエルを潰すことを誘発するということだ。
「G8からロシアを脱退させ、ブラジルとインドを入れるべきだ」とも言って
いるが、そうなるとますますG8の影響力は低下し、反動として中露は結束し、
ブラジルもインドもアメリカの味方になるのを躊躇する。マケインは、南米ベ
ネズエラの反米的なチャベス大統領を敵視しているが、これも中南米の人々の
反米感情を煽り、チャベスの人気を高める。ブッシュの戦略を引き継ぎ、世界
中で敵を強化するマケインの戦略は、アメリカの力を意図的に浪費する。
 マケインは同論文で「国際社会での日本の台頭を歓迎する」とも言っている。
日本について多くを語っているのは、3人の主要候補者の中でマケインだけで
ある。マケインの日本支持は、日本に中国包囲網の主役の一つに仕立てようと
する方向性のもので、安倍政権が掲げていた中露包囲網戦略「自由と安定の弧」
を賞賛し、拉致問題と北のミサイル開発を北朝鮮核問題の6者協議の議題に加
えるべきだと書いている。

 マケインは日本が好戦的になることを求めている。日本人は、これを日米同
盟強化と米中関係悪化という冷戦体制の復活で、今後も対米従属を続けられる
と歓迎するかもしれないが、それは間違いである。アメリカが日本の外交軍事
力を拡大させようと誘導するのは、中期的には日本が単独で中国と張り合える
ようにするためだが、長期的には単独で張り合うようになった日本が中国と一
定の協調関係を独自に結び、日本がアメリカ抜きで東アジアの中でやっていけ
るようにする「乳離れ戦略」であり、世界多極化の一環である。
 現在のマケインは、過剰に好戦的な自滅型のネオコンだが、以前のマケイン
は正反対だった。1983年のレーガンのレバノン侵攻に対して「ゲリラ戦の
泥沼にはまるのでやめるべきだ」と批判し、1991年の湾岸戦争では「米地
上軍をイラクに入れるのは自滅だ」と、空爆のみにとどめることを主張すると
いう、慎重な戦争を求める「現実派」として有名になった。マケインが「地上
軍を派兵すれば何でも解決できる」という自滅型好戦派に変質したのは、
99年のコソボ戦争からだったと指摘されている。

 この変節は、ブッシュ家やクリントン家と同期している。ブッシュ家は、
90年代初期のパパブッシュ大統領の時代には慎重な現実派だったが、98年
にネオコンがPNACを結成してイラクへの地上軍侵攻を主張した後、息子の
ブッシュはこれに乗って当選し、約束どおりイラクに侵攻して泥沼にはまった。
93年から2000年までのクリントン前大統領も、最初は現実派だったが、
97年ごろから「ならず者国家」非難戦略など、現ブッシュ政権の「悪の枢軸」
に近い好戦的な戦略を掲げ「ネオリベラル」化した。

 マケインとブッシュ家とクリントンが、現実策から過激策に転換したのは、
イスラエル右派が米政界での力を拡大した時期と一致している。米大統領選挙
の主力候補たちが、こぞって親イスラエルぶりを競うようになったのは、ブッ
シュがゴアを破った2000年の選挙あたりからである。それまでの米政界で
は、パレスチナ問題に対し、表面上だけでも「公正な立場」を表明するのが正
しいあり方だったが、1998年ごろを境に「イスラエル支持」「アラブのテ
ロを許さない」と表明しない政治家は弱体化させられる傾向が強まった。今回
の3人の主力大統領候補は皆、政策論文の中で明確に「イスラエル支持」と
「テロ戦争推進」を明記している。

▼クリントンは覇権再建を目指す

 3人の主要候補は、いずれもイスラエル支持を表明しているものの、実際に
はおそらく3人とも、米外交がイスラエルに牛耳られる状態を脱する隠れた戦
略を持っている。マケインは、過激にイスラエル支持をやりすぎることで、イ
スラエルに不利な状況を作るブッシュ政権の「隠れ多極主義」を継承している。
前述のロン・ポールを例外として、ジュリアーニやハカビーなど、他の共和党
(元)候補たちも同様の戦略である。

 共和党は、アメリカを単独覇権国の地位から落とそうとしているが、民主党
は逆に、アメリカの覇権を立て直そうとしている。ヒラリー・クリントンは、
フォーリン・アフェアーズ誌に書いた論文で、米軍をイラクから早期に撤退し
て軍事力を温存する一方、中国やロシアとの敵対関係を解消し、中国を国際社
会(G8?)に取り込み、ロシアが民主化したらアメリカの同盟国にしてやる
という誘導を行う政策を打ち出している。
 クリントンは同時に、イラクの安定のためにイランやシリアとも協力し、中
東を安定させてパレスチナ和平を推進すると書いている。これは、パレスチナ
和平によってイスラエルの力を縮小均衡させ、米政界がイスラエルに牛耳られ
た状態を解消しようとする戦略で、米民主党は1970年代のカーター政権以
来、この戦略を続けてきた。

 ヒラリーの外交戦略は、全体的に夫のビル・クリントン前大統領の戦略を継
承している。中東和平、イランやイラク、北朝鮮の問題、中国との関係、国連
改革など、クリントンが完成できなかった課題の多くは、その後ブッシュの8
年間で無茶苦茶にされた。クリントンが黒字化した米財政も、ブッシュの8年
間で史上最悪の赤字に陥っている。それらを立て直し、G8や国連などの国際
機関をアメリカ(米英)中心に戻し、米英中心主義を再強化するのがヒラリー
・クリントンの戦略である。

▼テロ戦争の続行をめぐる米中枢の暗闘

 クリントンは、イラク撤退を主張する一方で、テロ戦争は続行すると表明し
ている。テロ戦争は「911事件のようなテロが二度と起きないよう、イスラ
ム社会の民主化やテロ組織退治を世界的・長期的に進める」という世界戦略で
ある。だが、そもそも911事件は米政府の自作自演的な色彩が強く、911
の犯人とされるテロ組織「アルカイダ」も実体が非常に曖昧で、おそらく米英
イスラエルの諜報機関に操られた存在である。
「テロ戦争」は、自作自演的な911事件をきっかけに、自作自演型のテロ組
織アルカイダとの何十年もにわたる長期の世界的な低強度戦争を展開する、自
作自演型の「第2冷戦」である。テロ戦争を何年も続けるうちに、最初は自作
自演的だったテロ組織は、しだいにイスラム世界の一部の人々の支持を集める
ようになり、自作自演のテロ戦争は本物のテロ戦争になり、何十年も続けられ
るようになる。

 この「第2冷戦」は、米ソ間の「冷戦」と同様、米英が敵を挑発扇動するこ
とで、米英による「火力調整」が可能であり、だからこそ長続きさせられる。
テロ戦争の世界体制を作ることで、米英は「テロ対策」の名目で、あらゆる国
々の諜報機関に手を突っ込んで軍事・政治の情報を得られる。反米的な国々に
「テロ支援国家」の濡れ衣を着せられ、国連やNATOをテロ戦争のための国
際機関に作り替え、米英中心の世界体制を強化できる。

 テロ戦争は、ブッシュ政権の発明ではない。クリントン前政権の1998年
ごろから「タリバン敵視」「ならず者国家戦略」などが打ち出され、オサマ・
ビンラディンによるテロが相次ぎ、テロ戦争の原型ができている。おそらくテ
ロ戦争は、アメリカの二大政党、軍事産業、財界、米CIA、英MI6、イス
ラエル・モサドなど、米英中枢の諸勢力が合意した長期戦略である。

 ブッシュ政権は、911以来テロ戦争を遂行してきたものの、やり方が非常
に稚拙である。敵であるイスラム世界を怒らせるのはテロ戦争の一環ではある
が、ブッシュ政権はイスラム世界を怒らせすぎて、エジプトやヨルダンなどの
親米政権を危機にさらし、トルコを親欧米から反欧米に転換させ、イスラエル
の国家存続を危うくし、中東での米英の影響力を低下させた。

 ブッシュ政権は、表向きは米英中枢が合意したテロ戦争を遂行する任務を遂
行したが、実際には任務を過激にやりすぎて、テロ戦争を米英イスラエルの敗
北として終わらせようとしているように見える。おそらく、米英中枢の諸勢力
の中には、テロ戦争に賛成の勢力(米英中心体制で儲かる人々)と、反対の勢
力(米英中心より多極的な世界体制の方が儲かる人々)がおり、賛成勢力の押
し切りで911が起こされてテロ戦争が始まったが、反対勢力がチェイニー副
大統領あたりを動かし、イラク戦争など各種のやりすぎによってテロ戦争を失
敗させようとしている。

 テロ戦争をめぐる米中枢の暗闘は、米次期政権を決める大統領選挙に反映さ
れている。クリントンはテロ戦争の立て直しを目指し、マケインはブッシュ式
のやりすぎを続けてテロ戦争を壊そうとしている。

▼正体不明のオバマ

 それでは、民主党のもう一人の主要候補であるオバマはどうなのか。マケイ
ンとクリントンは、ワシントンの国際政治の世界での活動歴が長いので、2人
の戦略は大体わかる。しかしオバマは新人なので、どんな指向の戦略を持った
人なのかわかりにくい。イスラエルのマスコミも「オバマは何者なのか?」
「イスラエルの味方のふりをした敵ではないか」といぶかる記事を出している。
 オバマは昨年夏、他の2人に先駆けて、フォーリンアフェアーズに外交戦略
に関する論文を書かされているが「アメリカは世界を主導せねばならない」
「テロ戦争のために国際的な同盟関係を強化する」など、覇権回復とテロ戦争
立て直しを目指す方向性のことを書いている。クリントンと大きな違いがある
ようには感じられない。
 しかし歴史的に見て、米大統領選挙で意表を突く台頭をして大統領になる人
は、それまでの米政界の流れを大きく変える新戦略を、米中枢の勢力から託さ
れて立候補し、大統領になるケースがよくある。冷戦体制を途中まで壊したニ
クソンがそうだったし(いったん引退したのに、ロックフェラーから頼まれて
返り咲き、中国やソ連との和解を進めた)、冷戦後に米英中心の金融覇権戦略
を実行したビル・クリントンも、選挙戦で意表を突く台頭をした。オバマも、
何か新戦略を持たされて出てきた可能性がある。

 オバマがクリントンの対抗馬として出てきたということは、オバマを担ぎ出
したのは、おそらく米中枢でテロ戦争に反対の勢力である。ケネディ家がオバ
マ支持を表明したが、ジョンFケネディと同じ役割がオバマに期待されている
のだとしたら、それはテロ戦争を終わらせることであるとも考えられる。

▼オバマはケネディの再来?

 1960年代初頭に大統領だったケネディは、選挙では対ソ連強硬派として
当選したが、就任後、キューバ危機後にソ連のフルシチョフと和解した。キュ
ーバ危機は、まずアメリカに亡命しているキューバ人を武装させ、最初から失
敗するものとしてキューバ侵攻させ(ピッグス湾事件)、キューバ政府に危機
感を抱かせてソ連に軍事援助を求めるように誘導し、キューバにソ連のミサイ
ルを配備させて、米国民が身近にソ連の脅威を感じられる状況を実現し、冷戦
の恒久化に役立てようとした。

 しかし、軍産複合体が前政権時代から進めていたこの作戦が実行されると、
ケネディは軍産複合体の意に反して、ソ連のフルシチョフと交渉し、アメリカ
がトルコからミサイルを撤去する代わりに、ソ連はキューバからミサイルを撤
去する話をまとめてしまい、冷戦の緊張は緩和されてしまった。

 またケネディは、ベトナム戦争の泥沼に入りかけたところで撤退しようとし
て、おそらく戦争激化を画策していた軍事産業(国防総省)に敵視され、暗殺
された。ケネディ暗殺後に副大統領から昇格したジョンソン大統領は、ケネデ
ィのベトナム撤退案を即座に破棄し、米政府は戦争激化の方向に再転換してい
る。ケネディは、米英中心主義勢力の一つである米中枢の軍産複合体による冷
戦を恒久化する戦略に反対で、禁じ手のはずの「敵との交渉」「途中での撤退」
を大胆に進めようとした。

 ケネディが、米英中心主義派による冷戦の恒久化戦略を、敵との交渉や途中
での撤退によって破綻させようとしたのと同様、オバマは、米英中心派による
テロ戦争(第2冷戦)の恒久化戦略を、敵(イランや北朝鮮など)との交渉や、
イラクからの撤退をするかもしれない。オバマは選挙戦中の発言で、あらゆる
敵対国の指導者と話し合う準備がある、と述べている。
 オバマの外交政策顧問団で最も有名な人は、カーター政権で外交戦略を決め
たブレジンスキーであるが、ブレジンスキーは1979年のソ連のアフガニス
タン侵攻を誘発し、ソ連をアフガンで10年間の泥沼のゲリラ戦に陥らせ、ソ
連崩壊の原因を作った人である。
 冷戦の恒久化には、米ソ間の力の均衡が大事だったが、ブレジンスキーはソ
連の力をアフガンで浪費させ、ソ連に冷戦を終わらせたいと思わせた点で、共
和党レーガン政権以来のネオコンと同類である。ブレジンスキーは「強硬派」
と言われるが、イラク戦争だけでなく、テロ戦争にも反対している。
▼ブッシュが続けるあと1年の無茶苦茶
 全米20州強で予備選挙が行われた2月5日のスーパーチューズデーには、
クリントンがやや優勢だったが、その後の1週間でオバマが勝つ予備選が4州
続き、クリントン陣営は選挙参謀を入れ替えるなど、バラクの追い上げに対抗
しきれずパニックに陥っていると報じられている。今後、米経済が不況になる
ほど、共和党の経済戦略に対する不信感が増大し、民主党に有利になるとの指
摘もある。3人の主要候補の中で、オバマが最も優勢になりつつある(まだ事
態は流動的だが)。
 しかし、誰が次期大統領になるにしても、それまでにまだ1年近いブッシュ
政権の任期がある。その間に、ブッシュ政権が何をするか、米経済がどんな状
態になるかが非常に重要である。

 経済面では、もはや不況と金融危機の悪化は、誰にも止められそうもない。
高リスク債市場の崩壊による金融機関の不良債権総額の予測は、どんどんふく
らんでいる。連銀による急な利下げによって、ドルの信用不安とインフレもひ
どくなる一方だ。米経済の不調はこの先何年も続くと予測されている。米次期
政権がどんなに巧みな経済運営をしても、アメリカの財政難や不況、金融危機
はかなり深刻になるだろう。アメリカの経済覇権の維持は難しくなり、基軸通
貨の多極化など、現実的な別の戦略が必要になる。
 軍事政治的には、ブッシュ政権は任期末までアフガン・パキスタンの戦争を
激化し続ける。アフガンでの戦争を激化したいアメリカと、もう戦争をやめた
いドイツなど欧州諸国との間の対立が深まっている。
 その一方で欧州各国は昨年末に署名した「リスボン条約」を批准しつつあり、
EU軍を作る方向に動いている。アフガンでの失敗によって、アメリカが欧州
を軍事的に傘下に入れるNATOは事実上崩壊し、欧州がアメリカから独立し
たEU軍を強化する動きが進みそうだ。クリントンが頑張ってオバマやマケイ
ンに勝ち、アメリカの覇権を復活させようとしても、その時にはすでに、欧州
がアメリカの覇権の傘下から出ていく方向性が、不可逆的に定まっているかも
しれない。
 民主党のオバマとクリントンは、いずれも中東の安定化によるアメリカの覇
権維持を掲げているが、現状を見ると、これも無理だ。中東イスラム諸国の反
米化が進み、ハマスやヒズボラ、シリアなどはイランからの支援を受け、イス
ラエルと戦争する準備をしている。
 イスラエルは国家的生き残りのため、何とかパレスチナ(西岸)のアッバー
ス政権との交渉をまとめようとして、エルサレムを2分割して東半分をパレス
チナ新国家の首都にするという譲歩を秘密裏に進めたが、この秘密交渉は新聞
に暴露され、イスラエルのオルメルト連立政権は右派から非難され、再び危機
に陥りそうだ。オルメルト政権が粘り切れずに崩壊し、イスラエルが右派政権
になったら、ハマスやヒズボラ、シリアなどとの戦争がおそらく開始される。
 テロ戦争は全体的に、ブッシュ政権によるやりすぎの結果、イスラム側の勝
利と米英イスラエルの覇権衰退に向かっており、来年1月のブッシュの任期末
まで、この傾向は強まり続ける。次の大統領が誰になっても、おそらくアメリ
カは、テロ戦争の戦略を放棄せざるを得なくなる。米中枢の暗闘は、隠れ多極
主義の勝利となる。


この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/080212USpol.htm
*リンク先などは、上記ウェブサイトで

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