みすず書房『マグヌス』と、岩波書店『失われた書を求めて』

2006-11-16 19:42:26 | 新刊・新譜情報
マグヌス

シルヴィー・ジェルマン
辻由美 訳
四六判・222頁
定価2730円(本体2600円)
ISBN4-622-07255-6 C0097
2006.11.10
MAGNUS
by Sylvie Germain
マグヌス マグヌスは、ぬいぐるみのクマの名前。五歳で記憶喪失におちいった男の子は、このクマを肌身離さず持っていた。ナチス党員の父親は、敗戦後も逃げのびて、単身メキシコへ逃亡、自殺を遂げる。そして生活に疲れた母もまた……。しかし、大人の都合で何度か名前を変えさせられた男の子の過去は、嘘とつくり話で塗り固められたものだった。そこから彼の長い旅がはじまる。舞台はドイツからイギリス、さらにメキシコ、アメリカへ。

驚異的な記憶力をもち、数ヶ国語をあやつる彼だが、自分はいったい誰で、どこからきたのかもわからず、本当の名前を知らない。マグヌスだけが唯一の過去の証し。読む者の予想を裏切りながら、ドラマチックに進んでゆく物語の底には、さまざまな小説的興奮が潜んでいて、「小さな本なのに、十冊も読んだようなこの印象はどこからくるのだろう」と評されている。ますます注目される《高校生ゴンクール賞》を2005年に受けた、ベテラン作家シルヴィー・ジェルマンの最新作。

シルヴィー・ジェルマン(Sylvie Germain)

1954年生まれ。フランスの作家。エマニュエル・レヴィナスのもとソルボンヌで哲学を専攻し、哲学博士号を得る。文化省勤務のかたわら創作活動に入る。1985年に発表した処女作『夜の本』は書評家たちの絶賛をあつめ、グレヴィス賞をはじめ六つの文学賞を受賞。1986年から1993年にかけてプラハに住む。作品に『怒りの日々』(1989、フェミナ賞)、『愛うすき人びとの歌』『無限大』など、いずれも高い評価をうけて、20数カ国語に翻訳されている。

辻 由美(つじ・ゆみ)

翻訳家・作家。著書『翻訳史のプロムナード』(1993、みすず書房)『世界の翻訳家たち』(1995、新評論、日本エッセイストクラブ賞)『カルト教団太陽寺院事件』(1998、みすず書房)『図書館で遊ぼう』(1999、講談社現代新書)『若き祖父と老いた孫の物語――東京・ストラスブール・マルセイユ』(2002、新評論)『火の女シャトレ侯爵夫人――18世紀フランス、希代の科学者の生涯』(2004、新評論)『街のサンドイッチマン――作詞家宮川哲夫の夢』(2005、筑摩書房)ほか。訳書 ジャコブ『内なる肖像』(1989、みすず書房)ダルモン『性的不能者裁判』(1990、新評論)ヴァカン『メアリ・シェリーとフランケンシュタイン』(1991、パピルス)メイエール『中国女性の歴史』(1995、白水社)ほか。

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双書 時代のカルテ
失われた書を求めて
石川 九楊
■体裁=B6判変型・上製・カバー・156頁
■定価 1,155円(本体 1,100円 + 税5%)
■2006年11月7日
■ISBN4-00-028085-6 C0370

筆先が白紙に接する「書」の一瞬──言葉をつむぎ,意識に骨組みを与え,文体をつちかった宇宙的行為の再生に向けて.書の経験から遠ざかることで失ったものとは何か.かつて置き忘れた生存の根とは何か.リアルにして一回的な書の宇宙に,現代の実存と社会の命運のすべてを映し,廃棄すべき貧困と戦争の文体を明るみに出す

著者からのメッセージ

 ヒトは着衣することによって人間と化した.この着衣とは腰紐,帯,ベルトを指す.人間はパンツをはいたサルではない.紐を腰に巻きつけることによって自己の輪郭を確定した,腰紐を巻いたサルなのである.
 自然自体として輪廻しえたであろうヒトが,いかなる偶然の積重なりか,あるいはいかなる必然か,また何の悪戯か,聖書の禁断の果実の喩えさながらに,自然から分かれ,言葉をつくってしまった以上,人間は限りなくエデンの東への旅を続けなければならない.
 エデンの東は楽園ではありえぬ荒野ではあるが,別段,無間の地獄であるわけでもない.
 そこには大いなる希望が横たわっているのである.
(本書より)


著者略歴

石川九楊(いしかわ きゅうよう)
1945年,福井県生まれ.書家.京都精華大学教授.
著書:『書の終焉――近代書史論』(同朋社出版,サントリー学芸賞受賞),『書とはどういう芸術か――筆蝕の美学』(中公新書),『日本語の手ざわり』(新潮選書),『書に通ず』(新潮選書),『日本書史』(名古屋大学出版会,毎日出版文化賞受賞),『中國書史』(京都大学学術出版会),『筆蝕の構造』(筑摩書房),『「二重言語国家・日本」の歴史』(青灯社),『書――筆蝕の宇宙を読み解く』(中央公論新社),『日本語とはどういう言語か』(中央公論新社)ほか.


目次

予断・診断・独断 書字――場に生起する劇について

I 白紙――環境
白紙(ブランク)=黒紙(ブランク)
もうひとつの世界
垂直と水平
余白
沈黙
普遍

II 尖筆――接触
武具と文具
筆鋒
柄または軸
触覚
摩擦
筆画
起筆
送筆
終筆
筆蝕の劇
ふるまい
代行書字
字画と文字

III 言葉――同化と異化
言葉と意識
意識
意識と言葉
言葉と幻像

比喩
発語と吃音
語彙
文体
倣う
逆く

IV 文体――力
言葉と文体
スタイルの共通性
文体
文体と書体
文体の未成熟

V 作品――未来
「さわり」と「しこり」
幻像
痕跡
「さわり」と痕跡の対話
作品の誕生
抽象

VI 逆数――希望

社会
歴史

国家
戦争
民族
東の文体,西の文体
逆数

結びに代えて 言葉なんかおぼえるんじゃなかった

 

ジャンル:
その他
キーワード
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