TUP速報640号/トム・エンゲルハート「ハイジャック機アメリカ号のイラク突入」(2)

2006-10-15 23:05:39 | 世界

イラク国民が陥った状況

内戦、近隣社会の民族浄化、ますます激化する反乱、最悪の治安状況に並ん
で、イラク国民を見舞っているのは、今年おそらく70パーセントに達する
急激なインフレ(昨年の32パーセントの2倍以上)《1》、上がらない賃
金(仮にありつけるとしても)、金融システムの「不活発」、年間270
パーセントも上がるガス・電気料金、広範な腐敗(先週、国連後援の監査
《2》で、昨年、数億ドルものイラクの石油収入が不正に記帳されるかまた
はごっそり消え去ってしまっていたことが発覚した)、当てにならない電力
や飲用水の供給、推定により異なるが15パーセントから50~60パーセ
ント《3》の範囲に頑強に高止まりしたままの失業率(最近のペンタゴン議
会報告に引用されたイラク政府の発表によれば、失業率18パーセント、不
完全就業率34パーセント)、世界第3位の石油埋蔵量を誇る国なのに、政
府が乏しい財源から8億ドルを割いて近隣諸国から精製石油製品を輸入せざ
るを得ず、果てしないガソリン・スタンドの給油の列《4》と夜通しの順番
待ちが日常生活の主要部分となってしまうような(「満タンにするのに、数
日分の賃金か修道士なみの忍耐、またはその両方を必要とする……」)ガソ
リン・灯油・ガスの深刻な不足《5》、侵略ですでにボロボロになり、それ
以後もずっと衰退し続ける石油産業(目下、イラクの3大製油所は生産能力
の半分の稼動率で、侵略前の原油精製量の半分しか精製しておらず、バイジ
にある国内最大の工場にいたってはわずか7.5パーセントの稼働率で操業
している場合もある)、ガソリンに対する政府助成金の大幅な削減(国際通
貨基金の要請による)、増加する栄養失調《6》のため、ペンタゴン議会報
告によると25.9パーセントにもなる児童の発育阻害といった苦境。
1 http://uruknet.info/?p=m26150

http://www.canada.com/montrealgazette/news/story.html?id=0ccb57a1-0dd9-4d8d-a90c-b418650c450b&k=41440

http://www.tompaine.com/articles/2006/09/08/iraqs_reality_sinks_in.php

http://www.alertnet.org/thenews/newsdesk/IRIN/055fe3e8901e65fe36ce0f1a211f56ca.htm
5 http://cnews.canoe.ca/CNEWS/World/2006/09/05/1803957-ap.html
6 http://www.abc.net.au/news/newsitems/200605/s1639071.htm

言い換えると、経済的に見るかぎり、イラクはすでに解体された《*》ので
ある。
http://www.abc.net.au/news/newsitems/200605/s1639071.htm

ハイジャック機アメリカ号のイラク突入

チェイニー副大統領は、2001年12月9日のミート・ザ・プレス《1》
[NBCテレビの政治家インタビュー番組]で、9・11攻撃に対してイラ
クの関与があったと公式に主張しはじめた。彼は、ティム・ラサート[番組
ホスト]に、ハイジャック首謀犯のモハメド・アタが犯行前の4月にプラハ
で「イラク諜報機関の幹部要員」と会っていたことは「十分に確認されてい
ます」と語った。2002年9月8日《2》、彼は番組に再出演し、さらに
強い調子の発言で、この仮説を裏付けようとしている(「明らかに〔アタ
は〕何回かの機会にプラハに行っています。そして世界貿易センターに対す
る攻撃の数か月前に少なくとも一回は、彼がプラハでイラク諜報機関の高官
と一緒にいたということを示す報告をわれわれは得ています」)。チェイ
ニーや大統領、その他の政府高官から発せられる、この手の発言は他にも山
ほどあり、いつも、イラクと9・11、あるいはサダムとアル=カイダ、あ
るいはサダムとザルカウィの近縁関係をほのめかしながら、関係があったと
の最終判断は視聴者たちに任せるのが常だ――ことごとく、文字どおりの
ブッシュワ(Bushwa)=戯言〈たわごと〉だったのである。

http://www.whitehouse.gov/vicepresident/news-speeches/speeches/vp20011209.html
2 http://www.mtholyoke.edu/acad/intrel/bush/meet.htm

このようなものは、イラク侵略の前にも、間にも、後にも、情報機関内部で
も、他の場でも、そのまやかしを暴かれていた主張である。私たちは、つい
先日になって遅ればせながら一部公表された米上院諜報委員会報告によっ
て、ブッシュ政権高官たちがサダム・フセインとアル=カイダとの関係はイ
ラク侵略を正当化すると断言していたときに、米国諜報部局の分析官たち
《*》はこの高官の主張に強い異議を唱えていたことを知った。また、諜報
関係者たちはサダム・フセインがザルカウィの捕縛をじっさいに試みていた
ことに気づいていたということも、また去年の秋、CIAが、ザルカウィと
サダムがなんらかの共謀関係にあったという主張を全面的に否定したことも
知った。これでもなお、副大統領や大統領は、主張を撤回するときでさえ、
言外に、または公然と、このようなつながりを語るのをやめようとしない
――大統領にいたっては、先日の8月21日になってもまだ、サダムは「ザ
ルカウィと関係していた」と主張する始末。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/09/08/AR2006090800777.html

よくあるように、こういう嘘や情報操作の陰には、さらに深い真実が潜んで
いる。この場合、これを願望成就の真理と呼ぶことにしよう。9・11とイ
ラクとの関係は不幸なことに、あまりにも現実である。9・11後のショッ
クの熱気のなかで、ブッシュ政権がそうしてしまったのだ。

つながりというなら、こう考えていただきたい。9・11の直後、米国大統
領と副大統領とは、せいぜいカッターナイフと催涙ガスていどの脅し文句と
いうローテク凶器を振りかざし、私たちの国をハイジャックした。その後、
彼らは大部分の乗客を載せたまま、それにユナイテド航空93便[ペンシル
ベニア州に墜落したハイジャック機]の予備燃料がどれだけあるかも確かめ
ずに、アフガンを領空侵犯してから、この国家という飛行機をじかにイラク
に激突させ、カトリーナ級の災害を引き起こし、それがはてしなく続いて、
あの国を――南はバスラから北はクルディスタン国境まで――地球規模のグ
ラウンド・ゼロに変貌させてしまったのだ、と。

[筆者]トム・エンゲルハートは、書籍編集者・著述家。ネーション研究所
提供、「抗マスメディア毒・常設サイト」トムディスパッチ・コムの主宰者
であり、「アメリカ帝国プロジェクト」の共同創始者。著書に、冷戦期のア
メリカ勝利主義の歴史を描いた“The End of Victory Culture”《1》、出
版業界の実情がテーマの小説“The Last Days of Publishing”《2》があ
り、この秋の最新刊にトムディスパッチ・インタビュー第1集“Mission
Unaccomplished: Tomdispatch Interviews With American Iconoclasts And Dissenters (Nation Books)”《3》。
1 http://www.amazon.co.jp/gp/product/1558491333
2 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/1558495061
3 http://www.amazon.co.jp/gp/product/1560259388

[原文]
Tomgram: Crashing the Plane of State into Iraq posted September 12, 2006 at
http://www.tomdispatch.com/index.mhtml?emx=x&pid=120725
Copyright 2006 Tom Engelhardt

[翻訳]井上利男 /TUP

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