反戦の視点・その41 アフガン・イラク侵略戦争への日本の荷担を、ただちにやめさせよう!!

2006-11-03 00:20:09 | 世界
●イスラエル政府の危険な動き/戦争を挑発するすさまじい発言をまず紹介する。

 ▼イラン核問題:イスラエル首相が「警告」
 【エルサレム共同】イスラエルのオルメルト首相は10月19日、記者団
 に対し、イランが核開発を続ければ「代償を払うことになる」と述べ、核
 兵器獲得を阻止するためイスラエルが何らかの行動を取ることを示唆した。
 AP通信が20日に伝えた。
 首相はイスラエルがイランの核保有を容認しない立場を強調し「イランは
 妥協を拒否した場合の結果を恐れなければならない。時間は止まっておら
 ず、将来、行動が必要になる」と語った。(10・21付『毎日』)

 先のレバノン侵略戦争でイスラエル軍が勝てなかったことがイスラエル政
 府にどれほど深い傷を残したか。それは深い検討に値する。建国以来の
 「常勝神話」がこの夏、もろくも崩壊した。レバノン南部のヒズブッラー
 (後注参照)の軍事力を破壊するという当初の目的は、イスラエル軍が総
 力を結集しても、ついに達成されなかった。イスラエル政府は軍事的に勝
 利できなかっただけではなく、国際政治においても敗北し大きなダメージ
 を受けた。そしてその深刻な衝撃から立ち直ることができないでいる。

 上のオルメルト首相の発言はその危機感を反映している。しかし危機に陥
 っているのは、同政権自身であり、それもセクハラや株の売り抜けを含む
 自らの腐敗・堕落、国軍の非合理な引き回しなどによる支持率の激減がも
 たらしたものだ。政権の危機を「国家の危機」にすり替えるのは、どの政
 権もよくやる手である。それにしても、イスラエルにイランの核開発を非
 難する資格があるだろうか。自国が大量の核兵器を保有し近隣諸国をおび
 やかしているにもかかわらず、「イランの核保有を容認しない」という。
 そういう主張は、南アフリカのように、自ら核を放棄してから言えること
 だ。

 ※ 注 マスメディアはレバノン南部のイスラム教シーア派の政治・軍事
 組織であり、「神の党」を意味するグループを「ヒズボラ」と表記してい
 る。筆者が複数の専門家に問い合わせたところ、「ヒズボッラー」ないし
 「ヒズブッラー」が原語(アラビア語)に近い発音であることが分かった。
 しかし専門書では「ヒズブッラー」という表記が多いので、今後は「ヒズ
 ブッラー」に表記を統一する。

ここでイスラエルに関連するニュースをいくつか紹介する。

 ▼イスラエル撤退:ヒズボラ人気高まる ハマスが強硬姿勢も
 10月1日のイスラエル軍の完全撤退で一応の終結を見たレバノン紛争の
 結果、パレスチナ自治区では、イスラエル軍を苦しめたイスラム教シーア
 派民兵組織ヒズボラの人気が高まっている。また自治政府を主導し「政治
 色」を強めつつあったイスラム原理主義組織ハマスが強硬姿勢に転じる可
 能性もあり、今後の中東和平の行方に影響を与えそうだ。
 激しい対イスラエル武装闘争を続けてきたハマスは、昨年2月にイスラエ
 ルと自治政府が合意した停戦を順守し、1月のパレスチナ評議会選挙では
 圧勝して自治政府を主導するなど、最近は政治色を強めつつあった。だが、
 国際社会の支援削減に伴う困窮状態はいっこうに改善せず、市民の間には
 不満が蓄積している。
 ハマスの動向に詳しい政治評論家のムスタファ・サワフ氏は、ヒズボラの
 「善戦」で「ハマスは対イスラエル抵抗闘争で『武装路線』が有効だと自
 信を持った」と解説した。(10・1付『毎日』)

 ▼イスラエル、白リン砲弾の使用認める・対ヒズボラ
 イスラエル軍が先のレバノン紛争でイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラ
 に白リン砲弾を使用していたことが分かった。オルメルト政権のエデリ国
 務相(国会担当)が先週、国会の委員会で使用を認めたと、イスラエル紙
 ハーレツが10月22日報じた。
 白リン兵器は破片が皮膚に触れると激しい苦痛を伴うやけどを引き起こす
 とされ、国際的に「非人道的兵器」との批判が強い。エデリ国務相は、国
 際法は使用を禁じていないとの考えを示した。白リン兵器は第二次世界大
 戦やベトナム戦争までは頻繁に使われたが、その危険性から近年は使用を
 控える傾向があった。
 レバノン側は戦闘中からイスラエルによる白リン兵器使用に抗議。イスラ
 エル側は否定していた。(10・23付『日経』)

 ▼クラスター爆弾の不発弾で子どもの被害続く レバノン
 レバノン南部ハルタで22日、イスラエル軍が残した不発弾が爆発して1
 2歳の少年が死亡、弟(9)がけがをした。7月に起きたレバノンのシー
 ア派組織ヒズボラとの戦闘でイスラエル軍が使ったクラスター(集束)爆
 弾の子弾とみられる。AP通信などが伝えた。レバノンでは、こうした不
 発弾による被害が相次いでおり、8月14日の停戦後、この少年を含め2
 0人以上が死亡、約120人がけがをした。
 クラスター爆弾は、数発から数百発の子弾を親爆弾からばらまき、被害を
 広範囲にもたらす。子弾が不発弾として残ることが多く、市民の被害が相
 次いでいるため、平和団体や人権団体からは国際法での使用禁止を求める
 声があがっている。
 レバノンでの不発弾処理にあたっている国連は、クラスター爆弾の子弾が
 100万発以上まかれ、うち数十万発が不発弾として残っている可能性が
 高いとみている。処理には最低で1年かかるという。(10・23付『朝
 日』)

 ▼イスラエル軍機:レバノン沖でドイツ海軍の艦船に発砲
 ドイツ国防省は10月25日、レバノン沖で国連レバノン暫定軍(UNI
 FIL)指揮下で活動しているドイツ海軍の艦船に24日午前、イスラエ
 ル軍の戦闘機が発砲したと議会に報告した。船には命中せず、負傷者もな
 かったという。イスラエル政府は発砲を否定している。イスラエルは監視
 や威嚇のためレバノン側への領空侵犯を続けており、今回もその一環とみ
 られる。
 ドイツでの報道によると、イスラエル軍の戦闘機6機が24日、低空で独
 艦隊に近づき、1機が機関砲を2発撃ったという。イスラエル国防省は
 「ドイツの船から連絡がないままヘリが飛び立ったため、戦闘機が緊急発
 進した」と説明している。両国国防省は25日に連絡を取り「協力続行」
 を確認した。
 ドイツはホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を起こした歴史的経緯から、イ
 スラエル軍と交戦の恐れのある地上部隊のレバノン展開を避け、海軍を派
 遣したが、早くも小競り合いに巻き込まれた格好だ。ドイツはフリゲート
 艦など6隻、約1500人を派遣している。(10・26付『毎日』)

 ▼ウラン原料の新爆弾、レバノン空爆でイスラエル使用か
 10月28日付の英紙インデペンデントは、イスラエル軍が今年夏に行っ
 たレバノン空爆で、ウランを原料とする新型爆弾を使用した可能性がある
 と報じた。
 同紙によると、欧州議会の環境保護派の主導で設置された「欧州放射線リ
 スク委員会(ECRR)」が、レバノン南部ヒアムなど2か所の爆撃現場
 から採取した土壌を調べたところ、放射能が検知され、ウランが含まれて
 いたのが確認された。組成分析の結果、濃縮ウランと見られる。同委員会
 関係者の初期報告は、劣化ウランの代わりに濃縮ウランを使った地中貫通
 型爆弾などの可能性を指摘している。(10・29付『読売』)

 ▼エジプト部隊 ガザ境界に5000人追加
 エジプトは、パレスチナ自治区ガザとの境界に治安部隊員5000人を新
 たに展開した。国内メディアなどが10月29日伝えた。イスラエルによ
 る境界付近への大規模空爆の可能性に備えているもようだ。
 エジプトは従来、国境警備隊750人態勢で警戒に当たっていた。イスラ
 エルは、エジプトからガザへトンネルで武器が密輸されていると主張して
 いる。27日付有力紙マーリブは、トンネル網壊滅のため、ハルツ参謀総
 長が空軍に、精密誘導弾での空爆を許可したと報道。作戦の意図を「ガザ
 再占領の代替になりうる」と伝えた。
 境界のエジプト側は人口密集地で、空爆が実施されれば最大2万人に被害
 がおよびかねず、派遣部隊が避難誘導に当たる可能性もある。ロイター通
 信はイスラレル軍筋の話として「境界で起きることは事前にエジプトに伝
 えられる」と報じた。(10・30付『東京』)
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 先のレバノン侵略でイスラエル軍は、クラスター爆弾、白リン砲弾などの
 残虐な兵器、濃縮ウランを用いた新型爆弾(地中貫通型のバンカーバスタ
 ーと見られる)や劣化ウラン弾など、米軍のアフガン・イラク侵略同様、
 やりたい放題の攻撃を行ない、レバノンを新型兵器の実験場にしたのだ。
 オルメルト首相は失った政権への支持を取り戻すため、「イランの核脅威」
 による危機を演出し、強硬な姿勢で局面を打開しようとしている。筆者は
 11月7日の米議会中間選挙を前に、米ブッシュ大統領がイランの核施設
 を空爆するのではないかと深く憂慮しているが、1981年6月、イスラ
 エルがイラクのオシラク原発を空爆で破壊したあの事態が繰り返されるこ
 とも非常に懸念している。オシラク原発は当時建設中で、核燃料はまだ装
 填されていなかったから、その意味では被害が少なかったようだが、イラ
 ンは濃縮ウランを製造しつつある。その核施設が破壊されれば、どういう
 ことが起きるか……。

 今夏のイスラエルによるレバノン侵略は、イスラエルにとって屈辱的な結
 果に終わったが、それだけに「停戦」は何ら問題の解決を意味しない。そ
 れどころか現在は、次のもっと大きな衝突を準備する戦間期にすぎないと
 見るべきだろう。イスラエル軍のパレスチナ・ガザ自治区への攻撃は止ま
 ず、パレスチナの無辜の民が殺され続けている。米国とイスラエル両政府
 のイランへの敵意は日を追うごとに募りつつあり、それが軍事的衝突に発
 展する事態もあり得ないとは言えない。


●蟻地獄から這い出せない米ブッシュ政権
 ブッシュ政権のイラク政策がもうどうにもならなくなっていることは議論
 の余地がないのだが、米国は「何をするか分からない恐ろしい国」である
 から、その動向から目を離すわけにはいかない。いくつか情報を列挙する。

 ▼米国務省部長:米イラク統治は「ごう慢で愚かだった」と発言
 【カイロ支局】米国務省中東局のフェルナンデス広報外交担当部長は10
 月21日放映の中東の衛星テレビ・アルジャジーラのインタビューで、米
 国がイラク統治にあたり「ごう慢で愚かだった」とアラビア語で発言、対
 応の誤りを認めた。(10・23付『毎日』)

 ▼イラク撤退、改めて否定 ブッシュ米大統領記者会見
 ブッシュ米大統領は10月25日、ホワイトハウスで記者会見し、治安が
 急速に悪化しているイラク情勢について「我々の目標は変わらない。任務
 を達成する前に日程に従って撤退すれば、過激派を勢いづかせるだけだ」
 と述べ、撤退論を改めて退けた。
 大統領によると、10月に入って以来のイラクでの米兵死者は93人と、
 05年10月以来で最悪の記録をすでに更新した。こうした状況を受けて、
 米国内では11月7日の中間選挙を前に、イラク駐留軍撤退や事実上のイ
 ラク分割といった新たな戦略を望む声が増えている。この日の会見は、こ
 うした声を打ち消そうとねらったものだ。
 大統領は、内戦寸前の宗派間対立にも言及。「我々の忍耐は無限ではない
 と明確に伝えてある」と警告しつつも「イラクの政権が耐えられないよう
 な圧力はかけない」と、イラク当局との合意に基づいて治安の安定を目指
 す方針を強調した。(10・26付『朝日』)

 ▼イラク情勢:治安悪化に米軍増派を検討 ブッシュ大統領
 ブッシュ米大統領は10月25日、ホワイトハウスで記者会見し、急激に
 治安が悪化しているイラク情勢について「米国民と同様に私も不満だ」と
 認めたうえで、「厳しい情勢」に応じて米軍のイラク増派を検討する意向
 を明らかにした。バグダッドでの宗派間抗争の激化を受け、戦術の変更を
 具体的に示したものだ。治安確保に向けた「目標」を示した行程表を改め
 て説明し「米国はイラク指導部に、彼らの国を守るため大胆な手法を取る
 よう後押ししている」と語った。
 大統領は、敵の動向に応じて「米軍は戦術を変えてきた」と述べた。今夏
 以降、米軍とイラク治安部隊を集中投下したバグダッドでの宗派間抗争鎮
 圧作戦について「いくつかのイラク治安部隊の活動は我々が想定した目標
 を下回った」と指摘し、イラク治安部隊が十分に機能していないとの認識
 を示した。
 そのうえで大統領は「(イラク駐留米軍の)ケーシー司令官が『勝利を達
 成するためにもっと兵士が必要だ』と言えば、私はイラクに米軍を増派す
 る。それがこの戦争での私のやり方だ」と述べた。ケーシー司令官は24
 日のバグダッドでの会見で米軍増員の可能性に言及していた。(10・2
 6付『毎日』)

 ▼イラク戦術、必要な変更を行う方針…米大統領が強調
 ブッシュ米大統領は10月25日、ホワイトハウスで記者会見し、宗派対
 立が悪化の一途をたどるイラク情勢について、「米国民が満足してないの
 を知っているし、私自身、満足していない」とした上で、「現地司令官の
 要請があれば(イラク駐留米軍を)増派する」と述べ、勝利のため必要な
 あらゆる戦術変更を行う方針を強調した。
 大統領はさらに、ベーカー元国務長官を中心にイラク政策の見直しを進め
 ている「イラク研究グループ」を挙げて、「あらゆる提言を注意深く検討
 する」と述べ、中間選挙後にイラク政策の方針転換を図る可能性も示唆し
 た。
 大統領は、宗派対立を抑え込むための政治プロセスとして〈1〉イラクの
 政治・宗派代表と協力し、暴力阻止に立ち上がらせる 〈2〉民兵の解体
 や石油収入の配分、憲法修正など対立要因の解決 〈3〉周辺国と国際社
 会による各派への働きかけ――の3段階アプローチを明らかにした。(1
 0・26付『読売』)

 ▼北への武力行使 米統参議議長言及
 ペース米統合参謀本部議長は10月24日、国防総省で記者会見し、仮に
 北朝鮮と交戦状態になった場合、イラクやアフガニスタンで駐留を続けな
 がらでも、勝利するだけの戦力を米軍は保有していると強調した。北朝鮮
 が9日に核実験を実施してから、米制服組トップが北朝鮮への武力行使に
 言及したのは初めて。
 ペース議長は、「米国の潜在的な敵は、わが国が自国の利益を守るため明
 日にでも圧倒的戦力を展開できる能力があることを見誤ってはならない」
 と北朝鮮を牽制(けんせい)した。ペース議長は、軍事施設を限定的に攻
 撃する精密誘導兵器の多くをイラクで使っているため、北朝鮮への攻撃は
 それ以外の兵器を使うことになり、民間人の被害が増す可能性があり、
 「第二次世界大戦や朝鮮戦争のような状況になる」との見方を示した。
 (10・26付『産経』)

 ▼軍指揮権の早期移譲で合意 米イラク首脳
 ブッシュ米大統領とイラクのマリキ首相は10月28日、イラクの治安情
 勢などをめぐりテレビ会談した。イラク首相府は会談後、イラク軍の訓練
 を急ぎ、指揮権をイラク政府に早期に移譲することなどで両首脳が合意し
 たとする共同声明を発表した。
 首相は最近、米国がイラク側の要請通りに武器などの装備支援を行ってい
 ないなどと批判していたが、両首脳はイラク問題が主要争点の米中間選挙
 を前にあらためて友好関係を確認した。
 AP通信によると、スノー米大統領報道官は、ブッシュ大統領がテレビ会
 談で首相への支持を再確認したと述べ「(両国に)緊張関係はない」と強
 調した。マリキ首相は27日、ハリルザド駐イラク米大使との異例の共同
 声明を発表、イラク政府が日程を示して治安対策を取ることが必要との立
 場を表明した。首相は25日「日程表」について明確に否定したばかりで、
 突然の方針転換は、中間選挙での与党共和党の劣勢が伝えられるブッシュ
 政権が強い圧力を加えたとの見方が出ている。(10・28付『共同』)
 ----------------------------------
 
 引用した情報はどれも、ブッシュ政権のイラク政策が無惨に破綻したこと
 を示している。ブッシュ大統領はたびたび、イラクの民主化は軌道に乗っ
 たと強調してきた。ところがイラクは内戦に突入し、「バグダッド中央遺
 体安置所によると、10月に収容された民間人の死者は、1日からの15
 日間で計921人。一日平均60人超に達し、今年最悪だった7月(1カ
 月で1851人)に並ぶ勢いだ」(10・31付『朝日』)。米兵の死者
 数もうなぎ登りで増え続けている。

▼イラク:駐留米兵の死者数100人に 10月
 AP通信は10月30日、イラク西部アンバル県で29日、米海兵隊員が
 戦闘中に死亡、10月のイラク駐留米兵の死者数が100人に達したと報
 じた。1カ月間に米兵100人以上が死亡したのは、03年3月のイラク
 戦争開始以来4度目。イラクの治安悪化を如実に示す数値だ。
 米国防総省発表(27日午後1時現在)によると、開戦以来、死亡した米
 兵は計2808人、負傷は計2万1266人。1カ月間の死者数は04年
 11月が137人と最多で、04年4月(135人、後注参照)、昨年1
 月(107人)が続く。いずれもブッシュ米大統領の「大規模戦闘終結宣
 言」(03年5月)以降。(10・31付『毎日』)
  ※ 注 《ファルージャの虐殺》時の米兵の死者数

つまるところ、ブッシュ大統領は、またもや増派を語らざるを得なくなっ
た。これまでイラク政策推進で使ってきた「ステイ・ザ・コース」(この
道を突き進む)というスローガンこそ撤回したが(スノー大統領報道官の
言明)、なにしろブッシュ大統領は、ドイツのシュレーダー前首相が自伝
で、「神との会話」に基づいて政治判断し批判を拒否すると評した人物で
ある。米国が勝利するまで撤兵しないことを神に誓ったのだろう。
 ぬかるみをのたうち回る、この惨状に米国で厭戦・反戦感情が高まるのは
 あたりまえである。ブッシュ大統領は、イラク情勢について「米国民と同
 様に私も不満だ」とのべたが、「私も不満な」状況を生み出したのは、彼
 自身であり、他人事のように「不満」を口にできるはずはない。
 そこでブッシュ大統領は、自らのカイライ(傀儡=操り人形)であるイラ
 クのマリキ政権に責任をなすりつけ、マリキ首相はさすがに激昂した。し
 かしこの亀裂は中間選挙直前ではいかにもまずい。それで急遽、共同声明
 を発して「友好関係を確認した」のだが、これは余りにも見え透いた猿芝
 居である。

 ただマリキ首相が「米国がイラク側の要請通りに武器などの装備支援を行
 っていない」と批判したことは重要である。ベトナム戦争でもそうだった
 が、米軍と現地のカイライ政府の軍隊とは主・従関係にある。そして主人
 は従僕をまったく信用していない。米英軍はバグダッド・カイライ政権の
 軍と警察を養成してきたが、彼らには「イラク側の要請通りの武器」は渡
 されない。カイライ・マリキ政権の軍隊と警察は、いつ米英軍に背くか分
 からず、受け取った武器がそのまま反占領勢力やイスラム教諸宗派の民兵
 に流れる可能性があるからである。次の記事が武器の流出をリアルに伝え
 ている。

 ▼武器1万4千点が不明 米軍からイラク側に提供
 米側からイラク軍や警察に提供された武器のうち、短銃、ライフルなど1
 万4000点以上の所在が不明になっていることが明らかになった。イラ
 クでの米政府の活動をチェックする特別監察官が10月30日までに報告
 書を公表した。
 30日付の米紙ニューヨーク・タイムズは約50万点の武器のうち、通し
 番号で管理されていたのはわずか約1万2000点にすぎないと指摘。バ
 グダッドの路上では武器やイラク軍、警察の制服が売買されており、武器
 が米兵の攻撃に使われたのかどうかは分からないとしている。AP通信に
 よると、所在不明になっているのは半自動式の短銃1万3180丁、ライ
 フル751丁、機関銃99丁などで、追跡は困難という。(10・31付
 『共同』)

 この記事にある報告書は、米上院軍事委員会のウォーナー委員長の要請で
 特別監査官がまとめたものである。実態がこうであれば、米軍が貸与ない
 し供与する武器が米軍に向けられる可能性は否定できない。だから、米軍
 はイラク(国)軍の忠誠度を試すために、治安回復作戦でイラク軍を戦闘
 の正面に押しだし、背後から監視する。しかしイラク軍は貧弱な武器しか
 持たないから、熾烈な戦闘に耐えられず敗走する。ファルージャではそれ
 が頻発した。

 カイライ・マリキ政権は、諸地域と諸宗派の利害の均衡の上に、あてがい
 ぶちの「民主主義」の衣を着せられてかろうじて成り立っているのだから、
 ブッシュ政権との間で信頼関係があり得るはずはない。ブッシュ政権は、
 〈1〉イラクの政治・宗派代表と協力し、暴力阻止に立ち上がらせる
 〈2〉民兵の解体や石油収入の配分、憲法修正など対立要因の解決 〈3〉
 周辺国と国際社会による各派への働きかけ――の3段階アプローチの政治
 プロセスを解決策とする方針だが、それこそ付け焼き刃というもので、そ
 れが可能なら、これまでの「民主化プロセス」でとっくにできていたはず
 なのだ。

 もっともこのアピローチに「石油収入の配分」とあるのは、つい本音を自
 ら暴露していて関心を引く。イラクの石油資源は同国南部と北部に集中し
 ていて、イスラム教スンナ派(スンニー派)が根を張る中部の地下にはな
 いとされている。それで中部の住民は石油収入の公平な分配を求めている
 が、「石油収入の配分」にいちばん気をもんでいるのは、2003年3月
 に強行した空爆でイラク石油省だけは無傷で温存した米国自身なのだ。内
 戦が続けば、戦争の目的であるイラクの石油の独占を達成できないからで
 ある。


アフガン・イラク侵略戦争への日本の荷担に私たちは責任を負っている。
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