雑感記録所

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本能と本質主義(幕間) ―鉛氏の質問に答えて―

2006-08-01 15:40:43 | かんがえ
 7月30日付け記事「本能と本質主義(前)」の続編です。



 わーい、何かマジな論文のタイトルみたいになったぞー!!(苦笑)
 思ったとおりなのだが、前後編に分けてしまったことによって、どうしても二つ目のテーマ「ジェンダー」に移行する前に、きちっと前編の穴を埋めておかなければならない展開となった。前編へのコメントに答えるのだからコメント欄に返せばよさそうなものだが、鉛氏の疑義・違和感は広く共有されているものであると思われるので、「幕間」と称して急遽回答編を挿入することとした。
 そういうわけで、今回は前回予告した「ジェンダー」「ジェンダーフリー」には突入しませんので、あらかじめご了承ください。

 まず鉛氏には一言謝らなければならない。というのも、氏の最初のコメントを契機に、不快感の表明に留まっていた先の文章よりももっと論理的で冷静なセカンドレイプ批判を書くことにしたのだが、そのため氏のコメントをかなり意図的に悪く、すなわちどうとも取れる部分をあえてセカンドレイプの論法に近づくように解釈し、世のセカンドレイプ論を代表させてそれに反論する、という形態を取った。だがそのせいで、鉛氏の発言への反批判と一般的セカンドレイプへの批判とがごっちゃになっている感が拭えず、鉛氏および他の読者に混乱を与えたかもしれない。
 やはり「本能と本質主義(前)」のテーマは「一般的セカンドレイプ批判」にある。鉛氏の再質問の中で大きな部分を占めると思われる、氏の質問とわたしの受け取り方の温度差、もしくは行間の読みすぎという点については、このような経緯から説明が可能であると思われる。これについては、筆者の説明不足であった。
 本稿ではこの点を踏まえて、鉛氏の再質問を再び一般的な問いに読み替えて回答することとする。これにより鉛氏の疑義に答えることと、より広く違和感を消せない読者へ語りかけることが両立できると考えるからである。


 まず思い違いをしてほしくない最大の点は、わたしを含めセカンドレイプ批判者は、何も自己防衛をすることを否定しているわけではないということである。鉛(以下敬称略)が指摘するように、もちろん、現状を思えば、われわれの世界は理想とは程遠く、一部「狼」な男の存在は否定できない。当然自己防衛することは必要である。いくら泥棒が悪いからといって、「鍵をかけるな」などとは言えるわけも無い。同様に、「すべての男が狼でないわけではない、だから気を付けなさい」を否定することなどできるわけもない。そんな中で「夜道の女性の一人歩きはやめましょう」という張り紙を批判したりしていると、そのように取って非常識な論だと思う人もいるかもしれないが、これは物事を額面どおりにしか取らないかそうでないかの話だ。わたしがおかしいと思うのは、この張り紙の主張ではなく、この張り紙が、どうも被害者予備軍としての女性のみに向けられている、すなわち世間の注意が被害者の自己防衛にしか向けられていないと感じられる点である。
 被害者側の用心の問題と、加害者側の責任は関係ないはずなのだ。この空き巣の例では誰もが納得するが、なぜか性犯罪となると掌を返すように、被害者側が用心を怠ったので犯罪に巻き込まれた、したがって「責任」がある、というような転倒が起きてしまうのである。それはもちろん、きちんと自己防衛していれば被害にあわずに済んだかもしれない。だからといって、当の被害者が責任の一端を負わされる道理がどこにあるというのだろう。
 自己防衛の方面に注目しすぎることは、この転倒をスルーさせてしまう大きな要因になっていると考えられるのである。鉛も、「被害にあわないことが何よりも……大切」と述べている。まったく同感である。そのために自己防衛をすることも求められるだろう。だが、件の張り紙のような文言や、それに類する世論は、そこにしか目をやっていない。すなわち、「加害者が加害しなければよい」というごくごく当たり前のことに気付いていないかのように見えるのである。むしろ、こうした張り紙の類によって、われわれはややもするとそのことを忘れさせられているのではないだろうか。張り紙による巧妙なトリックは次の通りだ。
 そもそもなぜ夜道を女性が一人で歩くことは控えるべきと言われるのだろうか。狼に襲われないため、と片づけてしまっては核心は見えてこない。一歩踏み込めば、夜道の女性の一人歩きが一部男性を刺激し、結果性暴力の被害に遭う可能性がある、という因果関係が読みとれる。裏を返せば、性暴力の原因(の少なくとも一つ)に女性の行動が含まれていることになる。しかし、本当によーく考えて頂きたい。「女性が一人歩きするかしないか」と「男性が襲うか襲わないか」のそれぞれの、どちらが性暴力事件に直結した選択肢であるか。この張り紙は、なぜか前者の選択肢のみが、事件の引き金であるかのように扱っている。
 後者の選択肢を捨象できるのは、女性が慎ましくさえしていれば男性が酔わされることもなく、事件も起きないはずという論による。繰り返しになるが、これは問題を男性の人間としての「本能」に還元して、そうすると「責任」を問えないために女性側の防衛の不備をあげつらうというものである。これらからわかるように、この張り紙自体が、前提として男性の責任をある意味で制限している(「100%悪」でないということ)ように思われるのである。たとえ前もって「加害者が100%悪・責任を負う」と言っておいても、「でも被害者も……」と始めた時点で加害者の責任は削れていると思うのだが、日本語として。
 もう一度繰り返すが、女性がどれだけ防衛しても、襲う意志を固めた男性には襲われるかもしれないし、まったく無防備でいても、危険な者に遭遇しなければ襲われずに済む。女性の自己防衛と性犯罪との間には、常時成立する因果関係など存在しないのである。こと事件が起きた時に限ってそれを引き合いに出し、被害者に責任を認めるのがセカンドレイプの論法である。完全なる因果律で結ばれるのは、「加害者が加害するかしないか」と「事件が起こるか起こらないか」である。この加害者に全責任を負わせる(刑事的には達成しているが、道義的には未達成である)ことが目標である。

 そして最も問題なのは、社会があの張り紙の主張を自明のものとして疑わずに受け容れているということであって、これは取りも直さず男性の「本能」および責任回避を認めていることになるのではないか。先の言葉で言い直せば、加害者に全責任があることをきれいに忘れてしまい、被害者を責めることに何の疑問も抱かないということになる。これでは進歩がない。いくら女性が社会に進出して、形だけの平等が達成されたとしても、その基底にこのような不均等なものが寝そべっていてはこの手の犯罪が減っていくことはない。わたしが突きたいのはこの部分であって、「自己防衛する女性」ではない。責任の所在の不均衡・転倒という大問題、これは他分野での女性差別の根底に流れているものとも繋がるだろう。

つづく
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9 コメント

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Unknown (筆者)
2006-08-01 15:46:56
 あっはっは。我ながら読みにくい文章だなあ。

 というのもですね、前編は一気呵成に書いたものなのですが、こいつぁ細切れに書いたものを切り貼りして繋げたもんでして、最初段階の草稿と比べたら、あっちゃこっちゃで段落や文の入れ替えを行ってるんですね。

 まあその、下手な翻訳の哲学書か何かだと思って頑張って下さい

 と自分でフォローを入れずにはいられなかった・・・。
Unknown (鉛)
2006-08-01 17:43:32
ちょっと関係のないような話です。



たとえば会社で、社員が大事な書類等をひったくれれるかして失くした場合、悪いのはひったくりだけど、社員も責められるよね・・・。



これと同じようなことが、今回も言えるのではないのかなぁ。 わからないのだけど。
本能 (vmeg)
2006-08-02 04:12:29
セカンドレイプって、そういうことでしたか?

私も勉強させていただきました。



ところで、レイピストを許す社会を改めるには、具体的に鉛殿はドウお考えなのかをお聞きしたいものです。



レイプは立派な犯罪で、用心する方法があるなら知りたいものです。



多くが知り合いによる犯行だったり、計画性を持っている暴力だというのに、レイピストを許すのは犯罪を許すことではないのでしょうかね。
Unknown (筆者)
2006-08-02 14:09:47
>鉛

 貴殿の言う「ちゃんとしたコメント」が付いたら、また回答で一本書かなきゃなのかな・・・いつになったら後編に行けるのじゃ



>vmegさん

 コメントありがとうございます。

 当方勉強中の身ですので、何か不備がありましたらどうぞご指摘下さい。レイプ事件の実際についてよくわかっていないままにこのような問題を論じるのは順序が逆なのかも、と思いました。わたしのイメージの中では突発的犯行が大部分を占めすぎていたようです。
Unknown (ヤシマ)
2006-08-02 15:35:29
>鉛氏

多分会社の資料とごっちゃにしたら駄目ではないかな。。

会社の資料は一応持って帰ってはいけないものはなず。

そこで盗まれるっつうのは判断ミス。

そこが責められるのは当然なはず。

けど夜道歩いて女の人が襲われるっていうのは完全に男がわるい。夜道で女の人がどんな格好してようがそこは個人の裁量の域を超えない。そこに責められる事由であるのかって話なんでは。

違ってたら申し訳ない。

あとこの文はあなたを叩く文ではないことをわかっていただけたらありがたい。

Unknown (筆者)
2006-08-02 21:08:02
>ヤシマ

 お、初登場。待ってました。多くの人に関心をもってもらえて嬉しい限りです。

 問題の内容については今は触れないけど、最後のきみの心配は杞憂だよ。議論のルールを知らないやつにはわたしが鉄槌を下すから。それに、この「鉛」に関してはそういうトンデモ野郎ではないから。

 ぜひまた寄って意見を残してくれ。

Unknown (鉛)
2006-08-02 23:54:04
>vmegさん

『許す』を擁護している発言はしていないつもりです。

でも皆さんが同じようにご指摘なさるので、私の日本語の扱いに誤りがあったのでしょう。



ご質問の件ですが、とりあえず今、私がそちらの方向への拡張は避けさせていただきたいと思います。 今私の抱えている疑問等が解決するまで取り掛かりをまって戴きたいしだいです。

また、もう少し質問を具体的にしていただけたらと思います。 



レイプ等についてはされるがままだ。というお考えのようですが、その限りではないと思います。





>ヤシマさん

それは、『会社の資料はもって帰ってはいけない』が成立つ限りは成立するけど、成立たない場合、成立しないのではないのかな? たとえば営業の人とかね。  



どうでしょう?



>筆者さん

明日中には、ちゃんとしたのを投稿できると思います。・・・何とかします。

でも、基本的には合意できているので、そんなに大きな回答はいらなくなると思います。



>ここを読んでいらっしゃるみなさま

私の考えに違和感等感じた場合、ご遠慮なくご指摘ください。

私が考えを改めなければならないことは素直に受け入れ、誤解なさられているようでしたら補足させて戴きたいと思います。
Unknown (鉛)
2006-08-02 23:57:07
上記文法めちゃくちゃになってしまい申し訳ないです。

特にヤシマさん宛ての文章、わかりにくければ補足します。
ちゃんとしたの (鉛)
2006-08-06 23:45:24
基本的には、言いたいことはわかりました。

そして、わかってもらえたのかなと思います。



しかし、まだあえて聞いてみたいこともある。

長くなると大変なので、要点をまとめての質問と・・・。



①加害者に道義的責任を負わせる。



 そんなことが可能であろうか、この種の犯罪に。

 同義的には取り返しのつかない行為で、責任の取り方などないのではなかろうか。





②発端となったあの張り紙の意図するところ。



 ただ、ひとつの事故でも未然に防げればいいな。位しか考えていないのではないだろうか。

 そう考えた結果、男性に対する『夜道で女性を襲うのはやめましょう』より、女性に対する忠告をしたほうが効果があると考えたのではないだろうか。

 「加害者に全責任があることをきれいに忘れてしまい、被害者を責めることに何の疑問も抱かないということ」までいっては、深読みし過ぎではないだろうか。



と、私は思うのだが。





そして、私は女性差別がないといいたいわけではないです。

そういう意味では、いまさらどうでもいいことですがね。

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