1964年に発表されたザ・ビートルズの楽曲、"A Hard Day's Night". 同名のビートルズ初主演映画(邦題「ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」)の主題歌であり、そのサウンドトラックたる同名のアルバムの第1曲目であり、またその冒頭の謎のサウンドが、あまたの音楽家をこの40年以上に渡って悩ませ続けてきた曲である。
曲は、「ぱっと聞き」Dmsus4-7のように聞こえる「ジャーン!」というコード一発のフェルマータ("the chord"と呼ばれ伝説化されている)で幕を開ける。調性は明らかでなく、the chordの余韻が残る中前触れもなくアウフタクトでスタートするヴォーカルを追って、"It's been a hard"の"hard"でGのコードが奏されてようやくト長調であることが示される。まともな、悪く言えば定型化された前奏から、予定調和的に本体に入る(たとえばハ長調の曲であれば、イントロ:G→F7→C7→G7を経てCからスタート、みたいな)ことが当然であったロックにとってこのオープニングが与えた衝撃は計り知れない。ビートルズが、みいはあな女の子の騒ぎ立てる甘いマスクの単なるアイドルではないということが、世界に知らしめられた瞬間であった(ちなみにビートルズは、同じアルバム収録の"Can't Buy Me Love"において、「前奏なしでしかもいきなりサビから入る」且つ「長調の曲なのにマイナー・コードで始まるサビ」という衝撃をダブルでかますという離れ業をやってのけているのだが、それはまた別のお話)。
「ぱっと聞き」Dmsus4-7のように聞こえるこのthe chord、数知れぬプレイヤー、そして音響物理学者たちがこの独特のサウンドを再現しようと躍起になってきたが、ギター2本+ベースというビートルズの編成では、どうにも同じ音が表れて来ない。一時は重ね録りをしたのではという説が唱えられたこともあったが、オーヴァーダビングをしていないということは科学が明らかにしてしまった。一発で録ったことは間違いないらしい。謎は深まるばかりであった。
そして先頃、カナダはノヴァスコシア州ハリファクスにあるダルハウジー大学教授ジェイソン=ブラウン氏が、フーリエ変換を駆使して新たな説を唱えた!
Brown, Jason I. "Mathematics, Physics and A Hard Day's Night"(PDF)
そこで僕は取るものも取り敢えず、DTMのソフトでこの通りの音を出してみた(その音はこちら、と提示できないのが辛いが)。
うん。音量の調節などを頑張ってやれば、相当それらしくなりそうな感じ。上の論文に引いてある、市販のバンドスコアに書いてあるものも同じ条件で鳴らしてみたが、それよりはるかに本物らしく感じた。
うへえ、音楽ってやっぱり数学なんだなあ……。ぴゅたごらす!!フーリエGJ!
こういう知見に触れると、どうにも音楽はやめられねえって思うし、科学ばんざい!って気にもなる。テンション上がりまくりんぐ
※ちなみにタイトルは、この論文を紹介している英文記事における「ジャーン」のcounterpartであります。プラーンって……。まあその、日本人からすると「ええええええええええ」って感じですが、実は「ぶつける」というような意味の俗語prangから来ているようです。
曲は、「ぱっと聞き」Dmsus4-7のように聞こえる「ジャーン!」というコード一発のフェルマータ("the chord"と呼ばれ伝説化されている)で幕を開ける。調性は明らかでなく、the chordの余韻が残る中前触れもなくアウフタクトでスタートするヴォーカルを追って、"It's been a hard"の"hard"でGのコードが奏されてようやくト長調であることが示される。まともな、悪く言えば定型化された前奏から、予定調和的に本体に入る(たとえばハ長調の曲であれば、イントロ:G→F7→C7→G7を経てCからスタート、みたいな)ことが当然であったロックにとってこのオープニングが与えた衝撃は計り知れない。ビートルズが、みいはあな女の子の騒ぎ立てる甘いマスクの単なるアイドルではないということが、世界に知らしめられた瞬間であった(ちなみにビートルズは、同じアルバム収録の"Can't Buy Me Love"において、「前奏なしでしかもいきなりサビから入る」且つ「長調の曲なのにマイナー・コードで始まるサビ」という衝撃をダブルでかますという離れ業をやってのけているのだが、それはまた別のお話)。
「ぱっと聞き」Dmsus4-7のように聞こえるこのthe chord、数知れぬプレイヤー、そして音響物理学者たちがこの独特のサウンドを再現しようと躍起になってきたが、ギター2本+ベースというビートルズの編成では、どうにも同じ音が表れて来ない。一時は重ね録りをしたのではという説が唱えられたこともあったが、オーヴァーダビングをしていないということは科学が明らかにしてしまった。一発で録ったことは間違いないらしい。謎は深まるばかりであった。
そして先頃、カナダはノヴァスコシア州ハリファクスにあるダルハウジー大学教授ジェイソン=ブラウン氏が、フーリエ変換を駆使して新たな説を唱えた!
Brown, Jason I. "Mathematics, Physics and A Hard Day's Night"(PDF)
そこで僕は取るものも取り敢えず、DTMのソフトでこの通りの音を出してみた(その音はこちら、と提示できないのが辛いが)。
うん。音量の調節などを頑張ってやれば、相当それらしくなりそうな感じ。上の論文に引いてある、市販のバンドスコアに書いてあるものも同じ条件で鳴らしてみたが、それよりはるかに本物らしく感じた。
うへえ、音楽ってやっぱり数学なんだなあ……。ぴゅたごらす!!フーリエGJ!
こういう知見に触れると、どうにも音楽はやめられねえって思うし、科学ばんざい!って気にもなる。テンション上がりまくりんぐ
※ちなみにタイトルは、この論文を紹介している英文記事における「ジャーン」のcounterpartであります。プラーンって……。まあその、日本人からすると「ええええええええええ」って感じですが、実は「ぶつける」というような意味の俗語prangから来ているようです。