「茶碗の中の宇宙」 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館
「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」 
3/14~5/21



約450年間に渡って続く樂茶碗の系譜を辿ります。東京国立近代美術館で開催中の「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」を見てきました。


長次郎「黒楽茶碗 銘 大黒」 桃山時代 個人蔵 重要文化財

会場に入るとそこは闇。初代長次郎の深遠な世界が待ち構えていました。樂焼のルーツに当たる素三彩に始まり、黒樂、赤樂が並んでいます。全部で14点です。展示室はかなり暗く、目が慣れるまでに時間がかかりました。まず目を引くのは「銘 大黒」です。通称「利休七種」とも称される7碗のうちの1つ。黒樂とはいえ、わずかに柿色を帯びています。ざらついた表面には星空を見るかのようでした。まさに静謐。これぞ長次郎を代表する作品と言えるかもしれません。

赤樂では「銘 無一物」が魅惑的です。先の「大黒」に比べれば、胴が少しせり上がり、いささか引き締まった造りをしています。口縁もやや鋭い。一部に霧のような膜が現れています。雲を連想しました。とはいえ、表情は寡黙です。さも瞑想を誘うようでもあります。惹きつけてやみません。


本阿弥光悦「赤樂茶碗 銘 乙御前」 江戸時代 個人蔵 重要文化財

展示は基本的に年代順です。冒頭の長次郎から家祖田中宗慶を経て、二代常慶、三代道入、四代一入、五代宗入と続きます。なお樂家は全てが世襲ではありません。「養子を迎え、親戚関係を結び、その子に総てを伝える」(解説より)という一子相伝を基本としています。そして六代、七代へ。宗入が本阿弥家、ないし尾形家と血縁関係にあることから、光悦と乾山の参照もありました。現代では当代の吉左衛門が旺盛に制作しています。さらに次の世代の長男篤人の作品までを網羅していました。

内省的な長次郎から一転して華やかなのが三代道入でした。造りも全般的に薄い。軽快です。黒釉も格段に照りが増します。モダニズムと呼んでも良いかもしれません。


三代道入「黒樂茶碗 銘 青山」 江戸時代 楽美術館 重要文化財

目立つのが黒樂の「銘 青山」でした。ともかく目立つのが胴の白抜きです。山に見立てたのでしょうか。何らかの小動物がちょこんと座っているように見えます。口縁は茶色を帯びています。見込みには細かい粒が浮き上がります。まるでシャンパンの泡のようでした。

赤樂では「銘 僧正」が楽しい。柿色というよりも、仄かにオレンジ色をしています。そして市松模様が装飾的でした。また口縁に歪みがあります。それも動きを表すためのものでしょうか。道入の器の景色は実に多様です。いずれの器もが各々に個性を表現しています。

いわゆる揺り戻しもあったのでしょう。五代宗入は長次郎様式に再び接近しました。黒樂の「銘 亀毛」の質感はマット。道入作に見られる光沢感はありません。むしろ鉄肌のように重厚です。腰も低く、胴も厚い。ただ下部に僅かなくびれがありました。いささか艶かしい。これが宗入の新たな感覚なのかもしれません。

九代了入が樂に新たな世界を切り開きます。すなわち削りです。ともかく作品の至るところにヘラの跡が刻み込まれています。黒樂の「銘 巌」はどうでしょうか。胴の部分は面取りです。よって鋭い。光のある釉薬は道入を志向したのでしょうか。「白樂筒茶碗」はヘラの跡が縦方向に流れています。明確に動きが現れました。このヘラの導入は後の樂家にも影響を与えたそうです。十代旦入、十一代慶入、十二代弘入、十三代惺入にまで受け継がれました。


ラストは当代です。十五代吉左衛門の展示が充実しています。

再び暗室です。冒頭の長次郎のスペースを思い起こさせます。作品は恭しく独立ケースに収められていました。東京国立博物館の法隆寺宝物館の雰囲気に近いかもしれません。


十五代楽吉左衛門「焼貫黒樂茶碗 銘 巌烈は苔の露路老いの根を噛み」 平成16年 楽美術館

当代の作品を見て感じるのは、前衛的であり、詩的でもあるということです。金彩や銀彩も導入。形は時に大きく屈曲します。手に収めることが出来るのでしょうか。土の感触も強く、岩石や鉱石をそのまま削り出したような質感もありました。また脆さを感じさせるものも興味深いところです。儚くも雅やかです。突如、炎が起こり、水が流れ出します。装飾的世界の中に自然の景色が垣間見えました。

私が最初に茶碗、ないし樂焼に魅せられたのが、2006年に三井記念美術館で行われた「赤と黒の芸術」でした。

以来10年以上。樂茶碗を見る機会はしばしばありましたが、これほどのスケールでの展示は久々でした。「私が生きている間に二度とこれほどの規模の展覧会は開催できない」と述べるのは当代吉左衛門です。確かに充実しています。あながち誇張ではありません。

会期最初の土曜日に見てきましたが、館内は思いの外に盛況でした。

4月11日からは東京国立博物館で「茶の湯」展もはじまります。それにあわせ、両館会期中、竹橋の国立近代美術館と上野の国立博物館を結ぶ無料のシャトルバスも運行されます。

東京の春を彩る茶に関する2つの展覧会。ひょっとすると後半は混み合うかもしれません。



会場出口に撮影コーナーと題し、長次郎作をアルミ合金で複製した茶碗の展示がありました。



ただし成分が異なるからか、本物より約200グラム重いそうです。触ることも可能です。手に馴染ませてみるのも面白いかもしれません。

「定本 樂歴代―宗慶・尼焼・光悦・道樂・一元を含む/淡交社」

5月21日まで開催されています。おすすめします。

「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」 東京国立近代美術館@MOMAT60th
会期:3月14日(火)~5月21日(日)
休館:月曜日。但し3/20、3/27、4/3、5/1は開館。3/21(火)は休館。
時間:10:00~17:00
 *毎週金曜日は20時まで。
 *入館は閉館30分前まで
料金:一般1400(1200)円、大学生1000(800)円、高校生500(300)円以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *当日に限り「MOMATコレクション」、「マルセル・ブロイヤーの家具」も観覧可。
住所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
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「迎賓館赤坂離宮」一般公開

「迎賓館赤坂離宮」の一般公開に参加してきました。



かつては東宮御所として建てられ、今では国の賓客施設として利用されている「迎賓館赤坂離宮」。「外国からの賓客の接遇に支障のない範囲」(公式サイトより)において、一般にも公開中です。

本館と主庭の観覧は原則、事前の申し込みが必要でしたが、今年の1月5日から3月30日の間は不要でした。私も当日の飛び込みで観覧してきました。



元赤坂の迎賓館の最寄駅は四ツ谷です。赤坂口から南へ向かうとすぐに門が見えてきます。正門でした。



前庭のみであればそのまま入場可能です。ただし本館の観覧は出来ません。本館を見学するには西門から入る必要があります。迎賓館を左手に道に沿って進みます。その先が西門でした。



予約、整理券不要とはいえ、国の迎賓施設です。セキュリティーチェックが行われます。まずは手荷物、および金属探知機の検査です。ペットボトルの飲み物は係員の前で一口飲まなくてはいけません。セキュリティーのための待機列は約20分ほどでした。本館の観覧料は大人1000円です。券売機で支払った後、中へと入りました。



館内は一方通行です。まず西側の入場口から正面の中央階段へ進みます。その後、2階へ上がり、「花鳥の間」、「大ホール」、「彩鸞の間」、「羽衣の間」と順に観覧するルートです。なお「朝日の間」は改修工事中のため、見学は叶いませんでした。

今回の一番の目的は花鳥の間を見ることでした。というのも、渡辺省亭の下絵による涛川惣助の七宝が飾られているからです。

「花鳥の間」は、国、ないし公賓主催の公式晩餐会などが催される大食堂です。最大席数は130席。かつては先進国首脳会議なども行われました。


「花鳥の間」(パンフレットより)

花鳥とあるように、室内の意匠は花と鳥です。36枚の天井画のほか、フランスのゴブラン織風の綴織などが飾られています。シャンデリアはフランス製です。おおよそ1トン以上。迎賓館で最も重量があります。

七宝は壁面の中段の装飾でした。全部で30枚です。全て楕円形でした。前もって東京国立博物館で見た渡辺省亭の下絵を忠実に再現しています。もちろん規制線があるため、目と鼻の先で見るのは不可能でしたが、フランスのルネサンス様式の建築装飾の空間でもよく映えていました。

迎賓館で最大の部屋は「羽衣の間」です。その名は天井の大絵画が謡曲の羽衣を題材していることに由来します。正面の中二階にはオーケストラボックスがありました。元々、舞踏会場として設計されたそうです。現在はレセプションや会議場などに使用されています。


「羽衣の間」(パンフレットより)

建築様式はフランス18世紀末の古典主義です。音楽に関した部屋であるからでしょうか。壁面の金の装飾には様々な楽器が表されていましたが、その中に日本の伝統的な三味線なども含まれていました。迎賓館自体はフランスの様式を模していますが、随所に和のテイストが介在しているのも興味深いところでした。



小一時間ほど館内を見学した後は、本館裏手に広がる主庭へと向かいました。目立つのは噴水です。2段重ねです。かなり大規模でした。もちろん西洋風です。グリフォンやライオンのほか、亀の像も設置されていました。



噴水が西洋風とはいえ、主庭は全面砂利敷きです。また随所に松も植えられています。その点では和洋折衷と言えるかもしれません。なお主庭の先には和風別館が控えていますが、そちらは完全に事前予約制でした。この日は手配していなかったため、見学しませんでした。



最後に廻ったのが前庭です。ともかく広い。全面が石畳です。賓客を招いた際には赤いカーペットが敷かれます。栄誉礼などは報道でもよく目にするのではないでしょうか。



外観はネオバロック様式の洋風建築です。左右対称です。建物は両側へ弧を描くように広がっています。外壁は花崗岩です。まさしく重厚でした。



正面玄関はバルコニー付きです。屋根は緑でした。装飾は主に2種類です。まずはドーム型です。星が表されています。さらに鳳凰が力強く羽を広げていました。



もう1つが武士の甲冑です。計2体。意匠は異なります。まるで番人のように立っています。日本の伝統、ないし力強さを表現しているのでしょうか。



門扉の装飾は繊細です。皇室を示す菊の紋章と、政府機関に使われる桐の紋章が象られていました。

正門が退出ルートです。周辺には観光バスも多く停まっていました。確かに団体客も目立ちます。すっかり東京の観光スポットとして定着したようです。



かつて迎賓館の公開は夏季の期間限定でしたが、現在は一年を通して見学することが可能です。(公開不可日を除く)

但し4月以降は再び事前の申し込み制となります。観覧の注意点、ないし公開スケジュールについては内閣府のWEBサイトをご参照ください。


前庭、主庭、および本館外観のみ撮影が可能です。本館内は一切の撮影が出来ません。ご注意ください。(本館内の写真はパンフレットより拝借しました。)

「赤坂離宮迎賓館」(本館、および主庭)一般公開(@cao_Geihinkan
会期:一般公開日
入口:迎賓館赤坂離宮西門
時間:10:00~17:00(16時受付終了)
料金:大人1000(800)円、中高生500(400)円、小学生以下無料。
 *( )内は20名から50名までの団体料金。
住所:港区元赤坂2-1-1
交通:JR線四ッ谷駅赤坂口より徒歩約7分。東京メトロ丸ノ内線四ッ谷駅1番出口より徒歩約7分。東京メトロ南北線四ッ谷駅2番出口より徒歩約7分。
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「孤高の神絵師 渡辺省亭」 加島美術

加島美術
「蘇る!孤高の神絵師 渡辺省亭」 
3/18〜4/9



幕末の江戸に生まれ、パリ万国博覧会では銀牌も獲得した日本画家、渡辺省亭(1851〜1918)。「わたなべせいてい」の呼び方しかり、必ずしも現代では良く知られているとは言えません。

それもそのはずです。今までの回顧展はゼロ。まとめて画業を俯瞰する機会すら一度もありませんでした。

今年で没後100年。まさに省亭再発見です。初めての回顧展が京橋の加島美術にて開催されています。

省亭は幼い頃から絵が好きでした。まず学んだのは菊池容斎です。そして柴田是真にも私淑。19歳でイギリスのエディンバラ公に贈呈された画帖の一部を描きました。22歳で独立します。その後、「日本最初の貿易会社である起立工商会社に就職」(解説より)し、主に七宝の工芸図案を制作しました。さらに第一回内国勧業博覧会では三等を受賞。若い頃から画才を発揮しました。

明治11年、起立工商会社の社員として渡欧します。日本画家として初めてフランスの地を踏みました。約2年から3年間ほど滞在します。パリでは印象派関連のサークルに参加し、ドガやマネらの前で日本画の制作も実演しました。鳥の絵をドガに謹呈した逸話も残っているそうです。西洋のジャポニスムにも影響を与えました。

赤坂離宮迎賓館の「花鳥の間」の七宝の下絵を手がけたのも省亭です。七宝は大家の涛川惣助が制作。今でも同広間に飾られています。


「雪月花図」 個人蔵

省亭の画風を捉える言葉として挙げられるのが「洒脱」(解説より)でしたが。「雪月花図」はどうでしょうか。三幅対の掛け軸です。右に桜。鳥がとまっています。中央が月です。上には満月が照り、下方には菖蒲が花をつけています。そして左が雪。冬の光景でしょう。雀が群れていました。構図に無駄もありません。


「秋草図」
 
「秋草図」からは琳派を連想しました。大きな満月を背景に草が縦方向に伸びています。茎や葉は幾分絡み合っています。線は素早い。抱一のようです。流麗とも言えるかもしれません。


「あざみ図」 個人蔵

「あざみ図」も美しい。刺々しいあざみが紅色の花を咲かせています。大きな蜂が飛んでいました。あざみの周囲に刷毛でなぞったような筆触があることに気がつきました。影、ないし茂みを表しているのでしょうか。写実性の高いあざみとは対比的です。かなり大胆でした。


「萩にうさぎの図」

写実といえば「萩にうさぎの図」も忘れられません。見るべきはうさぎです。とりわけその毛並みと目に要注目です。絵具を滲ませては立体感を出す一方、細い筆を重ねては毛を表現しています。そして目です。潤んでいて光があります。視線も強い。まるで意思を持っているかのようでした。省亭は動物画の名手でもあります。


右:「牡丹に蝶の図」 個人蔵

傑作と呼んで過言ではありません。「牡丹に蝶の図」に魅せられました。白と紅の牡丹です。蜜を吸いに蝶がとまっています。色は極めて瑞々しい。ニュアンスに富んでいます。


「牡丹に蝶の図」(拡大) 個人蔵

花びらは湿り気を帯びているのでしょうか。柔らかな質感さえ伝わってきました。省亭はパリ滞在経験もあり、西洋の技法にも通じていました。立体感、ないし光の表現は西洋由来と言えるのかもしれません。それを日本画に落とし込むことに成功しています。


「蘇る!孤高の神絵師 渡辺省亭展」会場風景

出展は約30点。全て個人のコレクションです。会場はギャラリーのスペースですが、1階と2階の全フロアを利用。思いの外に数もあります。また露出での展示でした。ガラスケースはありません。


なお現在、「渡辺省亭展」にあわせ、都内各地の博物館、美術館でも省亭の作品が公開中です。

[都内で公開中の省亭(関連)作品]

・東京国立博物館(本館18室):3月7日(火)〜4月16日(日)
「雪中群鶏」、「迎賓館赤坂離宮七宝下絵」(12枚)

・迎賓館赤坂離宮(花鳥の間):一般公開開催日
「渡辺省亭下絵による濤川惣助の七宝焼」(30枚)

・山種美術館:2月16日(木)〜4月16日(日)
「葡萄」、「月に千鳥」

・松岡美術館:3月22日(水)〜5月14日(日)
「藤花游鯉之図」他4点

・根津美術館:4月12日(水)〜5月14日(日)
「不忍蓮」、「枯野牧童図」

私も早速、東京国立博物館の展示を見てきました。会場は本館の1階18室です。「雪中群鶏」、及び「迎賓館赤坂離宮七宝下絵」が展示されていました。


「雪中群鶏」 明治26(1893)年 東京国立博物館

「雪中群鶏」はシカゴ万国博覧会への出品作です。車の上で鶏が群れています。いわゆる「洋風表現」(解説より)ということでしょうか。まるで印象派を思わせるような色遣いが目を引きます。


「赤坂離宮花鳥図画帖」 明治39(1906)年頃 東京国立博物館

そしてもう1つが迎賓館の七宝下絵こと「赤坂離宮花鳥図画帖」です。かの「花鳥の間」の装飾です。これがまた極めて写実的でした。


「赤坂離宮花鳥図画帖(鷦鷯に紫陽花)」 明治39(1906)年頃 東京国立博物館

例えば「鷦鷯に紫陽花」です。紫陽花は二輪。日本古来のガクアジサイでしょうか。がくの部分も一枚一枚、丁寧に塗り分けています。葉の所々が茶色に変色していました。鋭い観察眼です。鳥の毛並みも細かい。陰影もあります。


「赤坂離宮花鳥図画帖(駒鳥に藤)」 明治39(1906)年頃 東京国立博物館

「駒鳥に藤」も魅惑的です。房はやや立体的です。駒鳥は反り返るように枝にとまっています。蔓の部分の線や色にも澱みがありません。高い画力を伺い知ることが出来ました。


「赤坂離宮花鳥図画帖(黒鶫に木瓜・山桜)」 明治39(1906)年頃 東京国立博物館

ほか雉が見を屈めて歩く「雉に蕨」や白い桜に紅色の木瓜をあわせた「黒鶫に木瓜・山桜」も美しい。かの離宮に飾るための下絵です。よほど力が入っていたのでしょうか。いずれも質が高い。どの作品も隙がありませんでした。

さて最後に加島美術での展示替えの情報です。前後期で作品の入れ替えがあります。

「蘇る!孤高の神絵師 渡辺省亭」
前期:3月18日(土)〜3月29日(水)
後期:3月30日(木)〜4月9日(日)

省亭自身、いわゆる画壇に属さず、弟子も取らなかったそうです。また晩年は展覧会の出品もやめてしまいます。それ故に歴史に埋もれてしまったのかもしれません。

「渡辺省亭:花鳥画の孤高なる輝き/東京美術」

「わたなべせいてい」の名、しかと覚えました。「神」とするには議論あるやもしれませんが、また一人、惹かれる絵師と出会うことが出来ました。

1点を除いて撮影が可能でした。但し事前に受付の方に断っておくのが良さそうです。



4月9日までの開催です。まずはおすすめします。

「蘇る!孤高の神絵師 渡辺省亭」 加島美術@Kashima_Arts
会期:3月18日(土)〜4月9日(日)
休館:会期中無休。
時間:10:00~18:00
料金:無料。
住所:中央区京橋3-3-2
交通:東京メトロ銀座線京橋駅出口3より徒歩1分。地下鉄有楽町線銀座一丁目駅出口7より徒歩2分。JR線東京駅八重洲南口より徒歩6分。
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「江戸と北京」 江戸東京博物館

江戸東京博物館
「江戸と北京ー18世紀の都市と暮らし」 
2/18~4/9



江戸東京博物館で開催中の「江戸と北京ー18世紀の都市と暮らし」のブロガー内覧会に参加してきました。

18世紀、海を挟んでの江戸と北京は、都市として隆盛を極めていました。

江戸と北京を比較する展覧会です。ともすると同時代としての接点は薄いかもしれませんが、両都市を通すことで、日本と中国の生活と文化の共通点や相違点が浮かび上がっていました。

両都市を描いた画巻が充実しています。全3点です。ハイライトと言っても差し支えありません。それが「万寿盛典(康熙六旬万寿盛典図)」と「乾隆八旬万寿慶典図巻」、そして「熈代勝覧」でした。


「万寿盛典(康熙六旬万寿盛典図)」展示風景

制作年代順に追いかけましょう。まずは「万寿盛典(康熙六旬万寿盛典図)」です。舞台は北京。清朝でも名君とされる康熙帝の時代です。モチーフはパレードでした。すなわち康熙帝の60歳の祝賀行事を描いています。


「万寿盛典(康熙六旬万寿盛典図)」 1717(康熙56)年 中国・首都博物館

行列の出発地点は西郊の離宮です。紫禁城へと向かっています。驚くべきは細密な描写です。たくさん集う人々の姿だけでなく、沿道の建物や装飾のほか、舞台に看板、店先の売り物から洗濯物までが極めて細かに表されています。遠目では判別不能です。限りなく目を凝らさなければ細部が分かりません。


「万寿盛典(康熙六旬万寿盛典図)」 1717(康熙56)年 中国・首都博物館

一瞬、「清明上河図」が頭をよぎりました。もちろん時代もまるで異なり、描写も及びませんが、それでも惹きつけるものがあります。ただし惜しむべきは展示台の高さです。率直なところ低い。相当に屈み込まなくては作品に近寄れません。


「万寿盛典(康熙六旬万寿盛典図)」展示風景

ただその分、上のスペースが空いていました。そこに画巻に因む様々な資料が展示されています。例えば店の看板です。酢の販売店は瓢箪型。中には「回回」と記されたイスラム教徒用の軽食店の看板もありました。北京は国際都市です。回教徒も少なくなく、清められた羊肉を供する店もあったそうです。


「乾隆八旬万寿慶典図巻」展示風景

続くのが「乾隆八旬万寿慶典図巻」です。制作は「万寿盛典」から下ること80年。1797年の作品です。今度も祝賀パレードです。康熙帝の孫にあたる乾隆帝の80歳のお祝いです。祖父にならって豪華な式典を敢行しました。


「乾隆八旬万寿慶典図巻」1797(嘉慶2)年 中国・故宮博物院

先の「万寿盛典」はほぼモノクロームなのに対し、本図巻はカラーです。式典を祝う楼閣の花鳥画も鮮やかでした。鳳凰の姿も見えます。ちなみに楼閣は祝典のためにわざわざ作られたそうです。いずれも極彩色に染まっています。一体どれほどの資金が投じられたのでしょうか。


「乾隆八旬万寿慶典図巻」1797(嘉慶2)年 中国・故宮博物院

北京の故宮博物院の所蔵です。日本で初めての公開でもあります。必ずしも細密な描写とは言えませんが、賑やかな祝典の雰囲気が伝わってきました。


「熈代勝覧」展示風景

3点目の画巻は日本です。「熈代勝覧」(きだいしょうらん)でした。制作は「乾隆八旬万寿慶典図巻」とほぼ同時代の1805年です。舞台は江戸の日本橋です。通りを東側から俯瞰する構図で描いています。全長は12メートル。登場人物は計1671人です。さすがの目抜き通りです。大勢の人々で賑わっています。


「熈代勝覧」 1805(文化2)年頃 ベルリン国立アジア美術館

出発地点は神田の今川橋でした。中国の画巻が祝典を記したのに対し、「熈代勝覧」に表されたのはあくまでも日常の光景です。だからでしょうか。荷物を持って行き交う人が多く目につきました。材木を運んだり、かごを背負う人もいます。身形も様々です。武士から商人、町人と分け隔てがありません。


「熈代勝覧」 1805(文化2)年頃 ベルリン国立アジア美術館

店先で品定めしている人から酔っ払いまでを細かに記しています。ひな祭りの時期だそうです。猿回しの姿も見受けられました。ベルリン国立アジア美術館のコレクションです。おおよそ11年ぶりの里帰りとなります。


「熈代勝覧」展示風景

この「熈代勝覧」でも関連の文物があわせて展示されていました。薬箱に駕籠家籠、そして看板です。算盤店はそのまま巨大な算盤が吊り下がっていたそうです。さぞかし目立っていたに違いありません。

構成に一工夫あります。江戸と北京の都市生活をいくつかのテーマに分けているのもポイントです。それが、「住まう」、「商う」、「装う」、「歳時」、「育てる」、「学ぶ」、そして「遊ぶ」でした。


「京劇衣装」 民国 中国・首都博物館

例えば「遊ぶ」です。観劇でした。北京では中国各地の演劇が上演。それが発展して京劇の基礎を築きます。また茶館では講談や漫才などの公演も行われました。さらに中国相撲や雑技も好まれます。面白いのは昆虫の飼育です。なんとコオロギを飼って戦わせたそうです。一体どのように勝ち負けを判定したのでしょうか。


「芝居大繁昌之図」 歌川豊国画 1815〜42(文化12〜天保13)年頃 江戸東京博物館

一方での江戸です。もちろん芝居見物は盛んです。特に相撲が人気でした。さらに見せ物小屋も登場します。いわゆる盛り場へと繰り出しました。もちろん花見も娯楽の一つでしょう。また虫聴きと呼ばれる虫の鳴き声を愛でる趣味もあったそうです。


「科挙試験のカンニングペーパー」 清時代 中国・首都博物館

北京の「学ぶ」は主に公的な教育機関が担っていました。一部に私塾が登場。学問は儒教が中心です。また科挙の普及も重要です。よほど試験が苦しかったのでしょうか。当時のカンニングペーパーも見つかっているそうです。虫眼鏡を通さなくては読めないような小さな字がびっしり書かれています。科挙の受験者数は数万から数十万人にも及んだそうです。最終の本試験を突破出来るのは数百人に過ぎませんでした。


「昌平坂学問所惣絵図」 1789〜1817(寛政〜文化年間)年 江戸東京博物館

江戸でも昌平坂学問所や藩校などの教育が盛んだったそうです。そして市井の寺子屋も重要です。読み書き、そろばんのほか、商売などの実学も学びます。実際の寺子屋で使われたと思われる机なども展示されていました。


「女性婚服」 民国 中国・首都博物館

鮮やかな婚礼服に目を奪われました。清代に着用された衣服です。さらに時に25センチの高さもある満州族のハイヒールも凄まじい。一方で江戸の友禅も魅惑的です。図柄はより繊細。下に水辺が広がり、上部には鶴が舞っています。雅やかではないでしょうか。

ラストは「北京の芸術文化」と題し、北京首都博物館の絵画、ないし工芸のコレクションが一定数まとまって紹介されています。全て日本初公開でした。


「青花御窯廠図磁器板」 清・道光期(1821~1850) 中国・首都博物館

とりわけ目立つのが工芸品です。「青花御窯廠図磁器板」も美しい。景徳鎮です。同窯周辺の街並みや制作工程などを事細かに描いています。


「藍地番蓮紋香炉」 清時代 中国・首都博物館

「藍地番蓮紋香炉」も見事ではないでしょうか。つまみの部分は龍です。一方の脚は獅子の顔でした。淡い青の地の色も目映い。唐草の文様が広がっていました。


「江戸と北京展」会場風景

出展は計185件。北京の首都博物館と江戸東京博物館のコレクションが大半を占めています。派手さはありませんが、思いの外に見応えがありました。


4月9日まで開催されています。

「江戸と北京ー18世紀の都市と暮らし」 江戸東京博物館@edohakugibochan
会期:2月18日(土)~4月9日(日)
時間:9:30~17:30
 *毎週土曜は19:30まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し3月20日(月・祝)は開館、翌21日(火)は休館。
料金:一般1400(1120)円、大学・専門学生1120(900)円、小・中・高校生・65歳以上700(560)円。
 *( )は20名以上の団体料金。
 *常設展との共通券あり
 *毎月第3水曜日(シルバーデー)は65歳以上が無料。
住所:墨田区横網1-4-1
交通:JR総武線両国駅西口徒歩3分、都営地下鉄大江戸線両国駅A4出口徒歩1分。

注)写真はブロガー内覧会の際に主催者の許可を得て撮影したものです。
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「博物館でお花見を」 東京国立博物館

東京国立博物館
「博物館でお花見を」 
3/14~4/9



お花見の季節がやって来ました。東京国立博物館で開催中の「博物館でお花見を」を見てきました。

春の恒例のお花見企画です。本館常設展において、桜に因んだ様々な作品が展示されています。


狩野長信「花下遊楽図屏風」 江戸時代・17世紀

まずは国宝室。狩野長信の「花下遊楽図屏風」でした。右隻が満開の八重桜です。人々が宴会に興じています。樹木に比べて人の姿が大きいのも特徴です。のちの寛永の風俗画に受け継がれたと指摘されています。中央が欠落していました。何でも大正時代の修理の最中に、関東大震災によって焼失してしまったそうです。左隻は海棠です。お堂の下の踊りを見物しています。艶やかな着物も目を引きました。


尾形乾山「桜に春草図」 江戸時代・18世紀

乾山に優品がありました。「桜に春草図」です。丸みを帯びた桜や草花はいかにも乾山風。ツクシやタンポポを描いています。桜の花びらがまるで紫陽花のように広がっているのも面白いところです。和歌を記した書も実に流麗でした。


木島桜谷「朧月桜花」 昭和時代・20世紀

木島桜谷の「朧月桜花」も魅惑的ではないでしょうか。薄い墨による夜の景色です。満月が桜の木の向こうにぼんやりと浮かんでいます。幹はシルエット状に浮かぶ一方で、花や葉の姿は幾分に写実的です。幻想的な世界が広がっていました。


飯島光峨「花下躍鯉」 明治7(1874)年

鯉が桜に向かってジャンプしていました。飯島光峨の「花下躍鯉」です。視点は2つ。月は下から眺めているのに対し、鯉は上からの視点で捉えています。桜花はリアルです。薄いピンク色を帯びています。


仁阿弥道八「色絵桜楓文木瓜形鉢」 江戸時代・19世紀

工芸にも注目です。一際、鮮やかであるのが、仁阿弥道八の「色絵桜楓文木瓜形鉢」でした。内は紅葉、外側が桜です。器の両面で春と秋の2つの季節を表現しています。


「色絵桜花鷲文大皿」 江戸時代・18世紀

「色絵桜花鷲文大皿」も桜が主役です。伊万里の金欄手です。見るも華やかです。染付に色絵を施しては細かな意匠を展開しています。


「小袖(紅綸子地八重桜土筆蒲公英燕模様)」 江戸時代・19世紀

小袖でも桜の模様は好まれました。地は朱色です。刺繍で花を象っています。タンポポも咲き、空にはツバメも飛んでいました。江戸時代には宮中の女性も普段着に小袖を着用するようになったそうです。春を迎えては着飾ったのかもしれません。


「不動明王立像」 平安時代・11世紀

「不動明王立像」も桜に因んだ作品です。両目を剥いては険しい表情をしています。直立不動で堂々としています。しかし何故に桜なのでしょうか。直接には見当たりません。答えは素材でした。つまりサクラの木で出来ているわけです。


西垣勘平「流水に桜透鐔」 江戸時代・17世紀

ほか小品ながらも「流水に桜透鐔」なども桜のモチーフです。本館をぐるりと一周、桜を探し歩いては楽しみました。



恒例の「さくらスタンプラリー」が開催中です。館内の5つのスポットでスタンプを押すと、オリジナルの缶バッジがプレゼントされます。

春の庭園開放も始まりました。本館裏手の庭園には「さくらカフェ」もオープン。コーヒーを片手に桜を愛でることも出来ます。また3月31日(金)、4月1日(土)、7日(金)、8日(土)は夜7時半までライトアップも行われます。



私が出かけた際はまだ花を開いていませんでしたが、既に東京でも桜の開花が発表されました。見頃は来週の半ば以降でしょうか。月末には満開を迎えるかもしれません。



東博はお花見シーズンもさほど混みません。上野の穴場的なスポットでもあります。


4月9日まで開催されています。

「博物館でお花見を」 東京国立博物館@TNM_PR
会期:3月14日(火)~4月9日(日)
休館:3月21日(火)。
料金:一般620円(520円)、大学生410円(310円)、高校生以下無料。
 * ( )内は20名以上の団体料金。
時間:9:30~17:00
 *毎週金・土曜日は20時まで開館。
 *4月2日(日)、4月9日(日)は18時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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