「大エルミタージュ美術館展」 森アーツセンターギャラリー

森アーツセンターギャラリー
「大エルミタージュ美術館展 オールドマスター西洋絵画の巨匠たち」
3/18~6/18



「美の百科事典」とも称されるエルミタージュ美術館のコレクションが、六本木の森アーツセンターギャラリーへやって来ました。


ウィギリウス・エリクセン「戴冠式のローブを着たエカテリーナ2世の肖像」 1760年代
©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18


タイトルの「オールドマスター」が全てを表します。実際のところ、エルミタージュ展は以前から度々開催。最近では2012年(国立新美術館)にも行われました。その時は「西欧絵画400年」と題し、ルネサンスからバロック、ロココ、印象派を経由して、マティスなどの20世紀絵画までを網羅していました。

一方で今回はどうでしょうか。起点は同じくルネサンスです。ただし終点は1点を除いて18世紀絵画でした。だからこそオールドマスターです。印象派以降の作品はありません。

冒頭はイタリア絵画です。「聖チェチリア」に惹かれました。描いたのはカルロ・ドルチ。国立西洋美術館の「悲しみの聖母」(常設展示)でもお馴染みの画家です。音楽家の守護聖人をチェンバロを弾く女性として表しています。ドレスの質感も美しい。「悲しみの聖母」では底抜けの青が特徴的ですが、「聖チェチリア」では深い緑色を帯びたドレスが殊更に魅惑的でした。表情はまさしく優美です。細くか弱い指先で鍵盤を叩いています。


ティツィアーノ・ヴェチェッリオ「羽飾りのある帽子をかぶった若い女性の肖像」 1538年
©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18


ティツィアーノ・ヴェチェッリオの「羽飾りのある帽子をかぶった若い女性の肖像」も優品です。モデルはかのウルビーノのヴィーナスに近いことから、ティツィアーノの恋人ではないかと指摘されています。両手で羽織るのはビロードのコートです。右手でコートを胸の辺りに寄せています。白いダチョウの羽根飾りをつけた帽子もゴージャスでした。いささか無表情です。緊張しているのでしょうか。口をやや強めに閉じています。

ポンペオ・ジローラモ・バトーニの「聖家族」も目を引きました。中央が聖母です。幼きキリスト同様、真っ白な肌を見せています。光も当たっていて輝かしい。聖アンナはキリストに手を差し出し、洗礼者ヨハネがキリストを見据えています。窓のそばで書物を手にするのが父ヨセフです。思いの外に険しい表情をしています。バトーニは「イタリア最後のオールドマスター」(解説より)とも呼ばれているそうです。18世紀のローマで活動しました。


レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン「運命を悟るハマン」 1660年代前半
©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18


続くのはオランダ絵画です。まず目立つのがレンブラントの「運命を悟るハマン」でした。胸に手を当て、さも気落ちしたように立つのがハマンです。足元がふらついているのか、よろけているようにも見えます。運命とは死です。王の右腕として活動しながらも、不興をかい、極刑を言い渡されます。背後にはレンブラントならではの深い闇が広がります。ターバンや衣服からは重厚感も感じられました。


ピーテル・デ・ホーホ「女主人とバケツを持つ女中」 1661-1663年頃
©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18


オランダでは、ホーホ、ヤン・ステーン、メツーにも優品が揃います。ピーテル・デ・ホーホの「女主人とバケツを持つ女中」はどうでしょうか。戸外の一コマ、なんら変哲のない日常の風景を描いています。真ん中に座るのが女主人です。そこにやや緊張した面持ちの女性がバケツを抱えて来ています。中には魚が入っていました。夕食のための食材かもしれません。壁の煉瓦の質感も巧みです。扉の留め金は錆び付いているようにも見えます。手前の床の碁盤の目から、半開きの格子戸を超え、木立の向こうには別の邸宅が開けています。遠近感のある空間表現にも隙がありません。

フランドル絵画では、ルーベンス、ヨルダーンスらに加え、テニールス(2世)が充実していました。彼だけで5点です。出展画家中、最も多くの作品が展示されています。


ダーフィット・テニールス(2世)「厨房」 1646年
©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18


うち最大なのが「厨房」でした。広い厨房です。多くの人が忙しなく食材を持ち、竃では火を焚べています。しかしながら主役は彼らではありません。ともかく目立つのは犬です。何故に厨房にこれほどの犬を描いたのでしょうか。テニールスの関心は明らかに犬などの動物にあります。


フランシスコ・デ・スルバラン「聖母マリアの少女時代」 1660年頃
©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18


スペイン絵画は少数ながらも、フランシスコ・デ・スルバランの「聖母マリアの少女時代」が絶品でした。まだ幼いマリアが天を仰いで祈りを捧げています。6〜7歳ほどでしょうか。しかしながら眼差しは真剣そのものです。その敬虔な祈りが伝わってきます。刺繍の最中なのでしょう。手元には白い布に糸も垣間見えました。対比的なのが赤い衣服です。のちのキリストの死を暗示しています。これほど優美なマリアもほかになかなかありません。

展示中で一番多くを占めるのがフランス絵画でした。プッサンにシャルダン、ロランにユベール・ロベールなど、20点超の作品が揃っていました。


ルカス・クラーナハ「林檎の木の下の聖母子」 1530年頃
©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18


チラシ表紙も飾るクラーナハの「林檎の木の下の聖母子」はラストでの展示です。幼きキリストは、右手でパンを、左手でリンゴを握っています。そして聖母の後ろにはリンゴがたわわに実っていました。むろん原罪、そしてキリストの贖罪のシンボルです。聖母のブロンドの髪が鮮やかに浮かび上がります。背後に見えるのはドナウ川だそうです。木々の生い茂る緻密な風景もクラーナハならではの表現と言えるかもしれません。

出展は85点。全てエルミタージュ美術館の常設で展示されている作品ばかりです。派手さこそありませんが、さすがに粒は揃っています。一定の充足感はありました。

なお現在、映画「エルミタージュ美術館 美を守る宮殿」も公開中です。



「エルミタージュ美術館 美を守る宮殿」(@hermitage0429
http://www.finefilms.co.jp/hermitage/

同美術館の歴史、ないしコレクションに迫った良質のドキュメンタリーです。展覧会と映画をあわせて観覧するのも良いのではないでしょうか。

GW中の祝日に出かけてきました。

同じく森タワー内で開催中のマーベル展には長蛇の列が出来ていましたが、エルミタージュ展は行列とは無縁です。スムーズに入場出来ました。


バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「幼子イエスと洗礼者聖ヨハネ」 1660年頃
©The State Hermitage Museum, St Petersburg, 2017-18


場内は一部に通路状のスペースがあり、やや混み合うこともありましたが、どの作品も概ね好きなペースで見られました。

[大エルミタージュ美術館展 オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち 巡回予定]
愛知県美術館:2017年7月1日(土)~9月18日(月・祝)
兵庫県立美術館:2017年10月3日(火)~2018年1月14日(日)


6月18日まで開催されています。

「大エルミタージュ美術館展 オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち」@Dai_hermitage) 森アーツセンターギャラリー
会期:3月18日(土)~6月18日(日)
休館:5月15日(月)
時間:10:00~20:00
 *但し火曜日は17時まで。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1600(1400)円、大学生1300(1100)円、高校・中学生800(600)円。小学生以下無料。
 *( )内は15名以上の団体料金
住所:港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
交通:東京メトロ日比谷線六本木駅1C出口徒歩5分(コンコースにて直結)。都営地下鉄大江戸線六本木駅3出口徒歩7分。
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