「山口晃展」 練馬区立美術館

練馬区立美術館練馬区貫井1-36-16
「山口晃展 今度は武者絵だ!」
8/17-9/17(会期終了)



すっかり感想を書きそびれていましたが、展覧会はもちろん見終えています。練馬区立美術館で開催されていた山口晃の大個展へ行ってきました。



以前、上野の森美術館での二人展では、会田誠の『毒』にやや侵されていたような印象も受けた山口でしたが、ここでは本領発揮と言わんばかりに、勇ましく、またシャープな「武者絵」でじっくりと楽しませてくれました。もちろん一番に見るべきなのは二階展示室での超大作「続・無残ノ介」(2007)かと思いますが、一般的に知られる山口の画業を知るには、一階展示室の「江戸しぐさ」の広告の映像や、成田空港でその威容を誇る「成田国際空港 飛行機百珍画」(2005)の原画がぴったりでしょう。(順路としては一階から二階の方が良かったような気もします。トリは「無残ノ介」がベストです。)細部にまで神経の通った精緻極まりない描写はもちろんのこと、ジャグジー付きの大浴場や純和風の日本庭園をのせた飛行機、それにゴンドラの駆ける三越本店など、どこか空想世界的な面白さを見る山口作品の魅力を存分に味わえました。思わず、絵の中へと入って遊んでみたいような作品ばかりです。



メカと人間、それに動物を組み合わせたモチーフも健在です。「厩図2004」(2004)では、バイクと馬が一体化した『バイク馬』が、昭和、江戸、もしくはそれ以前の時代の交錯したような日本家屋の厩に繋がれて出番を待っています。雲霞の漂う厩の光景はまさに大和絵風ですが、例えばクーラーの室外機の上に置かれた植木の細やかでリアルな描写など、そのデッサンだけ見ても唸らせるものがありました。ちなみにこの何でも描けてしまうという高い表現力は、「日清日露戦争戦役捷畫」(2005)の原画を見るだけでもひしひしと伝わってきます。「ずずしろ日記」風の軽妙洒脱なタッチと、殆ど細密画ともいえる領域にまで細部へ踏み込んだ軍艦などが同居しているのです。思わず虫眼鏡でもかざして見たくなるほどでした。

入口すぐ横の大きな階段に、かのトップランナーで描かれた大作が掲げられていました。美術館の箱自体がやや無機質過ぎる嫌いもありますが、(一度、『借景』にもこだわった場で山口作品を見てみたいと思います。)まずは期待通りの内容で十分に楽しむことが出来ました。あとは、10月中旬に完成予定という図録の完成を気長に待つだけです。ちなみに図録の予約は今も行われています。一冊、破格の1000円です。お問い合わせは美術館までどうぞ。(9/1)
コメント ( 10 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (あおひー)
2007-09-29 00:56:06
こんばんわ。
最終日の朝から2回目に、行ってきました。
「続・無残ノ助」は完成したのが見られて、満足でした。なによりも通して、ストーリーを終えたので物語としても楽しめました。
なんとか、今後も区の美術館でこういった現代美術の作家さんの個展をやって頂きたいものですね~。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2007-09-29 19:32:28
あおひーさんこんばんは。
早速のコメントをありがとうございます。

>「続・無残ノ助」は完成したのが見られて、満足でした。なによりも通して、ストーリーを終えたので物語としても楽しめました。

そうですよね。はじめからゆっくり追ってみると相当の見応えがありました。
本か何かかにして欲しいなと思うくらいです。

>今後も区の美術館でこういった現代美術の作家さんの個展をやって頂きたいものです

一度、町田さんの大個展を見たいですね。是非お願いしたいです。
 
 
 
Unknown (さちえ)
2007-09-30 21:27:54
練馬、山口さんの個展がなければ一生行く事はなかったと思います。
3回行きましたが、がんばって通ったかいがある素敵な展覧会でした。
「無惨の介」が図録に完全収録されるか気になる所ですが、これだけで出版してもらいたいほど好きな作品です。
年内の山口さんの展覧会はこれで最後だそうです。
なんだかさみしいなー
 
 
 
Unknown (Tak)
2007-09-30 22:34:42
こんばんは。
横レスです。
>一度、町田さんの大個展を見たいですね。
同意。
学芸員さんお願い!!
 
 
 
Unknown (はろるど)
2007-09-30 23:28:11
@さちえさん

こんばんは。コメントありがとうございます。

>「無惨の介」が図録に完全収録されるか気になる所ですが、これだけで出版してもらいたいほど好きな作品です。

そうですよね。お値段が安すぎて少し心配になってしまいます。是非収録していただきたいところではありますが…。

>年内の山口さんの展覧会はこれで最後だそうです。
なんだかさみしいなー

今年のご活躍は本当に素晴らしかったですよね。
しばしお休みになられてまた次回とでもいうところでしょうか。楽しみです。


@Takさん

>同意。学芸員さんお願い!!

見たいですよね。西村画廊さんにお願いして…。
 
 
 
Unknown (oki)
2007-10-14 21:50:07
こんばんは。
今日また招待チケットで練馬区立美術館に行ってきました。
彫刻の展覧会で、実は山口さんの図録ができていたら買おうという目的もあったのですが、まだできていないのか、予約者限定なのか美術館に置いてありませんでした。
僕は山口さんの展覧会の前にやった展覧会「それでも人は「境界」を超えるー夫婦で集めた愛しの現代美術」の図録が気にとまり購入してしまいました!

さて、上野の森「シャガール」、損保ジャパン「ベルト・モリゾ」のチケットがご用意できます。
またメールでおっしゃってください。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2007-10-15 00:23:46
okiさんこんばんは。
今の練馬ではなかなか渋い展示をやっているようですね。図録はもうそろそろだと思います。以前、問い合わせたところ出来次第、会場にも置くと言っておられましたので…。

>さて、上野の森「シャガール」、損保ジャパン「ベルト・モリゾ」のチケットがご用意できます。またメールでおっしゃってください。

いつもありがとうございます。
 
 
 
借景 (秋映)
2007-11-13 23:54:39
ずっと気になっていたのですが、
【一度、『借景』にもこだわった……】と書かれていますが、山口晃さんの作品『借景』にかけていらっしゃるのでしょうか。
私、2度目は借景の見方を知りたくて、それだけのために行きました。
遅すぎるレスで失礼しました。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2007-11-14 01:05:18
秋映さんこんばんは。

>山口晃さんの作品『借景』にかけていらっしゃるのでしょうか。

言葉が足りませんでした…。山口さんの個々の作品を指していったのではありません。借景的とすれば良かったかもしれませんね。展示空間が作品の借景になるような場所で見られればと思った次第です。

>遅すぎるレスで失礼しました。

いえいえこちらこそ失礼しました。また何かお気づきの点があれば宜しくお願いします。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2007-11-16 12:42:33
秋映さん、再度ご丁寧なコメントをありがとうございました。
駄文で恐縮ですが、いつもお読み下さり本当に嬉しいです。
またICHIKENTENでのご紹介もありがとうございました。
私は今年初めて拝見したのですが、
昨年はブースさんも出品されていたのですね。見たかったです…。

また是非遊びにいらして下さい。コメントお待ちしております。
(秋映さんのコメントはご指示通りにさせていただきました。)
 
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