「藝『大』コレクション パンドラの箱が開いた」 東京藝術大学大学美術館

東京藝術大学大学美術館
「藝『大』コレクション パンドラの箱が開いた」 
第1期:7/11~8/6、第2期:8/11~9/10



かつてないほどに大規模なコレクション展かもしれません。東京藝術大学大学美術館で開催中の「藝『大』コレクション パンドラの箱が開いた」を見てきました。

はじまりは名品選です。まず目を引くのが「月光菩薩坐像」でした。奈良時代の作で、胴の部分が失われためか、どこか痛々しくも見える仏像です。元は高山寺薬師如来坐像の脇侍として伝来し、藝大の開校時に収蔵されました。最古参のコレクションの一つでもあります。


国宝「絵因果経」(部分) 奈良時代・8世紀 *第1期展示

さらに飛鳥時代の「蜀江錦」や、中国の後漢時代の「金錯狩猟文銅筒」などの優品が続きます。特に銅筒に惹かれました。狩猟の場面を極めて流麗な象嵌で表現しています。その精緻な模様を肉眼で確認するのが困難なほどでした。


重要文化財「浄瑠璃寺吉祥天厨子絵」 鎌倉時代・13世紀

作品は必ずしも年代順ではありません。例えば鎌倉時代の「浄瑠璃寺吉祥天厨子絵」の隣には、狩野芳崖の「悲母観音」が展示されています。また同じく鎌倉の「弥勒来迎図」には、狩野永徳の「唐子遊図」が並んでいました。前者は来迎の場面、後者は中国の子どもたちの遊ぶ様子を描いた作品で、テーマもモチーフもまるで異なりますが、群像的な人物表現が、奇妙にも似たように思えてなりません。コレクション同士の意外な取り合わせ、ないし組み合わせも見どころと言えそうです。


重要文化財 狩野芳崖「悲母観音」 明治21(1888)年 *第1期展示

もう一つ、大きな特徴として挙げられるのが構成です。とするのも、単に名品をピックアップするだけでなく、幾つかのテーマを設定することで、これまでの藝大の歴史を紹介するに留まらず、現在や未来へ向けた活動にも目を向けています。


「平櫛田中コレクション」昭和期の展示風景 *通期展示

その一つが平櫛田中コレクションでした。彫刻家の平櫛田中はかつて藝大で教鞭をとり、のちに自作と収集した彫刻を、学生の参考のために大学へ寄贈しました。


和田英作「渡頭の夕暮」 明治30(1897)年 *通期展示

また卒業制作に焦点を当てているのも興味深いところでした。いわば学生時の作品とはいえ、そこは藝大、錚々たるメンバーです。横山大観にはじまり、山口蓬春、高山辰雄、和田英作、松田権六、板谷波山らの作品が並んでいます。中でも高山辰雄の「砂丘」は実に魅惑的で、画家の傑作としても捉えて良いかもしれません。また板谷波山の卒業制作が木彫であるのには驚きました。作家は元は彫刻科の出身で、卒業時には浮世絵風の美人像を作っています。のちに陶芸家として活動しました。

考現学で知られる今和次郎も藝大でデッサンを学び、卒業制作に草花や風景の写生を元にしたドローイングを描きました。モチーフを自由に重ねては新たなイメージを生み出しています。と、その隣の作品を見て驚きました。町田美菜穂の「首都っ娘」です。作家は近年に藝大のデザインの修士課程を卒業し、首都高の路線の形状を少女に見立てたキャラクターを卒業制作に提示しました。

これが大変な力作です。それこそ考現学ならぬ、首都高を徹底的にリサーチし、各路線の個性なり特徴を踏まえた上で、キャラクターに仕立て上げています。しかもフィギュア、パネル、動画と展開も幅広い。首都高の公式のキャラに採用されてもおかしくありません。

卒業時に自画像の提出するのも藝大の伝統です。前身の東京美術学校を含めると、現在、収蔵されている自画像は6000点にも及びます。うち1950年代から1980年代までの作家の自画像に着目したのが、「現代作家の若き日の自画像」でした。


山口晃「自画像」 平成6(1994)年 *通期展示

これがまた実力派揃いです。現在、第一線で活動する、山口晃や村上隆、さらに会田誠、宮島達男、川俣正、千住博、松井冬子などの自画像が一堂に会していました。

しかし一口に自画像といえども、その表現は実に多彩で、一般的な自画像のイメージを逸脱した作品も少なくありません。例えば渡辺篤は83個もの携帯電話のサンプルを用い、液晶画面に作家自身の画像をはめ込んでいます。さらに会田誠は古びた新潮文庫を並べ、川俣正に至っては丸めたゴムシートを自画像として提出しています。

教育機関である藝大には、先人の作品を真似ることで、技術を学ぶために作られた模写や模造も数多く存在します。さらに日頃、収蔵庫に眠りがちなブロンズのための石膏原型も展示し、彫刻家らがいかに立体作品を作り上げるのかのプロセスについても紹介しています。これらのあまり日の目の見ない作品、資料の展示も、見どころの一つかもしれません。

作品の保存だけでなく修復も藝大の大きな仕事です。実際、過去10年間に250件もの作品を修復したそうです。


青木繁「黄泉比良坂」 明治36(1903)年 *第1期展示

そのうちの1つが青木繁の「黄泉比良坂」でした。第一回の白馬会の受賞作で、古事記の一場面をパステルや水彩で表現しています。エメラルドグリーンに染まる色彩も幻想的ですが、折れた紙などに際して修正が施されました。修復後、初の公開でもあります。

なお現在、上村松園の「序の舞」が修復作業中です。来年春の公開を予定しているそうです。


「藤田嗣治資料」 *通期展示

さらに藤田嗣治の資料やガラス乾板などの古写真なども網羅し、実に多様な切り口をもってコレクションを提示しています。一捻りも二捻りもある展覧会です。とても興味深く見ることが出来ました。


最後に展示替えの情報です。2つで1つの展覧会です。会期中、前後期で大半の作品が入れ替わります。

「藝『大』コレクション パンドラの箱が開いた」出品リスト(PDF)
第1期:2017年7月11日(火)~8月6日(日)
第2期:2017年8月11日(金)~9月10日(日)


伊藤若冲「鯉図」 江戸時代・18世紀 *第2期展示

第1期の会期は8月6日までと迫っています。これから前後期を追いかける方は、この週末がラストチャンスとなりそうです。



パンドラの箱は2回開きます。9月10日まで開催されています。

「東京藝術大学創立130周年記念特別展 藝『大』コレクション パンドラの箱が開いた」 東京藝術大学大学美術館
会期::7月11日(火)~9月10日(日)
休館:月曜日。但し7月17日、8月14日は開館。7月18日は休館。
時間:10:00~17:00 
 *7月11日(火)は午後6時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般800(600)円、高校・大学生500(400)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *前後期観覧可能な「2回チケット」1300円あり。数量限定。
住所:台東区上野公園12-8
交通:JR線上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ千代田線根津駅より徒歩10分。京成上野駅、東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅より徒歩15分。
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