「特別展 妙心寺」 東京国立博物館(その1・速報『江戸絵画』)

東京国立博物館・平成館(台東区上野公園13-9
「特別展 妙心寺 - 京が伝える禅の名宝 - 」
1/20-3/1



本日より上野の国立博物館で始まっています。妙心寺展の内覧会に参加してきました。



本来の鑑賞の在り方にはそぐわないかもしれませんが、まさかビジュアルとして見るだけでも十分に楽しめるとは思いませんでした。まずは以下、展示後半部に紹介された主に江戸時代の屏風、襖絵をご覧下さい。禅寺を紹介する難解な展示であろうと構えていると、良い意味で思いっきり期待を裏切られます。『正統』から『奇想』まで、この時代を代表する絵師たちの作品がこれ見よがしに紹介されていました。

*写真撮影、掲載については主催者の許可をいただいています。



曾我蕭白「福島正則像」(前期)
妙心寺に縁のある戦国武将の肖像もいくつか展示されていますが、その白眉とも言えるのが奇想のトップバッター、曾我蕭白の作品です。画像では少し分かり難い点がありますが、半ばデフォルメされた形相には鬼気迫るものがあります。





狩野元信「四季花鳥図」(前期)
全十二面にも及ぶ元信渾身の襖絵です。墨の濃淡にて、四季折々に彩られる花鳥の様子が軽妙に表されています。



長谷川等伯「枯木猿猴図」(前期)
相国寺の「竹林猿猴図」との関連も指摘されています。木に上ってじゃれ合う親子猿がほのぼのとした様で描かれていました。



海北友松「琴棋書画図屏風」(前期)
古来より尊ばれた琴、棋、書、画の四芸を示します。



狩野山楽「文王呂尚・商山四皓図屏風」(前期)
呂尚とは太公望のことです。(ご多分に漏れず、釣り糸を垂れています。)ちょうど文王が彼を引き立てるためにやって来たところです。



狩野山楽「松図」(前期)
『身悶えの松』と命名しましょう。隆々と迫り出して見る者を威嚇します。永徳の「檜図屏風」の烈しさにも匹敵し得る山楽の「松図」です。



狩野山楽「龍虎図屏風」(前期)
大きな口を開けて吠える虎が龍に対峙します。ちらし表紙にも飾られた「龍虎図屏風」です。剥き出しの牙に今にも食いちぎられてしまうかのような迫力が感じられました。

(クリックで拡大します。この迫力を是非!)

狩野山雪「老梅図襖」(通期)
これ一点でもおそらくは見るべき展示ではないでしょうか。メトロポリタンより奇想の大傑作がやってきました。あるべき姿を放棄して、半ば化石となりつつ老梅が、臨終の瞬間を迎えたかのように毒気を吐きながら身体を揺らします。



狩野探幽「山水図襖」(前後期2面ずつ)
雪舟の伝統すら思わせる厳格さをたたえています。探幽の「山水図」です。

絵画作品の主役は紛れもなく狩野山楽、山雪親子です。上記メトロポリタンの「老梅図」は当然のこと、東京で近年、二者の大作襖、屏風絵が今回ほどのスケールで展示されたことはあったのでしょうか。妙心寺展、失礼ながらもタイトルだけでは内実を大いに見誤ります。

また一つ、上の屏風群でとりわけ興味深い点は、各々のサイズ、特に高さです。妙心寺に設置された屏風作品は、通常一般的なそれと比べ、全て縦が約25センチほど長くなっています。つまり高さは約2メートル近くにまで達しているのです。道理で迫力があるわけでした。



途中一回の展示替えを挟みます。上記の作品は老梅図を除き、全て2月8日まで、前期期間中のみの展示です。

前期展示:1/20~2/8、後期展示:2/10~3/1出品リスト

東博というと既にどこの広告をとっても阿修羅ばかりですが、その影に隠れてしまうにはあまりにも勿体ない展覧会です。まずは一回目、前期内の早めのご観覧をおすすめします。

傑作170点、特別展「妙心寺」開幕(読売新聞)

なお江戸絵画以外の妙心寺所蔵の文物をはじめ、同寺の高僧であった白隠の展示については、また写真を交えて別個のエントリでご紹介します。

「特別展 妙心寺」 東京国立博物館(その2・展示全般)

*関連エントリ
ハンディサイズな障壁画(「寺院別障壁画の見かた」/宮元健次著):妙心寺の障壁画も一部掲載されています。
コメント ( 9 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
Unknown (oki)
2009-01-20 22:13:52
早速行かれましたか!
僕も招待券一枚あるので早くいかないと。
白隠の絵もいろいろあるのですか?
楽しみです!
おっしゃるように世間はピンク色の阿修羅のポスターに染まってますね、朝日と読売新聞の思惑があるのでしょうが。
さて「美術の窓」買われましたか?
今年もいろいろありそうですね。
 
 
 
Unknown (あべまつ)
2009-01-20 22:15:10
こんばんは。

今とらさんの記事にわくわくしてました。
はろるどさんもいってらしたのですね!
山楽の異様な屏風が見られると
今から楽しみです。

八方睨みの龍を息子と見上げてきたことが
思い出されます。
他にも見応えたっぷりありそうですね。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-01-22 01:27:13
@okiさん

こんばんは。早速のコメントを有難うございます。
白隠もそう多くはありませんが、しっかりと紹介されていました。
大きな展示替えを一度挟みますので、前後期の二回行くのがベストかなと思っています。

>世間はピンク色の阿修羅のポスター

どこへ行っても阿修羅ばかりですよね。(自宅最寄り駅にもばっちり掲載されていました。)
あの力の入れようには驚かされます。(一体いくらお金をかけたのかと…。)

美術の窓はこれからです。また記事にします。


@あべまつさん

こんばんは。
速報が少しでもお役に立てたようで嬉しいです。
恥ずかしながら禅の知識はまるでありませんが、
私のような素人にも随分と楽しめる展示に仕上がっていました。
山楽、今年火がつくかもしれませんね。
レビュー、お待ちしております!
 
 
 
Unknown (Tak)
2009-01-22 23:25:22
こんばんは。

楽しかったですね~
また後期も行かねばなりません。
こうして今年も東博詣でが。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-01-24 01:31:44
Takさんこんばんは。先日は有難うございました。

見るべき作品がたくさんありましたよね。
口コミで盛り上がれば良いなと思います。

>東博詣

パスポート一冊では足りません…。
 
 
 
Unknown (ruru)
2009-02-02 23:58:36
阿修羅展の勢いにひっそりした感じかと思いきや、狩野派の迫力ある屏風にやられました。
年頭からなかなか良いものを見た気がします。

>臨終の瞬間を迎えたかのように毒気を
そうか!!さすが、はろるどさんピッタリな言葉です。
もう一度見たくなりました。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-02-03 22:13:59
ruruさんこんばんは。

>迫力ある屏風

同感です。勇壮で華麗な屏風がズラリと揃っていましたね。
本当に東博は阿修羅一色ですが、今回もそれに負けない内容ではなかったかと思います。

>ピッタリな言葉です

ありがとうございます!
そろそろ展示替えですので、もう一度見に行きたいです。
 
 
 
見所多し (mizdesign)
2009-02-04 06:28:45
こんにちは。
山雪の老梅図の独創性、山楽の龍虎図の豪壮さは素晴らしいですね。
さらに和尚さんたちが教えを広めようと工夫を凝らした書や素朴画も楽しめて、見所多し!
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-02-04 20:41:32
mizdesignさんこんばんは。

>老梅図の独創性、山楽の龍虎図の豪壮さは素晴らしい

見事でしたね。この二点だけでも展覧会が成り立ちそうです。

>和尚さんたちが教えを広めようと工夫を凝らした書

白隠も貫禄十分でしたね。
展示替えを見逃さないようにしたいです。
 
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