長谷川等伯 「烏鷺図」 川村記念美術館から

川村記念美術館(佐倉市坂戸631)
常設展示
「長谷川等伯 -烏鷺図- 」

常設展の日本画の展示室で見ることの出来る、長谷川等伯(1593-1610)の「烏鷺図」(1605年以降)です。等伯の晩年の傑作としても名高く、全長約3.5メートルにも及ぶ大きな画面へ鷺と鴉が巧みに配されています。実に雄大で、また伸びやかな大作です。



いづつやさん(いづつやの文化記号)によれば、この作品で「非常に印象深い点」は「水墨画の伝統からすれば異常」であり「新しい解釈」でもあるという左隻の5羽の黒カラスとのことですが、確かに画面を見てまず目に飛び込んで来たのは、この真っ黒なカラスの群れでした。非常に濃い黒にて、まるで黒い紙をベタッと貼付けたかのようにして仕上げられたカラス。背景の淡い、また簡素なタッチにて描かれた松の風情とは正反対の強い存在感です。そして、このカラスの躍動感のある描写も素晴らしい。上から下からと、グルグルと廻って飛び交うカラスは、あたかも餌の奪い合いの最中であるかのように激しく動きます。さらには、松の配された美しい背景も見事です。右手へ向かって水辺が消え行くかのような空間構成は、実に巧みに広がりと奥行き感を与えています。



右隻では、飛んだり羽を休めたりしている12羽の白鷺が、カラスに負けないほど生き生きと描かれていました。ただ、私がこの右隻にて特に惹かれた点は、木の幹から水辺にかけての、筆の流れるような風景描写です。大地から力強く伸びた幹が、大きくうねりながら、葉を振りかざして水辺へと突き刺さる。颯爽と、また流麗とも言える筆のタッチが、これほどに逞しい表現を見せるとは驚きです。画面右上の風に靡いた葉の繊細さと合わせて、簡素な描写にて巧みに場を作り上げる等伯の筆には感心させられました。

等伯の作品は、以前開催された出光美術館の展覧会で初めて見知りましたが、今回の川村でもその魅力をたっぷりと味わうことが出来ました。また、等伯と言えば今、上野の東京国立博物館にて「松林図屏風」が特別に公開されています。こちらは残念ながら私にはその素晴らしさが分からなかったのですが、(再度また挑戦します!)互いに制作時期の近い作品とのことで、見比べるのも興味深いと思います。ちなみに「烏鷺図」は常に公開されているわけではありません。お出向きの際はご確認なさることをおすすめします。
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