「BODY/PLAY/POLITICS」 横浜美術館

横浜美術館
「BODY/PLAY/POLITICS」 
10/1~12/14



身体の生み出すイメージをテーマとした、国内外の6名の現代美術家による展覧会が横浜美術館で行われています。

「椿姫」のヴィオレッタのアリアが鳴り響いていました。インカ・ショニバレMBEの「さようなら、過ぎ去った日々よ」です。同オペラでもとりわけ有名な一曲を黒人の歌手が歌っています。しかしながらアリアはワンフレーズのみ。劇は遅々として進みません。


手前:インカ・ショニバレMBE「蝶を駆るイベジ(双子の神)」 2015年
奥:インカ・ショニバレMBE「さようなら、過ぎ去った日々よ」 2011年


歌手の衣装はアフリカのドレスでした。作家自身もロンドンに生まれ、ナイジェリアで生活。アフリカ更紗はアイデンティティの象徴ながらも、多くをヨーロッパからの輸入品に頼っているそうです。「椿姫」には5つの歴史的絵画の引用がありました。また宙に浮くオブジェ、「蝶を駆るイベジ」はナイジェリアに因んだモチーフです。ヨーロッパとアフリカの文化や歴史の複雑な関係を表現しています。

東南アジアの女性の幽霊であるポンティアナックがモチーフにしていました。イー・イランの「ポンティアナックを思いながら」です。映像は約23分。いずれも長い髪で顔を隠した女性が並んでいます。


イー・イラン「ポンティアナックを思いながら:曇り空でも私の心は晴れ模様」 2016年

モデルは20~30代のマレーシア人です。台本はなし。自由に会話させたそうです。夫との関係や出産ないし、性の話題などが赤裸々に語られます。但し個は特定されません。東南アジアの女性の抱える様々な問題が浮き上がってきます。


アピチャッポン・ウィーラセタクン「炎(扇風機)」 2016年

神々しいまでの迫力でした。アピチャッポン・ウィーラセタクンです。タイトルは「炎(扇風機)」。大きなスクリーンに扇風機が数台、回転しながら燃える様子が映し出されています。バチバチ、あるいはゴウゴウと音を立てては、黄色く眩しい炎をあげていました。その光景自体も美しい。扇風機の風でさらに炎が勢いを増したかと思えば、一方で消えてしまいそうになることもあります。松明を連想しました。扇風機という器械を用いながらも、古代の儀式を前にしているような気にさせられます。


ウダム・チャン・グエン「ヘビの尻尾」 2015年

バイクがホーチミン市内を駆け抜けます。ウダム・チャン・グエンの「ヘビの尻尾」です。集団で力強く走るバイクの編隊。ベトナムでは一般的な原付バイクです。いずれも排気口にカラフルなビニールチューブがついています。走り出すとさも龍のごとくに尾を振り回しました。ダンサーも加わります。街にさらなる色、動き、ないし血が通いました。どこか祝典的です。賑やかな祭りのようでした。


石川竜一「portraits 2013-2016」 2013-2016年

石川竜一は「portraits 2013-2016」において初めて沖縄を含めた日本各地の人々を撮影しました。一人、あるいは二人、何気ない街角でポーズを取る人たち。奇抜なファッションをしていたと思えば、ごく一般的な格好をしている人もいます。舞台はほぼ都市です。しかも雑踏が多い。それぞれにおいてありのままの日常、そして個々の身体そのものが切り取られています。

その奥の2点の連作が秀逸でした。(撮影不可)ともにポートレートです。舞台は石川の出身地である沖縄。より被写体に近しい。コミュニケーションも密です。それゆえでしょうか。何かを訴えかけるような心の内面が滲み出していました。

ラストは田村友一郎です。舞台は横浜。必ずしも全てが現代ではありません。戦中、ないし終戦後の占領下の横浜です。GHQの管轄に入り、アメリカ人がやって来ました。


田村友一郎「裏切りの海」 2016年

中央には3台のビリヤードがあります。アメリカ兵が持ち込んだものかもしれません。うち2台には横浜の地図が記されていました。また港町のバーを模したソファやクリスマスツリーなども置かれています。終戦後の横浜の雰囲気を引き寄せています。


田村友一郎「裏切りの海」 2016年

そこへ三島由紀夫の小説「午後の曳航」や、米兵の肉体に魅せられたという少年の回想、さらには近年に横浜で起きた殺人事件などを交差させています。横浜の肉体を巡る物語。ただし全ての情報は断片的です。それが緩やかに関連し合います。振り返れば世界は「小さな断片」(解説より)ないし出来事で繋がっているということなのかもしれません。


林保次郎「MM21ミレニアム」 2000年

企画展に続くコレクション展が充実していました。かなりの横浜しばりです。名付けて「描かれた横浜」。文字通り、横浜を描いた作品ばかりが展示されています。


石渡江逸「(横浜)柳橋の月」 1931年

中でも石渡江逸の木版が美しい。戦前の横浜の風情を今に伝えています。


手前:熊井恭子「叢生99」 1999年
奥:下村観山「小倉山」 1909年


熊井恭子の「叢生99」越しに見る下村観山の「小倉山」もより映えて見えました。近年に収蔵された作品も少なくありません。

会場内は一部の作品を除いて撮影が可能でした。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの規約の元、SNSなどでも私的に利用が出来ます。

12月14日まで開催されています。

「BODY/PLAY/POLITICS」 横浜美術館@yokobi_tweet
会期:10月1日(土)~12月14日(水)
休館:木曜日。但し8月11日(木・祝)は開館。
時間:10:00~18:00
 *10月28日(金)は20:30まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1500(1400)円、大学・高校生1000(900)円、中学生600(500)円。小学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体。要事前予約。
 *毎週土曜日は高校生以下無料。
 *当日に限り、横浜美術館コレクション展も観覧可。
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
交通:みなとみらい線みなとみらい駅5番出口から徒歩5分。JR線、横浜市営地下鉄線桜木町駅より徒歩約10分。
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