読響定期 「シューマン:交響曲第4番」他 スクロヴァチェフスキ

読売日本交響楽団第494回名曲シリーズ

シューマン 交響曲第4番 作品120
ショスタコーヴィチ 交響曲第10番 作品93

指揮 スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
演奏 読売日本交響楽団

2007/9/25 19:00 サントリーホール2階



芸劇より場所を戻しての読響名曲シリーズから、ミスターSによるシューマンとショスタコーヴィチのプログラムです。全券種、当日券も出ていました。会場の入りは8割弱ほどだったかもしれません。

ともにスクロヴァチェフスキの十八番とする音楽ではないかもしれませんが、彼は二曲とも暗譜にて、まさに早くもオーケストラを手中に収めたかのようにして音楽を手堅くまとめていたと思います。中でも特にシューマンは、非常にエネルギッシュな、明暗の対比に長けた切れ味鋭い演奏です。序奏こそ腰の据えた、弦セクションが緩やかにまとまっていくような重みのある表現でしたが、主部に入ると一転し、終始インテンポのキビキビとしたリズム感にて音楽を上下へ揺らして進めていきます。また総じてティンパニと金管セクションを鳴らし過ぎることのない、幾分、低弦も強調したバランス感のあるシューマンでした。それにしてもスケルツォでの快活さと愉悦感は実に若々しいものです。フィナーレのコーダでも、オケの合奏力を超えたようなスピードで一気呵成に力強く締めていました。そのアクセルの踏み方は、殆ど音楽的快感を誘うほど劇的です。

メインの「10番」は、その曲の持つ半ば『謂れ』、つまりは主観的な解釈に触れない、純粋な音楽的面白さを追求した演奏であったと思います。まさしく軍楽隊をイメージさせるような行進曲ではそのまま勇ましく、また諧謔的とも聴こえるフレーズでは、あえてその感触をそのままさらけ出すかのような表現でストレートに鳴らしていました。率直に申し上げると、私はこの曲をどのように聴いて良いのか分かりませんが、そのような『問い』に対する答えをむしろ出さないアプローチだったと言えるのかもしれません。その点では、例えば彼のブルックナーに聴くような一つの確固としたスタイルが見えてこない、曲への踏み込みの弱い演奏であったとも思いました。小気味良い打楽器群、うねる低弦、抑制的ながらも手堅い金管など、読響自体はとても充実していましたが、どこか物足りなさを感じたのも事実です。

「シューマン:交響曲第1番&第4番/スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ、ザールブリュッケン放送交響楽団」

ところで、改装後のサントリーホールへ行ったのは今回が初めてですが、ホールはある意味で全く変わっていませんでした。全て取り替えたというホールの座席は以前と同じ布地のものが付けられている上、例えばロビー部分にあるお馴染みのシャンデリアや宇治山のオブジェなどもそのままになっています。またむしろその変わらないことを目指したという音響も、いつもながらの重心の低い響きが踏襲されていました。ただもちろん変化した点がないわけでもありません。各所にはスロープが用いられてバリアフリーが計られている他、飲食コーナーやショップのデザインも変更されていました。そして一番、その変化を身近に感じたのは、男性用トイレのスペースです。おそらくは女性用を広げたためであると思いますが、改装前に比べて面積がほぼ半減しています。よって休憩中には行列も出来ていました。月並みですが、トイレはなるべく早めに済ませた方がよさそうです。

最後のフライング気味のブラボーがまた興ざめでした。せめて指揮者がタクトを降ろすまでは待っていたいものです。
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コメント
 
 
 
サントリーホール (さちえ)
2007-09-27 23:19:14
読響、聴きに行きたいのですが、サントリーでの定期が軒並み平日なので難しいんです。
名曲シリーズのプログラムはすごく良さそうですね。
ところでサントリーホールですが、ご想像通り女性用トイレが広くキレイになっていました(笑)
休憩中も行列が長くなる事もなく良かったです。
なんか申し訳ない気が…
NHKホールの音響に慣れている身としては、このホールの重低音の響きの素晴らしさにはいつも感動です。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2007-09-28 00:45:23
さちえさんこんばんは。

>サントリーでの定期が軒並み平日なので難しい

そうですよね…。こればかりはどうしようもありません。
ただ結構、このように当日券が出ていることも多いので、
たまの帰りに少し寄ってしまいます。場所も一丁目駅から近いですしね。

>休憩中も行列が長くなる事もなく良かったです。なんか申し訳ない気が…

いえいえこれまで散々ご迷惑(?)をおかけしておりましたので…。
それにしても係の方の「こちらが行列の最後尾です。」には驚きました。列を作るのに慣れていないせいもありますが…。

>NHKホールの音響に慣れている身としては、このホールの重低音の響きの素晴らしさにはいつも感動

さすがに渋谷と比べるとダブルスコアでこちらの勝ちですよね。
川崎や上野も捨て難いのですが、立地等を考えるとやはりサントリーが一番かもしれません。
 
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