「天地人 直江兼続とその時代」 サントリー美術館

サントリー美術館港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階)
「NHK大河ドラマ特別展 天地人 直江兼続とその時代」
5/30-7/12



現在放送中のNHK大河ドラマ「天地人」に合わせ、直江兼続をはじめとする縁の品々や、桃山文化の文物などを紹介します。(公式HPより引用)サントリー美術館で開催中の「天地人 直江兼続とその時代」へ行ってきました。

構成は以下の通りです。前半にて直江兼続の生涯、また後半部にて同時代の文化を紹介する流れとなっていました。

第一部 直江兼続の生涯

第一章「直江兼続」:後世の創作も多い直江兼続の縁の品を追う。兼続画像など。
第二章「上杉謙信と景勝」:主君景勝、また謙信の品など。太刀、川中島合戦図屏風。
第三章「越後・佐渡の統一と信長・秀吉」:越後を統一した景勝。秀吉の傘下へ。景勝書状、天正大判など。
第四章「直江状と関ヶ原合戦」:家康の上洛要請を拒否した景勝。関ヶ原合戦図、家康画像他。
第五章「上杉氏の米沢移封と大阪冬の陣・夏の陣」:米沢へ移封された上杉。鉄砲、大阪夏の陣図屏風。

第二部 直江兼続の時代と文化

第一章「洛中洛外と近世初期風俗画」:国宝洛中洛外図屏風(上杉本)他、屏風数点。
第二章「学問と教養」:宗書の収集、書写につとめた兼続。
第三章「桃山の能」:秀吉ものめり込んだ能。能面他。
第四章「桃山のくらし」:桃山時代の工芸品。箪笥、長持、椀。
第五章「兼続と茶の湯」:名物を用いず、普通の新作にて点前を行った兼続。黒楽など。



さて今回、とりわけ会期終盤に入った現在においては、大河ドラマを全く知らない(また直江兼続を知らない。)私のような人間にとっても、一度見ておくべき展覧会であるとしても過言ではありません。何故なら、一昨年の京都の回顧展でも話題となった狩野永徳の畢竟の大作、「上杉本洛中洛外図屏風」が出ているからです。どうもドラマとのタイアップが前面に出ているからか、この至宝の公開が今ひとつ目立っていないのが不思議でなりませんが、京都であれほど混雑していた同屏風の前も、私が行った前の土曜はせいぜい5~10名も居れば良いという状況に過ぎませんでした。それにしても上杉本が都内で公開されるのは何年ぶりなのでしょうか。感想は前も触れたことがあるので繰り返しませんが、京都を舞台に繰り広げられる2500名弱の生き生きした人間ドラマを、細密極まりない筆で描いた永徳の至芸には改めて大いに感心させられました。本屏風だけでも一時間は楽しめるのではないでしょうか。久しぶりの再会の喜びもひとしおでした。

永徳ばかりで長くなりました。それでは以下、「洛中洛外図屏風」の他に印象に残った作品を手短かに挙げていきます。

「川中島合戦図屏風」(江戸時代)
入り乱れて戦う武田軍と上杉軍。ちょうど謙信が信玄の本陣へ乗り込もうとするところが描かれているのだろうか。信玄の本陣は燃え、その戦いの激しさを伝えている。

「飯縄権現立像(兜前立)」(室町時代)
狐にのった金色軍神像。謙信所用。不動明王の顔が鳥になっている。エキゾチックな出立ちが興味深い。

「豊臣秀吉画像 伝狩野山楽筆」(桃山時代)
各種伝わる秀吉像のうちの一つ。豊国大明神の神号とともに、秀吉直筆の和歌が添えられている。右に立てられた大きな太刀が印象深い。

「天正大判金」(桃山時代)
縦10センチはあるのだろうか。金色に輝く天正大判が数点展示されていた。

「紺平絹地小紋染胴服」(桃山時代)
小袖の上に羽織るのを胴服と呼ぶ。深い紺地に浮かぶ花模様が美しい。色合いが絶品。

「関ヶ原合戦図屏風」(江戸末期)
右隻に家康、左隻に三成軍を描いた大きな屏風。家康の本陣の後ろに立てかかるのは雲龍図だろうか。悠々と構えている姿が面白い。ちなみにこの作品は幕末期、井伊家が関与して描かれたのだそう。

「洛中洛外図帖 元信印」(桃山時代)
洛中洛外図上杉本周辺の屏風、画帳は本展覧会のハイライト。洛中洛外の様子を画帳形式に仕立てた珍しい作品。清水と五条の様子が描かれていた。ちなみに五条橋に中州のような景色が描かれていたがあれは何だろうか。元信周辺の作とされている。

「日吉山王祇園祭礼図屏風」(室町-桃山時代)
上杉本とも細部描写に共通する性格があるとされる屏風。右隻に近江の日吉山王祭の船渡御、左隻に京都祇園祭の様子が描かれている。雲霞越しに覗く琵琶湖の青みも美しい。

「絵替り蒔絵木皿」(桃山-江戸時代)
5枚揃いの風流な小皿。桐紋や萩、ススキと模様も多彩。散らされた金も眩しい。

「黒織部茶碗 美濃窯」(桃山時代)
展示のラストを飾るのは茶道具関連の品々。瀬戸、志野などの並ぶ中で今回引かれたのは織部焼。独特の歪みに見る遊び心が愉しい。

全般的に古文書や出土品が多く、あまり華やかさはありませんが、上杉本の他、各種屏風、刀、小袖、茶碗など、意外と見所も多い展覧会だという印象を受けました。

天地人というとあの「愛の兜」程度しか印象にありませんが、それは放送で用いられたレプリカのみが展示されていました。ちなみに「愛」については異論もあり、必ずしも兼続本人が被っていたとは言えないのだそうです。ドラマとのことで演出もありなのでしょう。



あの大河ドラマ絡みとのことで混雑覚悟でしたが、少なくとも先週の土曜日段階では拍子抜けするほど空いていました。集客には苦戦している気もしないではありませんが、このペースなら洛中洛外図屏風(会期最終日まで公開。)も余分なストレスなく楽しめるのではないでしょうか。

7月12日までの開催です。
コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )
« 「大島梢 - 図... 「ゴーギャン... »
 
コメント
 
 
 
Unknown (すぴか)
2009-07-04 09:26:49
こんにちは。
《天地人》2回も見てきました、面白かったです。
でもきちんと書けなかったので、こちらを拝見し
いろいろ思い出しています。ずい分たくさん
出ていたのですね。ありがとうございました。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-07-04 09:52:41
すぴかさんこんばんは。

>2回

屏風の展示替えもありますし、何度か楽しめる展覧会かもしれませんね。
永徳には改めてノックアウトされました。
 
 
 
Unknown (noel)
2009-07-05 20:00:36
昨日、両国の後こちらに行ったのですが、期待以上に楽しめました。(入り口付近での音楽には辟易でしたが...) 上杉本の前だけ少し人だかりでしたが、それでも余裕で見れたので満足です。あのドラマ、もう少し見甲斐があったらいいんですけどね(苦笑)
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-07-05 21:27:43
noelさんこんばんは。昨日はありがとうございました。

>上杉本の前だけ少し人だかりでしたが、それでも余裕で見れたので満足です

やはりそれ目当てで行かれた方も多かったのかもしれませんね。
京都が凄まじい混雑だったので、
今回こうした形で見られて良かったと思いました。

>見甲斐

何でも噂によると内容が…(自粛)だとか。
ただ視聴率は良いそうですね…。
 
 
 
Unknown (遊行七恵)
2009-07-06 12:50:45
こんにちは
上杉本をじっくり見るために出かけたようなわたしです(笑)。なにしろ永徳展では「軍勢雲霞の如く候」状態でしたから。
色々見たいキャラや情景も全部確認できて、満足です。やっぱりこういうものは時間をかけて凝視する、と言うのが大事ですね。
しかしツマブキ君は可愛いですが、ドラマは見るのが疲れるので、今どうなっているのかすら・・・
(野球ある限りは、何も見ませんが)
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-07-06 22:41:14
遊行さんこんばんは。
やはり上杉本をお目当てでしたか。不思議と空いているのでじっくりと楽しめますよね。仰る通り、時間をかけてこそ価値の感じる作品だと思いました。

>ドラマは見るのが疲れるので、今どうなっているのかすら・・・

この展示を機に見ようかなとは思ったのですが、
やはり習慣とは怖いものです。
日曜8時にはPCに向かってブログをやっておりました…。
 
 
 
Unknown (せいな)
2009-07-08 16:48:28
上杉本目当てで本日再訪してきました。
やはり近くで観ると素晴らしいですね。
何時間でもいられそうです。

しかし息子は琳派のほうが好きだそうで
あまりお好みではなかったそうです。。。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-07-08 22:00:31
せいなさんこんばんは。

>何時間

今回は作品との距離も近く、また混雑も然程ではなかったので、
本当に存分に楽しめますよね。
上杉本、次はいつ東京で公開されるかと考えると、
やはり見逃せない展示だと思います。

>琳派のほうが好き

琳派ファンとしては心強いです!
 
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。