「杉本博司 漏光」 ギャラリー小柳

ギャラリー小柳中央区銀座1-7-5 小柳ビル8階)
「杉本博司 漏光」
2007/12/6-2008/1/12



昨年もちょうどこの時期に杉本の個展が開催されていました。ギャラリー小柳での「漏光」と名付けられた展覧会です。



正面奥の小部屋とメインのスペースに展示されているのは、杉本の写真よりお馴染みでもあるTheatersシリーズ計4点ですが、今回はそれとも関連する、一種のインスタレーションともいえる光を用いた作品が「漏光」の意味するところを明らかにしています。その場所は仕切り壁の向こうの暗室です。約30センチ四方の白い板状の物体が全91点、それこそ映画館のスクリーンの如く長方形にズラリと並んでいます。それが点滅する鋭い光を浴びながら、仄かな色と光の残像を残して美しく佇んでいるのです。

上にて板状とも記した個々のオブジェは、実際は杉本のTheatersシリーズの写真集の一冊でした。これらはかの森美術展での大個展の際にも出ていた作品そのものですが、それが特殊な印刷技術によって一般には不可能な「闇の中の淡い染み」のような色と光を表現しています。(また本には夜光塗料が塗り込まれています。)パッと明るくなった時はまさに映画館のスクリーンの何も映らない状態、つまり例えば上映後の現実に戻る、「社会的な意識に目覚める」(*)ような感触を、そして光の残像が滲み、また漏れている時にはその映画にのめり込んで「参加」(*)しているような状態を呼び覚ましてもきます。Theatersシリーズにおける白銀のスクリーンの意味が、そのままの静謐さを保ちながら時間を短縮させて動的に示されている作品なのかもしれません。

ちなみにこのインスタレーションを構成する各写真集は、それぞれエディションをつけられて販売されています。もちろんそれなりの価格がついているわけですが、私が出向いた際には既に結構な数にシールが貼られていました。この展示を終えてしまえば、もう二度とこのスクリーンを構成することはないという、まさしく一期一会の作品ということのようです。

年明けの12日まで開催されています。(12/8)



*展覧会リーフレットより。「苔のむすまで」から。
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