「奈良・斑鳩史跡・アート紀行 - 薬師寺再訪と学園前、そしてならまち」(Vol.1) 2008/6

奈良博の「法隆寺金堂展」にも合わせ、太子ゆかりの法隆寺、または奈良県内の史跡、美術館等をいくつか見学してきました。以下、その顛末記です。宜しければおつきあい下さい。

行程
1日目 東京〜西ノ京「薬師寺」→学園前「松伯美術館・中野美術館」→奈良市内「興福寺(国宝館)」〜市内泊
2日目 奈良〜法隆寺→斑鳩界隈散策「法隆寺・法輪寺・法起寺」→奈良市内「法隆寺金堂展@奈良国立博物館」〜帰京

  

一応、法隆寺金堂展目当てということで、メインは2日目の斑鳩と奈良博の「太子ツアー」にありましたが、まず奈良について真っ先に向かったのは西ノ京の薬師寺でした。もちろん理由はただ一つ。東博でのお出ましを終え、つい先週の木曜日に戻られたばかりだという日光・月光菩薩像に再度お目にかかるためです。雨のぱらつく中、駅より小径を抜けるとそこはもうすぐ薬師寺。高名な観光地ながら幸いにも人出が少なく、朱塗りの真新しい伽藍と古の東塔が時を超えて相対する様をじっくり楽しむことが出来ました。それにしてもここに来ると、国の形を作らんとする天武朝の進取に満ちた気概を感じるような気がするのは私だけでしょうか。凛とした、シンメトリーで整った空間が気持ちを引き締めてくれます。まるで宮殿のようです。

   

上の写真は大講堂の外より撮影しました。当然ながらご本尊を中心に、右に日光、そして左に月光の両菩薩様が鎮座しています。東博ではその大きさにまず圧倒されたものですが、ここで接するとそれほどでもなく、むしろ体のしなやかなラインも緩やかに、実に落ち着いて見えるのが不思議でなりません。やはりあるべき場所にあるのが本来の姿なのでしょう。ちなみに補修中だった光背は、一部欠落していた部分などに少し手を加えたのだそうです。(肉眼で確認するのは困難です。)

   

一礼をすませ、回廊から左手へ廻ると東院堂が見えてきました。こちらのご本尊は言うまでもなくかの聖観音菩薩です。東博ではその威厳な姿が印象的だった同菩薩像ですが、ここではその時よりも優美さが際立っているように見えます。鎌倉期の逞しい四天王を従えた姿は、まるで名家の侍の貴公子のような力強さと気品をたたえていました。

ちょうどお昼時になったのでお腹が空いてきました。薬師寺前にあるお茶屋風のそば屋にて一休みです。注文したのは、ごく一般的な山菜うどんに奈良と言えば定番の柿の葉寿司。久々の関西だしで食べるうどんはなかなか美味でした。やはりうどんはこのだしに尽きます。

  

西ノ京を出た後は学園前へと向かい、遊行さんおすすめの松伯と中野の両美術館を訪れました。(大和文華館は展示内容にあまり関心がわかなかったのでパスしました。)

  

松伯美術館は上村家三代、松園・松篁・淳之の名品を陳列する私設美術館です。学園前駅からはバス必須ですが、本数が相当に多く、ほぼストレスなく美術館のそばまで行くことが出来ます。団地を抜け、突如出現する高級邸宅街を過ぎれば美術館最寄りのバス停に到着です。この間5、6分ほど。大きな池に面して建つのが松伯美術館でした。出窓が印象的な洒落た雰囲気はまさに邸宅風です。(ちなみにこの敷地は、かつて近鉄の名誉会長を務めた佐伯氏の所有だったそうです。松園、松篁の「松」と佐伯の「伯」で松伯です。)地下より吹き抜けの展示空間も開放的で、サンテラス風のエントランスも明るい雰囲気を醸し出していました。展示についてはまた別エントリにて触れたいと思います。

次の目的地、中野美術館はちょうど松伯美術館より駅を挟んでの反対側です。バスで学園前へ舞い戻り、その後は歩いて美術館へと向かいます。大和文華館を横目に、蛙股池を過ぎて左に少し折れると見えてくるのが中野美術館です。駅からは約10分ほどでしょうか。館内には誰もいませんでした。

  

こちらも松伯同様の私設美術館ですが、建物はもとより、展示スペースからしても相当にこじんまりとしています。ちょうど山種美術館の半分くらいの広さを想像していただければ良いのではないでしょうか。目の前の池を望む大きな窓が実に印象的です。手狭な空間にうまく水辺の広い空間を取り込むことに成功しています。展示は地元の実業家、中野皖司氏が揃えたという館蔵の洋画、日本画です。出品数はせいぜい20、30点と少なめですが、特に中野氏も愛していたという須田国太郎(5点)など、いくつか見入る作品も揃っていました。ちなみに同館は写真撮影完全が可能です。これは太っ腹です。

   

美術館を切り上た後は、近鉄で奈良へと進みます。法隆寺金堂展は明日にとっておくとして、ここは駅からも近い定番スポット、興福寺の国宝館が目的です。先だって拝見したあおひーさんの記事でも気になっていたところですが、この阿修羅像(画像はハガキを転載しました。)の素晴らしいことと言ったら言葉にもなりません。細身の体よりスラリと伸びる6本の腕は天使の羽のように軽やかで美しく、三面のお顔は険しい表情をしながらも憂いと哀しみをたたえ、また少年のようなあどけなさを見せながら静かな面持ちにて前を見据えていました。どれだけ見ていても飽きない仏像とはまさにこのことをさすのでしょう。ごく普通の陳列ケースに入り、特段の扱いもされているようにも思えませんでしたが、思わず閉館も迫った時間を忘れて見入ってしまいました。ちなみにこの仏像が2010年、他の現存する八部衆像とともに半世紀ぶりに東京で公開されるわけです。(九博にも巡回。)これは待ちきれません。

  

国宝館を観賞するとそろそろ夕食時です。当時の建物こそ残りませんが、不死鳥の如く再建される塔など、藤原氏の権勢を思わせる広大な敷地を抜け、階段を降りて猿沢池を横手に旧市街、通称ならまちの迷路へと彷徨います。既に拝観時間が終っていたものの馬子ファンとしては必見の元興寺の瓦を遠目で見ながら、しばしこの界隈を散策したのちに着いたのが最終目的地、テツさんおすすめの居酒屋「蔵」でした。詳細はテツさんの記事にあたっていただきたいのですが、文字通り蔵を改装した趣きのある佇まいに何とも心くすぐられます。店内は約15名ほど入れば満席になるかと思われるカウンターのみ。入口そばのおでん舟よりゆらめく湯気が食欲をそそります。地酒はあるものの、総じてお酒の種類が少ないのが少々難点ですが、名物のきもやき、そしてボリュームのある鯖寿司と堪能しました。有名な店のようで店内はかなり混雑していましたが、比較的回転も良く、また一人で飲んでいても全然問題がありません。2時間近く焼酎や日本酒を片手に風情を楽しみました。

  

以上が大まかな一日目の行程です。二日目の法隆寺、斑鳩界隈散策、そして奈良博についてはVol.2の記事へ廻したいと思います。

*関連エントリ
「奈良・斑鳩史跡・アート紀行 - 上宮王家の足跡を辿って」 (Vol.2) 2008/6
コメント( 11 )|Trackback( 1 )
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コメント
 
 
 
Unknown (meme)
2008-06-30 22:44:38
エントリー楽しみにしていました。
雑誌のようなタイトルですね。
興味が掻き立てられます。
何と言っても、最後の「蔵」というチョイスが
泣かせます。

 
 
 
Unknown (Tak)
2008-06-30 23:29:17
こんばんは。

待ってました!
メールも旅先からありがとうございました。

日光月光やはりご本尊のおそばが
落ち付くのでしょうね。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2008-07-01 00:57:22
@memeさん

こんばんは。早速のコメントありがとうございます。

>最後の「蔵」というチョイス

相方がこの日の夕食時に別の用事があったもので、(実際はその用事のために奈良へ行ったようなものですが。)
夜は「蔵」で一人晩酌をやっておりました。
独り飲みはあまりやらないので少し寂しかったですが、
お寿司も美味しかったので満足です。お値段もなかなかリーズナブルですね。流行ってます。


@Takさん

こんばんは。
日光月光はとても落ち着いていましたね。
あともう2、300年はここから出たくないと仰ってました。

今度奈良へご一緒した際は「蔵」で一杯やりましょう。
きもやき、美味です。
 
 
 
Unknown (あおひー)
2008-07-01 07:02:16
こんにちわ。
いいな〜、薬師寺は是非、訪れてみたいなと思っています。
日光月光、だいぶ印象が異なるようですね。
最近、ちょっとゆったりスケジュールの旅行に憧れます。
 
 
 
奈良♪ (snow_drop)
2008-07-01 10:32:26
はろるどさん、こんにちは。

わぁ〜 奈良だ〜(^^)

実は私、来週4泊5日で奈良・大和路を旅する予定なのです。
奈良を訪ねるのは中学生の頃の修学旅行以来、初めて。目下、山本勉さんの『仏像のひみつ』なんていう超初心者向けの仏像本などで勉強中です。(^^;;;

旅行二日目と「法隆寺金堂展」の記事も楽しみにしてます。(^^)
 
 
 
Unknown (はろるど)
2008-07-01 21:06:13
@あおひーさん

こんばんは。薬師寺良かったですよ。
6月の中旬に両菩薩像が戻られ、つい先週に再び公開が始まったそうです。タイミングバッチリでした。

>ちょっとゆったりスケジュールの旅行

予定に左右されず、ぶらぶら歩くのが旅行の醍醐味ですよね。
愉しかったです。


@snow_dropさん

こんばんは。コメントありがとうございます。

>来週4泊5日で奈良・大和路を旅する予定

何と!それは素晴らしいですね。4泊ともなれば大概のところは皆廻れてしまうのではないでしょうか。特にどの辺を訪ねられるのでしょうか。羨ましいです。

>山本勉さんの『仏像のひみつ』

私も仏像にハマり出した(?)ので、色々読んでみたいと思います。この本も良さそうですね!
 
 
 
Unknown (遊行七恵)
2008-07-02 12:41:36
こんにちは
奈良を楽しまれているのが目に浮かぶようです!
特に柿の葉寿司がおいしそう〜
そして鯖寿司〜(あとここに大阪のバッテラがくればわたし的には完璧です)

中野は大きなグリッド窓から池を眺めるのがなんとも好きです。
 
 
 
薬師寺の栄華 (mizdesign)
2008-07-02 13:27:02
こんにちは。
薬師三尊像はやはり薬師寺で観てこそですね。
華やいだ現代の再建と、色枯れた過去の遺産の共存が薬師寺の醍醐味。

それにしても現代の再建にかけては、薬師寺は当代随一だと思います。あの華やかな幻像が蘇るような高揚感は、素晴らしいです。過去の歴史の上に、現代の観光及び写経収入での復興を重ね合わせてこそ、薬師寺の栄華は結実すると感じます。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2008-07-02 22:35:46
@遊行さん

こんばんは。コメントありがとうございます。
おかげさまで大和路を満喫することが出来ました。
学園前の二つの美術館も静かでとても良かったです。

>特に柿の葉寿司がおいしそう〜
そして鯖寿司

何だかんだで柿の葉寿司ばかりを食べてました。
帰りの新幹線でも柿の葉をつまんでいたくらいです。

>中野は大きなグリッド窓から池を眺める

素敵ですよね。向かいに見える大和文華館の姿も印象的でした。


@mizdesignさん

こんばんは。

>現代の再建にかけては、薬師寺は当代随一だと思います。

あの清々しさというのか、仰るような高揚感は他にはありませんよね。
西塔も東塔と比べると仕方ない面もあるかもしれませんが、
新旧入り交じっての空間が展開されていて興味深く感じました。
修復された光背を背にした菩薩様の輝きもまた雅やかです。何事もなかったように収まっていました。
 
 
 
Unknown (テツ)
2008-07-06 16:33:14
居酒屋「蔵」、お楽しみいただけたようで、
拙ブログで取り上げたかいがありました。
きも焼き、鯖寿司と名物も多く、
風情ある佇まいの中で、安く飲めるのが良いですね。


阿修羅像には、異形でありながら美しいという、
仏像ならではの魅力を強く感じます。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2008-07-07 12:16:19
テツさんこんにちは。

>居酒屋「蔵」、お楽しみいただけたようで、
拙ブログで取り上げたかい

ご紹介の記事を拝見してからずっと行きたいと思っていましたが、今回ようやく念願が叶って楽しむことが出来ました。外観の佇まいからして趣きがありますが、また中の雰囲気も素晴らしいですね。カウンターに靡くおでん舟の湯気も情緒たっぷりでした。

>きも焼き、鯖寿司と名物

鯖寿司は持ち帰りも出来たのでしょうか。
特大サイズで食べ応えも満点でした。

>阿修羅像

今度東博でどう見えるのか、また楽しみですね。
また話題の展覧会となりそうです!
 
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