「円朝の幽霊画コレクション〜幻の幽霊画展示」 全生庵

全生庵
「円朝の幽霊画コレクション〜幻の幽霊画展示」
8/1〜8/31



幕末明治の落語家、三遊亭円朝の遺愛した幽霊画コレクションが、谷中の全生庵で公開されています。

会場は本堂左手の小さな展示室です。円山応挙、三代歌川広重、谷文一、そして伊藤晴雨や月岡芳年らの手による幽霊画が所狭しと並んでいました。


伊藤晴雨「怪談乳房榎図」

まず一番に挙げたいのが伊藤晴雨の「怪談乳房榎図」です。かつて私も全生庵で初めて作品を見て、その迫真の描写に驚き、凄まじい形相に慄いたものでした。

幽霊が幼子を抱きながら滝壺に現れています。くわっと睨みつけるように目を開き、牙のような歯をむき出しにしながら、笑みを浮かべていました。顔面や腕の部分しかり、解剖学的と呼べる肉体表現が独特です。これほど凄みのある幽霊はほかに存在するのでしょうか。改めて晴雨の特異な画才に感心させられました。


月岡芳年「宿場女郎図」

月岡芳年の「宿場女郎図」も魅惑的です。後ろを振り向いた幽霊が階段上に姿を見せています。素早い描線を重ねた身体には動きがあり、まるで映像のワンシーンを切り取ったかのようでした。対角線を意識した構図も鮮やかではないでしょうか。センスのある作品でした。

このところ再評価の機運も高まる渡辺省亭にも一枚、幽霊画がありました。「幽女図」です。火鉢のそばで伏せる幽女を表しています。鉢から白い煙も上がり、それが女の姿の一部を隠していました。面白いのが、はっきりと足が描きこまれていることです。ともすると幽霊に見えないかもしれません。

鰭崎英朋の「蚊帳の前の幽霊」に見惚れました。蚊帳の前、正確には向こう側に、白い装束に身を包んだ女性の幽霊が立っています。俯いた横顔は美しく、どこか官能的な様相を感じさせていました。顔も真っ白で雪女のようです。足元の行燈から柔らかな光が放たれています。蚊帳に透き通り、辺りを照らしては、何とも幻想的な光景を生み出していました。

さてタイトルにもある「幻の幽霊画展示」とはいかなる作品なのでしょうか。

それが鏑木清方の「幽霊図」でした。かつては存在が確認されていたものの、関東大震災で焼失したとされた作品です。このほど94年ぶりに発見され、会期途中、ちょうど円朝忌にあたる8月11日より公開されました。


画題はお菊さんです。若い女性が両手で茶を献じています。顔の表情こそ伺えないもののの、白く血の通っていない細い腕を差し出しています。どことなく清楚な雰囲気も感じられました。

なお表具が着物地でしたが、同一の表具がほかの円朝コレクションにも存在します。池田綾岡の「皿屋敷」です。菊のあしらった襖越しにお菊さんが目に手を当てながら泣いています。幽霊画というよりも、美人画風の作品ですが、確かに清方作と同じ表具でした。見比べるのも楽しいかもしれません。



毎年夏の恒例の公開展示です。気がつけば、私が前に全生庵を訪ねたのは、10年近くも前のことでした。



8月31日まで開催されています。

「円朝の幽霊画コレクション〜幻の幽霊画展示」 全生庵
会期:8月1日(火)~8月31日(木)
時間:10:30~17:00
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:会期中無休。
料金:500円。
住所:台東区谷中5-4-7
交通:東京メトロ千代田線千駄木駅団子坂下出口より徒歩5分。JR線・京成線日暮里駅より徒歩10分。
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